◆第32話:男のロマンと、頭の上の珍客
一方、女子二人に置き去りにされたゼロは――。
「いやあ、やっぱり王都のショップは品揃えが違うな……」
一人になった俺は、大通りに面した武具店や魔道具屋を片っ端から巡っていた。
店頭に飾られた漆黒の魔導剣、属性エンチャントが施された妖しく輝く杖、不思議な効果を持つ怪しげな秘薬や魔導具の数々。
前世ではゲームや小説でしか見なかった男のロマン溢れるアイテムが現実としてずらりと並んでいる光景は、見て回るだけでも男心をくすぐられて飽きない。
(あの魔導剣、めちゃくちゃカッコいいけど金貨三十枚か……平民の小遣いじゃとても手が出ないな)
ウィンドウショッピングを存分に満喫し、ふと時計塔を見上げる。
「……そろそろいい時間か。少し早いけど、噴水広場へ行くとするか」
集合時間より少し早めに向かおうと、ショートカットのために静かな裏路地へと足を踏み入れた。
すると――ガサガサッ、とゴミ箱の影で音がした。
「ん……?」
足を止めると、路地の暗がりから一匹の小さな子猫がトコトコと歩み出てきた。
毛並みは真っ黒で、金色の目をまんまるに輝かせている。
「なー」
かわいらしく鳴いたかと思うと、子猫はまっすぐ俺に向かって走ってきた。
そして、俺の足元にするりと擦り寄ってきたのだ。
「お、おいおい……野良猫か? 悪いがエサは持ってないぞ」
しっしっと手を振って追い払おうとするが、子猫はまったく意に介さない。
それどころか、すばやい身軽さで俺の服を器用に登り始め――
シュタッ!
「……っ!? おいおいおい!?」
なんと、俺の肩を足場にして、頭の上にちょこんと乗っかり、そこで丸くなって寛ぎ始めてしまった。
「なー(満足)」
「なー、じゃないんだよ……! 降りてくれ、これから人と待ち合わせなんだから」
手を伸ばして降ろそうとするのだが、子猫は俺の髪の毛に爪を絶妙に引っかけ、絶対に離れようとしない。
強引に引っ張れば俺の地肌が悲鳴を上げる。
「ったく、なんで俺ばかりこういう変な目に遭うんだ……」
頭の上に黒猫を乗せたまま歩く男子生徒。どう見ても不審者以外の何者でもない。
「……ハァ、仕方ない。降ろすのも無理そうだし、このまま行くか」
俺は深いため息をつきながら、頭の上にズッシリと乗る小さな温もりを感じつつ、噴水広場へと歩き出したのだった。
【作者からのお願い】
いつもご愛読いただき、本当にありがとうございます!毎日朝と夜の2回更新を続けていこうと思います。
もし「この先も気になる」「毎日の更新を応援してやるか」と思ってくださったら、画面の一番下にある【☆☆☆☆☆】をタップして星を入れていただけたり、ブックマークを登録していただけると、執筆のモチベーションがめちゃくちゃ上がります!
評価は1項目(面白さ・設定)につき星1〜5個で、いつでも気軽に変更できます。「とりあえず星3つ」でも、作者にとっては飛び上がるほど嬉しいです。これからもよろしくお願いします!




