◆第20話:男子寮と、癖のある同室者
今後は1日2話(朝、晩予定)です。
よろしくお願いします
木々に囲まれた小道を抜けると、目の前に三層建ての重厚なレンガ造りの建物が現れた。
ここが今日から生活する男子寮だ。
(ほう……意外としっかりした建物だな)
貴族と平民で建物自体が分かれているわけではなく、部屋のグレードや階層で分けられているらしい。平民用の部屋は1階の相部屋エリアだ。
鍵を受け取り、廊下の奥にある「104号室」の扉を開ける。
部屋の中は、ふたつ並んだベットと机、そして大きなクローゼットがあるシンプルな作りだった。前世のビジネスホテルよりはよっぽど広くて快適だ。
「お、お前が同室の奴か?」
声をかけてきたのは、すでに荷物を運び込んでいた同い年くらいの少年だった。
丸い眼鏡をかけた真面目そうな雰囲気で、制服を着ているがどこか落ち着かない様子でキョロキョロしている。
「俺はゼロ。今日からよろしくな」
「ぼ、僕はアルド! 出身は南の村で……スキルは《解析》なんだ。平民だから苗字はないよ。ゼロも平民……だよね?」
「ああ、平民だよ。実家は伯爵領で商店をやってる」
「よかったぁ……! 貴族様と同室になったらどうしようかとヒヤヒヤしてたんだ。平民で、しかも優しそうな人で本当によかったよ……!」
アルドはホッとしたように胸を撫でおろした。
話を聞くと、アルドのスキル《解析》は物の材質や構造を調べるのに特化した能力らしい。戦闘向きではないため下位クラスの『θ(シータ)』になったそうだが、知識欲が強く、本を読むのが大好きなようだ。
「そういえばゼロ、さっき門のところで『剣聖』のリアン先輩と一緒にいただろ? すごく話題になってたよ!」
「ああ……リアンとは幼なじみなんだ。学年が違うから普段の授業は別々だけどさ」
「えぇっ!? あの2年生の天才剣聖様と幼なじみ!? すごすぎるよ……!」
目を丸くして驚くアルド。
気さくで害のなさそうな同室者で安心した。これなら上手くやっていけそうだ。
「そういえば、学院の授業って学科ごとの単位制なんだよな?」
荷物を整理しながら尋ねると、アルドは眼鏡の位置を直しながら詳しく教えてくれた。
「うん。自分の得意な分野や目指す職業に合わせて授業を選ぶんだ。ただ、実技演習や学年合同の特別授業なんかは、学科やクラスを越えて合同で行われることも多いみたいだよ」
「なるほど……特別授業か」
(学年合同の授業なら、リアンと一緒に受ける機会もあるかもしれないな)
荷解きを終え、ベッドに腰を下ろす。
明日からはついに授業が始まる。
斥候を目指す俺としては、座学で知識を深めつつ、実技で気配察知や体術を鍛えていきたいところだ。
「よし……明日から頑張るか」
俺は窓の外に広がる王都の夕空を見上げながら、静かに気を引き締めた。
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