◆第3話:幼なじみリアン
投稿記念一挙5話投稿
本日10話投稿します。
今後は1日2話(朝、晩予定)です。
よろしくお願いします
俺がこの世界に生まれて三年ほど経った頃。
歩けるようになり、言葉も話せるようになり、ニエンテ商店の周りを走り回るようになった時期だ。
その日、店の裏にある小さな広場で、俺は木の枝を振って遊んでいた。
剣の真似事だ。前の世界では剣なんて触ったこともなかったが、この世界では子どもたちの遊びとして普通らしい。
「それ、剣の持ち方ちがうよ!」
突然、元気いっぱいの声が飛んできた。
振り返ると、俺より少し背の高い少女が立っていた。
短い髪が揺れ、瞳はきらきらしていて、笑うと周りが明るくなるような子だ。
「わたしリアン! あなたはゼロでしょ? 商店の子だよね!」
初対面なのに距離が近い。
けれど嫌な感じはしない。むしろ、太陽みたいな子だと思った。
「リアンは剣が好きなの?」
「うん! お父さんが騎士団にいたんだって! だからね、わたしも強くなりたいの!」
そう言って、リアンは拾った木の枝を構えた。
その姿が妙に様になっていて、俺は思わず見入ってしまった。
「ゼロ、遊ぼう! 剣の勝負!」
「いいよ。でも俺、そんなに強くないよ?」
「だいじょうぶ! わたしが教えてあげる!」
リアンは嬉しそうに笑い、俺に向かって駆けてきた。
その瞬間――風が鳴った。
木の枝を振っただけなのに、空気が切り裂かれたような音がした。
俺は思わず目を見開いた。
(……これ、才能の塊じゃないか?)
リアンはまだ幼いのに、剣を振るだけで風が動く。
この世界の“強い人間”の片鱗を、すでに見せていた。
「ゼロ、いくよっ!」
リアンが勢いよく踏み込んできた。
俺は慌てて木の枝を構える。
だが――その瞬間、胸の奥がざわっとした。
(なんか……嫌な予感)
リアンの木の枝が俺の枝に当たる直前、
俺の足が石につまずいた。
「うわっ!」
転びかけた俺の身体が、リアンの方へ倒れ込む。
リアンも驚いてバランスを崩し――
二人して地面に転がった。
リアンの顔が近い。
息がかかる距離。
周囲の空気が妙に静かになる。
「……ゼロ、だいじょうぶ?」
「う、うん……」
(なんでこうなるんだ……?)
リアンは気にした様子もなく、ぱっと立ち上がった。
「ゼロ、すごいね! 今の避け方、なんか大人みたいだった!」
「いや、ただ転んだだけだよ……」
「でもね、わたし、ゼロと剣の練習したい! もっと強くなりたいから!」
リアンは満面の笑みで言った。
その笑顔を見て、俺は自然と頷いていた。
「うん。じゃあ、また遊ぼう」
「やったー!」
こうして、俺とリアンの幼少期の剣遊びが始まった。
この日から、リアンは毎日のように店の前に現れ、俺を外へ連れ出した。
剣を振り、走り回り、時には森へ探検に行き――
そのたびに、妙な偶然が起きた。
転びそうになったらリアンが助けてくれる。
逆にリアンが落ちそうになり、俺が助けることもある。
森でレア素材を拾ってしまい、商店がちょっと儲かったりもした。
(……なんか変だよな)
そう思いながらも、リアンと過ごす日々は楽しかった。
そして俺は知らなかった。
この少女が、後に“学院最強の剣士”と呼ばれる存在になることを。
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