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スキル《おやくそく》!?なんじゃそりゃ、でもなぜか主人公補正が止まらない件  作者: にらいかない


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◆第22話:お約束のヒーロー?

(さて……どう助けたもんかな)


面と向かって貴族相手に喧嘩を売るのは得策じゃない。

前世の営業職で培った事体収拾のノウハウを脳内で高速回転させ、なるべく角を立てずに立ち去らせる方法を考えようとした――その時だった。


「誰か来ないうちに、さっさとその教科書を――」


いじめっ子の貴族女子が一歩踏み出した瞬間。

俺の足元にあった泥混じりの苔に、右足が綺麗に滑った。


「うおっ!?」


派手にバランスを崩した俺は、前傾姿勢のまま校舎裏の空き地へ勢いよく飛び出す形になった。


ドガッ!!


「きゃああっ!?」


滑り込んだ俺の肩が、中心にいた貴族女子の手元にクリーンヒット。

彼女が掲げていた魔法の小杖が見事にはじき飛ばされ、クルクルと弧を描いて地面に転がった。


そのまま俺はウーの目の前までスライディングし、図らずも彼女を背中で庇うような体制でピタリと止まった。


「痛たた……」


「え……? あ、あの……?」


背後から、小刻みに震える小さな声が聞こえる。

ウーから見れば、おそらく『突如現れた謎の生徒が、命がけで自分を庇うように前に滑り込んできた』ように見えているはずだ。


(違うんだ……ただ盛大に滑り転んだだけなんだ……!)


冷や汗を流す俺を余所に、杖を弾き飛ばされた貴族女子が真っ赤な顔で怒鳴りつけてきた。


「な、なんなのよ貴方は!? いきなり飛び込んできて……平民の分せいでアタシたちに刃向かう気!?」


「いや、これはその……」


弁明しようとした、まさにその瞬間だった。


ふわっ。


校舎の隙間から、絶妙な強さの突風が吹き抜けた。


ガラガラガラッ!!


風に煽られたのは、壁際に立てかけられていた清掃用の用具一式。

グラリと傾いたバケツと、並べられていたモップが連鎖的に倒れ込み――


バシャアアアッ!!


「きゃああああああっ!?」


バケツに入っていた溜め水と濁った泥水が、一番前で威張っていた貴族女子の真っ白なドレスへと見事に直撃した。


「あ……アタシの……お父様に買ってもらった特注のドレスが……ッ!?」


「まあっ! 大変よ、ご令嬢!」

「汚水が染み込んでいくわ!」


泥水でドロドロになったドレスを抱え、取り巻きの女子たちがパニックに陥る。


「チッ、余計なマネを……! 覚えてなさーい!」


どこかの悪役のような定番の捨て台詞を残し、彼女たちはドレスの裾を撒き散らしながら大慌てで走り去っていった。


静まり返る校舎裏。


(……すげぇな【おやくそく】。完璧すぎるピタゴラスイッチだ)


俺は土埃を払いながら立ち上がり、後ろで小さくなっていた少女に手を差し伸べた。


「怪我はないか?」


ウーは、驚きで目を見開いたまま、差し出された俺の手と顔を交互に見つめていた。

その瞳には、すでに淡い光が宿っていた。


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