声を上げて泣いた日
「こんなところに何の用?」
「あ、すみません」
気づけば、銀髪の少女は不機嫌そうに私を見ていた。少女のことを、思っていたよりも長く見ていたらしい。
ーー悪いことしちゃったかな
「で、質問の答えは?」
「すみません。実は......」
私は、奴隷となり売られかけたこと、ヴィルトベアに出会い、命からがら逃げだしたことなど。
ここまでの道のりを事細かに話した。
「あの、私この森から出たくて、助けてはいただけませんか?」
「なんで?」
......確かに。この人には私を助ける理由なんてない。......何よりも、メリットがないから。
「.......そうですよね。無理を言ってしまいすみませんでした」
「そうじゃない」
「どうして同族を見殺しにして、あなた一人で逃げたの?」
ーーえ?
「それは私じゃあれを倒せないからで......」
「あなたが自分をおとりに、時間を稼げばよかったんじゃないの?」
「あなた、向かいの山頂からここまで一か月ちょっとで着いたんでしょ?もしかしたら、ベアに追われても逃げられたんじゃない?」
「......。」
声が出なかった。あの日の光景が鮮明に思い出される。
何故私は一人で逃げ出したんだろう。あの時誰かの手を引いて、一緒に逃げ出せたんじゃないか?
いや、たとえ私があの場で死んででも、ベアの注意を引き付けて皆を逃がすべきだったんじゃないか?
鼓動が早くなる。
体が震えだす。
考えれば考えるほど息が詰まる。
......何が英雄になりたいだ。生きたくて。仲間を見殺しにして。結局は自分が一番大切なんだ。私はそういうやつなんだ。
あぁ、やっぱり私が死ぬべきだったんだ
「ごめん、私が悪かった」
......ㇸ?
銀髪の少女は私の頭を優しくなでていた。気づけば私の体は小刻みに震え、涙で顔がくしゃくしゃになっていた。
「あなたの仲間が死んだのはあなたのせいじゃない。あなたのその腕を見ればわかる。あなたの力じゃ一人引っ張っても逃げきれない。あなたは最善の選択をしたんだよ」
「っ...!」
「......本当はずっとつらかった。一人で逃げ出したあの日からずっと。皆が殺されたあの時の皆の顔が、声が、眠るときに夢に出てくるの」
「ごめんなさい。皆、本当にごめんなさい......」
私は声を上げて泣いた。私は少女の胸に顔を埋め、涙を流した。ずっとつらかった。仲間たちが蹂躙されていく姿を見て、声を聴いて、怖くなって逃げだしたあの日が。
「よく頑張ったね。」




