◆第10話:導かれるように
投稿記念一挙5話投稿
本日10話投稿します。
今後は1日2話(朝、晩予定)です。
よろしくお願いします
リアンが王都へ旅立ってから、家の前は急に静かになった。
毎日のように聞こえていた「ゼロー!」という声がなくなると、
なんだか胸の奥がぽっかり空いたような気がした。
でも、立ち止まっているわけにはいかない。
俺も学院を目指すと決めたのだ。
「よし、勉強しよう」
机に向かい、母が買ってくれた学習用の本を積み上げる。
斥候を目指すなら、地形、魔物、索敵、歴史……覚えることは多い。
本棚から地図の本を取ろうとしたその時――
ガタンッ!
高い棚の上から、一冊の本が落ちてきた。
「うわっ!」
反射的に手を伸ばすと、ぴたりと本をキャッチした。
落ちてきたのは、斥候向けの専門書だった。
『地形の読み方と索敵の基礎』
「……なんでこれが落ちてくるんだよ」
偶然にしては出来すぎている。
でも、誰もいない部屋でそんなことを言っても仕方ない。
本を開き、読み始める。
地形の特徴、風の流れ、足跡の見方。
前世では触れたことのない知識ばかりだが、妙に頭に入ってくる。
ページをめくろうとしたその時――
ふわっ。
窓から風が吹き込み、ページが勝手にめくれた。
「え?」
開いたページには、大きくこう書かれていた。
『危険察知の感覚を鍛える方法』
まさに今、俺が知りたい内容だった。
「……なんか、こういうの多いよな」
リアンと遊んでいた頃もそうだった。
転んだ拍子に助かったり、レア素材を拾ったり、
危ない瞬間に限って誰かが現れたり。
偶然と言えば偶然。
でも、続きすぎると、さすがに気になる。
ページを読み進めると、
「周囲の気配を感じる訓練」「視線の動かし方」「足音の消し方」
など、斥候に必要な技術が細かく書かれていた。
「……これ、俺に向いてるのかもな」
剣はリアンほど上手くない。
魔法は使えない。
でも、こういう“気づき”や“察知”は昔から得意だった。
前世でも、営業で危ない案件を察知したり、
トラブルの匂いを感じて避けたりしていた。
「斥候……いいかもしれない」
本を閉じようとした瞬間、また風が吹いた。
ぱらっ。
開いたページには、
『斥候は仲間を守る役割である』
と書かれていた。
「……守る、か」
リアンのことを思い出す。
森で魔物から守った時のこと。
旅立つ日に風で倒れそうになったリアンを支えたこと。
偶然かもしれない。
でも――
「俺、こういうの……好きかもしれないな」
誰かを守る役割。
仲間の背中を支える役割。
リアンの隣に立つためにも、必要な力だ。
「よし。斥候を目指そう」
本を閉じ、机に向かい直す。
風はもう吹いていない。
でも、ページが示した言葉は、
まるで俺の背中を押してくれているようだった。
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