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無魔力の第六王女は敵国に攫われる  作者: 白雲八鈴


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第22話 居場所の特定を

 レインアルドSide


「姫がいないだと?」


 朝食を共にと思い、ティア姫の下に行くと部屋付きの侍女共が、今わかったかのように報告した。


 このようなことは、もっと早くにわかっていたのではないのか? なぜ、わかったときに報告しない。


「いつわかった」

「それが……その……」

「まともに報告することもできないのか?クオン。警備兵の者からの報告は?」


 震えてまともに話せないのか、事実を隠したいのか知らないが、使えない者など必要ない。


 私は定期的に巡回している警備兵から報告があったのか確認する。


「昨晩も異常はなかったと、今朝報告されています」


 異常はなかった。何者かが侵入した形跡はなかったということと、怪しい動きをしている者はなかったということだ。


 ただ、ここでの問題はティア姫自らが城を出ていった場合だ。

 そうなると、我々では感知できない可能性がある。


 部屋を好きなようにしていいと物が少ないままの部屋を見渡す。


 もう少し、侍女からティア姫の好みを聞いておくべきだったか。

 元々侍女しか信頼していない感じだった。だから、共にいさせていたのだが……いや、姫の幼少期の報告を見るに、行動力がある姫だったと思い出す。


 五歳で領地を賜って、一人で王城を出て領地の改革をするなど、普通の子供ならしないことだ。


 思わずクスリと笑ってしまう。昔も今も変わらないのだと。


 さて、ティア姫は今はどこにいるのか。


「クオン。魔導長を呼べ」


 いつまでも部屋の主がいない、ここにいても仕方がない。



「確かにわかりますと言いましたが、試験中の物ですからね」


 目の下のクマが濃い青髪の男が、魔導兵器などの開発者たちをまとめている魔導長だ。


 以前からティア姫と接触できないかと試みていた過程で、特定の個人の居場所がわかるものを作れと指示をしていたのだ。


 だが、個人の特定には魔力が必要だと言われ、魔力がないティア姫には使えないことが判明し、そのまま放置していた魔道具が目の前にある。


 球状のガラスが目立つ代物だが、作ったもののこだわりなのか、細かな装飾が気になるところだ。


 ガラスを支えるには薄い金属なのだが意味があるのだろうか。


「その対象者の持ち物をここに置いてください」


 ガラスを支える台には四角い平らな部分がある。

 クオンに視線を向けて、指示を出した。


 すると、紙に包まれた黒い長い髪の毛が置かれた。


「ファスディール将軍。魔力があるものと言ったではないですか」


 その髪はどうみてもティア姫のものだ。黒髪は珍しく、皇城内でもほとんど見かけることはない。


「セレスティア姫の髪に触れる者は、侍女のライラぐらいでしょう。一番側にいるのもその侍女です。ならば、侍女の魔力が付着していてもおかしくはないでしょう」


 確かに一理ある。

 こう言ってはなんだが、ティア姫のことを恐れている者は多い。


 何故なら、ここ数十年、他国に進軍して膠着状態に陥ることはあっても、後退するということがなかったからだ。


 それもトドメの攻撃となりうる魔導兵器を無効化されたのだ。

 それが、聖女と言われている王女となれば、人ではないと恐れられても仕方がない。


 だから、私が見る限り、部屋付きの侍女たちはティア姫に近づくことはなかった。


 今回も侍女のライラが見当たらないと、慌てて姫の寝室に入ったというところだろう。



「当たりです! ファスディール将軍」


 球状のガラスに何かが映し出された。

 台の装飾だと思っていたところが光り、何かを描き出しているのだ。


「地図か?」

「はい、陛下。帝国全土の地図を描くように設定しております。ここは皇都の……貧民街? しかし移動の仕方がおかしいですね」


 皇都の通りを光る線で描かれており、点滅している赤い点が侍女を示しているのだろう。


 姫は絶対に侍女を手放さないと思っていたが、こんなところで何をしているのか。


 すぐに迎えをと、動こうとしたところで、皇都を囲う高い外壁を赤い点滅が素通りしたのだ。


「壁を超えた? ……まさか地下か!」


 昨日ティア姫が中庭を見たいと言っていた理由が、地下道の入口を探すためだったのか!


「今すぐに古代リエンエラ神教国で使われていた地下道の現状を調べろ。あと、今から中庭に行く」


 そう命じて立ち上がる。

 今から追いかければ追いつくはずだ。


 結果から言おう。

 中庭から地下道に続く入口の痕跡が全く見つからなかったのだ。


 いや、この結果はなんとなくわかってはいた。


 地下道の存在は知っていた。だが、中庭から地下道へはどうやって行くのかという記述が残されていないのだ。

 皇太子時代からこの地下道は使えるのではないのかと思って探させていたのだが、まるで排除されたかのように何も残されていないのだ。


「いったいどうやって、あの姫と侍女は地下に行ったのでしょうか?」


 クオンも同じ疑問にぶつかったようだ。

 ただ、人が見ることができない世界を見る姫だからこそ、入口がわかったのかもしれない。


「さすがティア姫と言ったところか」

「陛下。転移ではいけないのでしょうか?」


 転移が使えると知っているクオンが聞いてくるが、転移も便利なようで便利ではない。


「地下だと、ちょっとでも出現位置を間違えると土の中に転移して圧死するな」

「あ、失礼いたしました」


 転移の使用は平地に限る。そう教本に書かれている理由がこれだ。

 土の中で圧死という結末は避けたいものだ。


 さて、ラスデニア()への帰路には一週間かかるというのを書物で読んだことがあるが、ティア姫は無事に出口までたどり着けるのだろうか。


「実はリエン領からならば、地下道に入れるとは知らないのだろうな」


 だが、城の出入口が開かずに元の道を戻った記憶が蘇った。

 一週間経ってもあちらの出口にたどり着けないのであれば、迎えに行ってもいいだろう。


 その前に、こちらでやるべきことを終わらせておかねばならない。


 ああ、先に無能を晒したものを始末しておこう。

 それから……セレス商会の者にティア姫の好みのものを聞いておくのもいいかもしれないな。


 どんな物が好きなのだろうか。



読んでいただきまして、ありがとうございます。



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