第20話 聖堂は無くなったのではない
「ここが中庭と言われているところです」
リヒトに言われてたどり着いた場所は、中庭というよりも、巨大なアーケード空間と言っていい場所でした。
見上げれば、青色の色ガラスが複雑に組み合わさり、空を模しているようになっています。
そして、その天井を支えるように細い柱がいくつも地面に降りてきて限られた空間なのですが、広いという印象を受けます。
その天井を支えるが如くに伸びた木々。
地面は色違いの石の板が並べられ、何か決まりがあるのか一定の間隔で植物が植えられています。
ふと、何かが降ってきました。
これは中庭自体が聖堂なのだと。
そう、この場所に入ってから空気が変わった感覚に陥ったのです。
「ティア姫?」
「古代の神はまだこの地を守っている」
リエンエラ神教国が帝国に呑まれたときに、その宗教は廃絶されたはずです。
しかし、まだこの地にいる。そんな感じがしました。
私は中央に向って足を進めます。すると必然的にリヒトがついてくることになるのですけどね。
中央らしきところに立ってみますが、何か違う感じがします。
魔素の流れというものですか?
もう少し足を進めます。
すると一段と魔素が濃い場所を見つけました。
そこに立って振り返ります。位置的には入ってきたところからかなり奥に来たという感じです。
私は左手を上げ、空間に満ちる魔素をあるべきところに移動させます。
聖堂と言いながらこの場には壁もなく祭壇もないのです。
そして謎の色が違う石の床と柱のように見える木々。
謎の間隔で植えられた植物。
「これが本当の姿ね」
私は魔素で金色の光を放つ聖堂を作り上げました。
私の背後には祭壇があり、木々は柱。植物はおそらく聖人を象った像。床は歩いていい場所と祈りを捧げる場所に分かれている。
「これを維持している職人はすごいわね。ずっとこの形に修復して維持をし続けていたのでしょう? でないと、こうはならないもの」
時々この世界には、不思議なものがあるのです。
神々の庭と言われるところだったり、女神の水浴び場など、まるで神が人のように暮らしていたような場所があるのです。
因みに王城ティラメイスには『太陽の神の憩いの場』という、なんの変哲もない庭があります。
そして私は左手を振って、形づくられた魔素を拡散します。
信仰が途絶えても、形づくられる聖堂ですか。この世界の神というのは、いったいどういう存在なのでしょうかね。
ん? 返事がない?
私は隣にいるリヒトを仰ぎ見ます。
めっちゃガン見されています。
何ですか!
ライラ、これをどうすればいいのですか?
ってライラが私に向って祈りを捧げるポーズをしています。
私を信仰対象にしないで!
クオン! っていない! 護衛がどこに消えたのですか!
「これは流石に予想外過ぎます。中庭の聖堂がまさかこのような形で存在していたなど、誰が思うというのですか」
あ、中庭に聖堂があるという記述は残されていたということですか。
でもその聖堂がないので、この空間だけでも維持していこうと手入れを行っていたと。
「ティア姫」
「はい」
あの両手を掴まれても、何もでてきませんわよ。
「結婚式はここで行いましょう」
「は?」
え? 結婚式? 誰のですか?
「古代の神はまだこの地にいるとおっしゃいましたよね?」
「はぁ……なんとなくですが?」
「私とティア姫の結婚式に最適な場所ですよね?」
はぁぁぁぁぁぁ! 私の結婚式!
いや、まだサインしていないです。先に私が書いた契約満了のサインをしてもらわないと、サインしないと言いましたので、まだ婚約のサインはしていません。
というか皇妃になるのも認めていません。
「陛下! 庭師を連れてまいりました!」
クオンが消えたと思っていたら、この場所を維持管理している庭師を呼びに言っていたらしい。
「こここれは、皇帝陛下。何が不備でもございましたでしょうか?」
石の床に額をつけてブルブルと震えている老人がいます。
凄く恐れられている。これが皆のリヒトの印象なのでしょう。
「いや、長年ここを管理してきたことに褒美を与える。それから、一年後に私とセレスティア第六王女との婚姻式をこの場で行うゆえ、今までどおりに管理を続けるように」
「ははっ!」
リヒトが私から離れ、庭師と話をしている間に、私はこの場所を散策しましょう。
何処かに地下に繋がる場所があるはずなのですから。
「姫様。思いついたのですが、姫様の絵姿を崇め讃えよと配ればいいかと……」
「ライラ、怪しい宗教から離れてね」
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