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ノヴェル・オルガヌム 〜無限の世界線から、たった一つの痛みを選ぶ方法〜  作者: 島流しパプリカ
第一部 未採用世界の恋人

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第三話 転回坑道

 落下は、思ったより長くなかった。


 いや、長さの問題ではないのかもしれない。

 体感では十秒にも満たない。

 だがそのあいだに、俺は少なくとも三つの人生を通過した気がした。


 ひとつでは、俺は白い厨房に立っていた。

 狭い食堂だ。湯気。煮込みの匂い。

 奥の席で有栖零が頬杖をついて、つまらなそうにこちらを見ている。

 その顔を見て、俺は「今日は客が少ないな」と言う。

 彼女は「世界が終わりかけてるからじゃない」と答える。

 そこで笑うはずだった。


 ひとつでは、俺は軍服を着ていた。

 灰色の高台。対岸の燃える街。

 隣にいる有栖零の左腕は義手で、遠くを見たまま「今さら私を守ろうとしないで」と言った。

 俺は何も返せない。


 ひとつでは、そもそも俺は榊冬真ではなかった。

 名も、顔も、声も違う。

 それでも、同じように何かを選び損ね、同じようにその女を失っていた。


 次の瞬間、背中が硬いものへ叩きつけられた。


 空気が肺から抜ける。

 遅れて痛み。

 その痛みだけが、ようやく“今ここ”を一本にしてくれる。


「っ……」


 俺は咳き込みながら起き上がった。

 周囲は暗い。完全な闇ではない。遠くのどこかで、黄ばんだ非常灯みたいなものが点いている。

 床はコンクリートでも金属でもなく、古い坑道の石肌に近い。

 ただし不自然なほど乾いていた。地下の湿り気がない。空気が、使い切られた舞台装置のように軽い。


「有栖!」


「いる」


 少し右前方から声。

 有栖零は数メートル先に倒れていて、すぐに身を起こした。大きな怪我はなさそうだ。

 その事実に、自分でも気づかないほど安堵したのが腹立たしかった。


「ここは」


「転回坑道」


「真舟が言ってたな」


「うん」


 有栖零は立ち上がり、周囲を見回す。


「でも、変だな」


「何が」


「もっと、ちゃんと“物語の裏側”みたいな場所のはずだった」


「十分、嫌な名前だと思うが」


「そういう意味じゃない」


 彼女は耳を澄ますように首を傾けた。

 その横顔が、少しだけ怯えているように見えた。

 有栖零が怯える。それ自体が、この場所の異常を告げていた。


 坑道は左右へ伸びている。

 天井は低く、支柱のようなものが等間隔に並ぶ。だがよく見ると、その支柱は木でも鉄でもなく、ページを束ねたものに見えた。何千枚もの紙が圧縮されて柱の形を取っている。

 壁面にはところどころ数字や矢印が書かれていた。


 A-7 / 第一転回未遂

 B-12 / 恋愛線過密

 保留 / 読手介入待ち


「……ここ、本当に坑道か?」


「“転回”を掘る場所」


「言葉で逃げるなよ」


「逃げてない。

 たぶん、ここは本来、物語の流れを途中で折り曲げるための裏方なんだと思う」


「物語の流れを?」


「うまくいきすぎた人生とか、説明がつきすぎた因果とか、そのままだと読めない現実があるでしょ。

 そういうのを一回ここへ落として、別の方向へ転ばせる」


「それは」


 俺は壁の書き込みを見ながら言う。


「神の仕事か、編集者の仕事だな」


「この文明だと、だいたい同じ意味」


 遠くで、金属の擦れるような音がした。


 俺と有栖零は同時に身を低くする。

 追手かと思った。

 だが、違った。


 暗闇の向こうから現れたのは、列車の保線員のような格好をした男だった。

 五十代くらい。痩せている。帽子をかぶり、肩に古いランプを提げている。

 ただ、妙だった。

 男の輪郭が、ときどき二重にぶれる。

 帽子が制帽になり、作業帽になり、喪服のハットになり、また戻る。

 ひとつの個体というより、似た役割の人物が何人か重なっているみたいだった。


 男は俺たちを見ると、困ったように目を細めた。


「おや」


 声は、妙に穏やかだった。

「また読手が落ちてきた」


 また。


 その一語が、ここでは単なる驚きではないとわかる。


「誰だ、あんた」


「保線係」


「本名を聞いてる」


「本名は役に立たない場所でしてね」


 男は少し笑う。


「ここでは、みな役目の名で呼ばれます。私は保線係。君はたぶん、読手。そちらは……」


 男の視線が有栖零へ移る。

 そこで初めて、その穏やかな顔に明確な緊張が走った。


「それは、ずいぶん大きなものを連れてきたな」


 有栖零が一歩前へ出る。


「“それ”って言うな」


「失礼」


 男はすぐに言い直した。

「だが、ここでは呼び方が難しい。ひとりの女性として見るには密度が高すぎるし、概念として扱うには体温がありすぎる」


「……あんた、何者だよ」


 俺が訊くと、男は肩をすくめる。


「捨てられた転回の管理人。

 筋立てになり損ねた事故の掃除人。

 読まれなかった現実の配線工。

 好きな呼び名をどうぞ」


「つまり?」


「つまり、ここに長くいると比喩が多くなる」


 その答えだけで、俺は少しだけこの男を信用しかけた。

 信用していい類の人間ではなさそうだが、少なくとも“制度の側の言葉”は使わない。


「追手がいる」


 有栖零が短く言う。

「固定院。たぶん真舟も」


「なら急いだほうがいい」


 保線係はランプを少し高く掲げた。


「転回坑道は、第二幕に向かうための近道じゃない。

 むしろ、第二幕へ行かせないための場所です」


「真舟も同じことを言ってた」


 俺が言うと、男は眉を上げた。


「ほう。では、ずいぶん正直な追手だ」


「何がある、ここに」


「場面が自意識を持ち始めたあとの残骸です」


 嫌な答えばかり返す世界だ。


 だが説明を求めて立ち止まる余裕はない。

 遠くで、今度ははっきりと複数の足音がした。真舟たちが降りてきたのだろう。


「ついてきてください」


 保線係は背を向けて歩き出した。

「案内できるのは途中までですが、読手なら見るべきものがある」


「見るべきもの、ね」


「ええ。たいていの人は、ここで自分の話が“主筋”ではないと知る」


 坑道を進むにつれ、空気が少しずつ変わっていく。

 乾いていたはずの空気に、古本屋の匂いが混じる。

 つづいて消毒液。

 つづいて潮風。

 壁面の書き込みも増えた。


 救済過剰により破棄

 悲劇濃度不足

 存在論先行につき娯楽性崩壊

 恋愛線と政治線の融和失敗


 最後のひとつに、なぜか妙な親近感を覚えた。


「ここは……試作の墓場か」


「墓場というほど静かでもない」


 保線係は言う。

「場面は、死んでもしばらく自分の続きを欲しがる」


 そのとき、左手の側道の奥で、何かが動いた。


 女と男が向き合っている。

 薄暗い居酒屋のような一角。

 卓上の小さな灯り。

 女が何かを言い、男が黙り込み、それから笑って誤魔化す。

 見覚えのある癖だった。男のほうの。


 俺だ。


 いや、俺に似ている。

 だがその男はもっと柔らかい顔をしている。管理職にならずに済んだ人生の俺みたいだった。

 向かいの女は有栖零ではない。別の顔だ。けれど、彼女が立ち上がって去る直前の肩の止め方に、有栖零と同じ何かがあった。


「見るな」


 有栖零が低く言った。

 だが遅い。

 場面のほうがこちらへ気づいた。


 居酒屋の男――俺に似た誰かが、ゆっくり振り向く。

 その目が俺と合う。

 驚き。理解。嫌悪。

 そして、向こうの俺はひどく疲れた顔で笑った。


「来るな」


 そいつは言う。

「この先は、もっと選び損ねる」


 次の瞬間、場面ごと壁へ沈んだ。

 照明も卓も酒の匂いも、最初からなかったみたいに消える。


 俺は立ち止まっていた。


「今のは」


「転回未遂」


 保線係が答える。


「本来なら第二幕に行く途中で採用されるかもしれなかった場面です。

 でも採られなかった。

 理由はいろいろ。遅すぎる。弱すぎる。あるいは、鋭すぎる」


「鋭すぎる?」


「ひとつの現実だけでは支えきれない場合があります」


 それは、慰めではなかった。

 むしろ逆だ。

 俺の中にある違和感のいくつかが、現実からはじかれた側のものだと示している。


 有栖零は黙ったまま歩く。

 さっきから彼女は妙に静かだ。

 話したくないのではなく、ここで話すと何かが決定してしまうのを避けている感じがある。


「お前、ここに来たことあるな」


 俺が言うと、彼女は否定しなかった。


「ある」


「何回」


「数えられる回もあるし、数えたくない回もある」


「俺と?」


「だいたい」


「だいたい、って何だよ」


 有栖零は少しだけ笑った。

 乾いた笑いだった。


「世界をまたぐと、“いつも一緒だった”と“まったく会ってない”のあいだが曖昧になるの。

 でも、少なくとも何度かは、ここを一緒に通った」


「そのたびに何が起きた」


「いろいろ」


「便利な言葉だな」


「便利じゃない。

 だって結局、どの回でもあなたは何かを守ろうとして、その守り方で私を傷つけた」


 その言葉は静かだった。

 だから余計に刺さる。


「……悪かった、で済む話か」


「済まないよ」


 彼女は前を向いたまま言う。

「でも、済まないってことを知ってる人としか、たぶん次へ行けない」


 その会話のあと、しばらく誰も喋らなかった。


 やがて坑道が大きく開ける。

 広い地下空間だった。

 無数の線路が放射状に延び、その一本一本の先に、べつの風景がぶら下がっている。


 雪の校庭。

 洪水のあとの住宅街。

 豪奢な宴会場。

 手術室。

 港。

 砂漠。

 裁判所。

 そのどれもが、線路の終端に「駅」として接続されている。

 列車はない。

 だが行き先だけが残っている。


「転回場です」


 保線係が言う。

「本来なら、ここで第二幕以降へ配線される。

 ですが今は……」


 彼は言い淀んだ。


 中央の転車台のような円形床が、ゆっくり回っている。

 その上に、一人の少女が立っていた。


 白いワンピース。裸足。

 年齢は十六、七に見える。

 顔立ちは――一瞬、有栖零に似ていると思った。だが違う。もっと幼い。もっと始原的だ。まだ誰の恋人にも、誰の喪失にもなっていない顔。


 少女は、俺たちを見ると、嬉しそうに笑った。


「あ」


 その声は透き通っていた。

「七番目だ」


 有栖零の身体が強張る。


「……やめて」


 だが少女は聞いていない。

 転車台の上でくるりと回り、こちらへ向かって手を振る。


「こんにちは、読手。

 それとも冬真?

 それともトーマ?

 名前っていっぱいあって大変だね」


「誰だ」


 俺が問うと、少女は小首をかしげる。


「さあ。

 わたしは採用前だから、まだ一つじゃないよ」


 保線係が珍しく強い声を出した。


「離れなさい。まだ自己紹介の段階じゃない」


「どうして?」


「手順が違う」


「ここに手順なんて残ってるの?」


 少女は無邪気に言う。

 その言い方だけで、嫌な予感がした。

 この場所のルールに従っていない。つまり、場面の残骸ではなく、もっと根本の側から来ている。


 有栖零が俺の前へ半歩出た。


「あなた、何」


 少女は少しだけ考え、それから笑う。


「たぶん、あなたの前のもの」


 その答えに、有栖零の顔色が変わった。


 俺は二人を交互に見た。


「説明しろ」


「零号残響の前段階」


 保線係が絞り出すように言った。

「代表損失体として収束する前の、原型。

 まだ一つの痛みに縛られていない状態――」


「じゃあ」


 俺は少女を見る。


「こいつが、最初の有栖零か」


「違うよ」


 少女は即答した。

「わたしは、まだ誰でもない。

 あなたたちがいっぱい傷つけたり愛したり選ばなかったりして、あとから“有栖零”になる前の、ただの可能性」


 その言葉を聞いた瞬間、理解した。


 こいつは危険だ。

 有栖零が高密度残響なら、この少女はその原液みたいなものだ。

 まだ個人ですらないぶん、どの世界の誰にでも接続できてしまう。


「なんで今出てくる」


 有栖零の声は低かった。

「あなたは、ここにいちゃいけない」


「でも、上でいっぱい引っ張ったでしょ」


 少女は俺を見る。


「読手が戻ってきた。

 零号が集まりきった。

 ヴォルンの残した鍵が開いた。

 なら、わたしもそろそろ舞台に上がれるかなって」


 “舞台に上がる”。

 この世界の言葉はいつも気持ちが悪い。

 存在が、公演の開始みたいに扱われる。


 そのとき、転回場の上空でサイレンが鳴った。


 赤ではなく、暗い紫の警告灯が回る。

 真舟たちが近づいたのだろう。

 線路のいくつかが自動的に閉じ始める。風景の接続が薄れていく。


「まずいな」


 保線係が言う。


「固定院が転回場まで入ってくると、ここは一本に潰される」


「どうすればいい」


 俺が訊くと、男は迷わず中央転車台を指した。


「主筋へ乗るしかない」


「主筋?」


「第二幕へ続く、いちばん太い線です。

 ただし、今のままでは入れない」


「何が要る」


 保線係は、有栖零と少女を見た。

 それから俺を。


「代表を決める必要がある」


 沈黙が落ちる。


 意味はわかった。

 有栖零か。

 あの少女か。

 あるいは、そのどちらでもない何かか。

 この場で“次へ連れていく痛み”を一本にしろということだ。


「ふざけるな」


 俺は即座に言った。

「またそれか。どこまで行っても同じことしか言わないのか、この世界は」


「同じじゃないよ」


 少女が言う。

 その声は明るいのに、背筋が寒くなる。


「今度は、あなたが選ぶんじゃない。

 何があなたを次まで連れていくかを、見つけるだけ」


 遠くで銃声。

 真舟たちがもう転回坑道へ入った。

 時間がない。


 有栖零が、唐突に俺の手首を掴んだ。


「冬真。聞いて」


「何だ」


「ここで私を選ばなくていい」


 俺は彼女を見る。

 彼女は真っ直ぐ俺を見返す。


「私はずっと、“選ばれなかったものの代表”として作られてきた。

 でも、もしあなたがこの先で本当に壊したいのが“その構造”なら、また私だけを選んでも駄目」


「何を言ってる」


「言葉どおり。

 私を助ける話にしないで。

 もっと大きいものを壊して」


 それは告白でも命乞いでもなく、もっと残酷な依頼だった。


 少女が楽しそうに笑う。


「やっぱり零号になったあとのあなた、面倒だね」


「うるさい」


「でも好きだよ、そういうの。

 だって“物語っぽい”から」


 その瞬間、俺の中で何かがはっきりと切れた。


 物語っぽい。

 その一言だ。

 この文明は、どんな痛みも、どんな恋も、どんな喪失も、最後には“読める形”へ整えようとしてきた。

 だから世界は一本になる。

 だから人間は自分の人生を一つしか持てないふりをする。

 だから選ばれなかったものは残響にされる。


 なら壊すべきなのは、特定の誰かではない。


 痛みに代表を立てなければ進めない、というその形式そのものだ。


「保線係」


 俺は言った。


「主筋に乗る方法は、ほんとに一つか」


 男は目を細める。

 質問の意味を測っている顔だった。


「普通は一つです」


「普通じゃないやり方は」


「……転回場そのものを開く」


「どうなる」


「主筋と側線の境界が一時的に消えます。

 第二幕も、未遂場面も、保留世界も、一度だけ同時に流れ込む」


「そんなことしたら」


 保線係は苦い顔で笑った。


「物語としては、かなり下品です」


「現実としては?」


「もっと下品だ」


「いいね」


 俺は初めて、少し笑った気がした。


 有栖零が俺の顔を見る。

「冬真」


「お前の言う通りだ。

 また“お前を選ぶ話”にしてたら、たぶん何も変わらない」


 少女は首をかしげたまま、興味深そうにこちらを見ている。


「じゃあ何するの、読手」


「読まない」


 俺は言った。


「少なくとも、向こうが期待してる読み方では」


 転回場の床の中心へ走る。

 保線係が何か叫ぶ。止めようとしたのかもしれない。

 だがもう遅い。


 中央には、古い操作盤があった。

 レバー。

 切替盤。

 そして、鍵穴が七つ。


 七つ。

 第七読手。

 馬鹿みたいに露骨だ。


「冬真!」


 有栖零が追ってくる。

 背後では真舟たちの気配が近い。上方の回廊に黒い影が現れた。


 俺は左手を見た。

 まだ同期釘を打った傷が残っている。そこへ、操作盤の最も大きなレバーが触れる。

 金属は冷たいのに、なぜか皮膚の内側まで知っている感触だった。


『閲覧系列トーマ認識』


 盤面が灯る。


『推奨進行:零号収束 / 読手選定 / 第二幕移行』


「却下だ」


 俺はレバーを握る。


『代替案を入力してください』


「全部開け」


 一瞬の沈黙。

 それから、盤面が赤く染まる。


『非推奨。

 叙事過積載。

 感情線競合。

 読者離脱率上昇。

 存在安定性、著しく低下』


「知るか」


 俺はレバーを引いた。


 転回場全体が、絶叫した。


 線路が一斉に震える。

 雪の校庭がこちらへ傾く。

 手術室の無影灯が空中へせり出す。

 宴会場のシャンデリアが回り、港の風が地下空間へ吹き込む。

 無数の未遂場面が、主筋へ向かって流れ始める。


 真舟の怒声が飛ぶ。


「榊、やめろ!

 それは第二幕じゃなくて氾濫だ!」


「そうだろうな!」


 俺は叫び返した。

「やっと面白くなってきた!」


 その瞬間、転回場の上空で何かが裂けた。


 巨大な緞帳のような暗幕が、天井のない空間から垂れ下がってくる。

 だが今度は固定幕ではない。

 もっと巨大で、もっと古い。

 世界そのものが、一度も上演されなかった何かの開幕に耐えかねて、勝手に幕を上げ始めたような光景だった。


 有栖零が俺の隣へ来る。

 少女は転車台の中央で、嬉しそうにくるくる回っている。

 保線係は頭を抱え、それでもどこか諦めたように笑っていた。


「読手」


 少女が言う。


「あなた、それやると、もう誰の話か分からなくなるよ」


「最初から、そうだったんじゃないのか」


 俺が答えると、少女は目を丸くし、それから心底楽しそうに笑った。


「うん。

 それ、たぶん正解」


 次の瞬間、転回場のすべての線路が同時に発光し、

 俺たちは主筋でも側線でもない、

 まだ名前のついていない第四の流れへ投げ込まれた。

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