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スキル《おやくそく》!?なんじゃそりゃ、でもなぜか主人公補正が止まらない件  作者: にらいかない


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◆第25話:不器用な第一歩と、胸の高鳴

「ふ、二つ同時に……ですか……?」


戸惑うウーに、俺は優しく頷いて見せた。


「そうだ。ウーの膨大な魔力を一本の細い管で通そうとするから詰まるんだ。バイパスをもう一本作ってやるイメージで、《並列思考》を使って魔力を分散させてみてくれ」


「分散……イメージ、バイパス……」


ウーは目を閉じ、必死に思考を巡らせる。

その眉間に小さなシワが寄り、額にはうっすらと汗が滲み始めた。


(やっぱり、長年染みついた感覚を変えるのは一朝一夕じゃいかないか)


「――《ファイア》……っ!」


ウーが再び杖を突き出す。


ポンッ! ボッ!


先ほどとは違い、今度は小さな二つの火玉が杖先から同時に生み出された。

火種は数メートルほど飛んでいき、木偶の胸元に当たってパチッと弾けて消えた。


ほんの小さな焦げ痕が残っただけだが――あきらかに、さっきまでとは違う成果だった。


「あ……あ……っ!」


ウーは自分の手と、木偶の焦げ痕を交互に見つめ、信じられないといった様子で目を見開いた。


「出た……二つ、同時に出ました……っ!」


「よし、読み通りだ! まだ威力は出ないし安定もしないけど、感覚は掴めただろ?」


「はい……! すごいです、ゼロさん! 私、今まで一度もまともに飛ぶ魔法なんて撃てなかったのに……っ!」


興奮気味に駆け寄ってくるウー。

だが、根を詰めすぎたせいか、急にふらりと身体を揺らした。


「おっと、無理は禁物だぞ」


「きゃっ……!?」


倒れそうになったウーの肩を咄嗟に支える。

華奢で柔らかい身体の感触と、ふわっと漂う女の子らしいほのかな甘い香りが鼻腔をくすぐった。


「あ……ご、ごめんなさい……! 少し根を詰めすぎて、頭がクラクラしちゃって……」


「《並列思考》は脳に相当負担がかかるからな。今日はここまでにしよう。焦らずじっくり練習していけばいいさ」


俺がそう言って微笑むと、ウーは支えられたまま、パッと顔を輝かせた。


「はいっ! 私、頑張ります……!」


夕日に照らされ、真っ赤に染まったウーの顔。

ボサボサだった黒髪の隙間から覗く、吸い込まれそうなほど澄んだ瞳と、花がほころぶような満面の笑顔。


ドキン――ッ!


胸の奥で、大きな鼓動がひとつ跳ねた。


(……ん? なんだ今の……?)


前世を含めれば精神年齢は三十路越えの男だというのに、中学生のような純粋な笑顔に思わず見惚れてしまった。


(いやいや、落ち着け俺。可愛い妹みたいなもんだろ……)


不自然に咳払いをして動揺を誤魔化すと、俺たちは茜色に染まる練習場を後にした。


「ゼロさん、明日って何の時間ですか?」


「明日は確か、座学の講義ばかりだったはずだぞ」


「ふふ、じゃあ明日も……放課後、一緒にいてくれますか?」


「ああ、もちろん約束だ」


不器用な少女の成長と、どこかむず痒い放課後の帰り道。

俺たちの特訓は、まだ始まったばかりだった。


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