◆第36話:二つの驚愕と、威風堂々の宣言
「では、まずはお嬢様から魔導水晶に手をかざしてください」
受付嬢の案内に頷き、ウーがおそるおそる透明な水晶玉へと両手を添えた。
直後、水晶が眩い青銀色の光を放ち、表面に古代文字のステータスが浮かび上がった。それを見た受付嬢が、目を見開いて叫ぶ。
「――っ!? 『魔力操作』と……『並列思考』!? 二つの希少スキルをお持ちなんですか!?」
「な、なんだと……!?」
カウンター周辺にいた高ランク冒険者たちの顔色が一変した。
「おいおいマジかよ! 十四歳そこらで『並列思考』持ちだと!?」
「二重詠唱や広域魔法を一人でこなせる天才の証じゃねえか!」
「さすがは《剣聖》が直々に連れてきた新人だ……只者じゃねえぞ!」
騒然とする館内。ウーは居心地悪そうに「あわわ……」と肩をすくめているが、周りの見る目は完全に「期待の超新星」だった。
「ひ、一騎当千の才能ですね……! ウー様、文句なしのFランクスタートですが、すぐに昇格されるでしょう!」
興奮気味に書類を書き留める受付嬢。そして、周囲の冒険者たちの視線が、自然と隣に立つ俺へと向けられた。
「……ってことは、あの隣にいる頭に猫乗せた奴も、とんでもねえ隠し玉なのか……!?」
「《剣聖》のツレで、あの天才少女の隣だぞ? 絶対ヤバいスキル隠してるぜ……!」
勝手に上がり続ける周囲のハードル。俺は内心で胃を痛めながら、諦め顔で水晶に手を置いた。
ポッ……。
水晶が申し訳程度に、消えそうな淡い光を灯す。
「え……?」
受付嬢が水晶に浮かんだ文字を二度見、三度見し、困惑の声を漏らした。
「お名前……ゼロ様。保有スキル……『おやくそく』……? えーと、適性ランクは……F……です……」
「「「………………」」」
館内を支配する、あまりにも重苦しい静寂。
冒険者たちが互いに顔を見合わせ、数秒の沈黙の後――怒涛の大爆笑が巻き起こった。
「ぶハッーーーー!! 『おやくそく』ってなんだよそれ!!」
「期待させといてFランクのワケわからんネタスキルかよ!」
「ガッカリさせんじゃねえよ! おいおい、あいつ絶対に《剣聖》様の金魚フンだぜーッ!」
心ない嘲笑とバッシングが俺に浴びせられる。
(やれやれ、これぞテンプレート通りの展開だな……)と俺が苦笑いしていると――
ドォンッ!!
「――誰が金魚フンだって……!?」
ギルド全体を揺るがすほどの凄まじい衝撃音と殺気が駆け抜けた。
見れば、依頼書の紙束を握りしめたリアンが、床を踏み抜かんばかりの勢いで仁王立ちしていた。
その背後には、まるで《剣聖》の闘気が実体化したかのような恐ろしいオーラがメラメラと揺らめいている。
「ひっ……!? 《剣聖》様……!?」
笑っていた荒くれ者たちが一瞬で青ざめ、ガタガタと震え出す。
リアンは怒りで肩を怒らせながら、大爆笑していた男たちを鋭い眼光で指差した。
「ゼロをバカにするやつは私が絶対に許さないから! ゼロはね、これから世界で一番すごい男になるんだからねーーーっ!!」
王都の大ギルドに響き渡る、リアンの超ド級の勝利宣言(?)と大声。
ウーも「そうです! ゼロさんはすごいです!」と小さく、けれど毅然と援護射撃をする。
渦中の俺はといえば、あまりの注目の集まりように、頭の上の黒猫と一緒に「あちゃー……」と深く顔を覆うのだった。
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