第6話 老商人への警告
翌朝、北風屋の荷の前に兵が立った。
「検める。町の倉庫の者が襲われた」
兵の後ろには、ベルント・オスヴァルト代官がいた。よく整えた髭と、腹にかかる華やかな上着。彼は商人に向ける笑みを浮かべている。
「こちらの護衛が、夜に倉庫へ押し入ろうとしたそうで」
「門の外から見ていました。中には入っていません」
ルカが答えた。
「それを決めるのは、君ではない」
ベルントが指を動かすと、兵がルカの腕を取った。
私は杖を握り直した。指輪と王の通行状を出せば、彼らの態度は変わるだろう。だが、それは私の身元を示すだけで、ルカが何もしていないことの証明にはならない。まず、何を根拠に連れていくのかを記録に残させた。
セシリアが私に小さく首を振った。
彼女は商会の名で保証金を預け、ルカを取り調べのあと宿へ戻せるよう手続きを進めた。私も聴取に立ち会うと申し出て、兵の目の前でルカの無事を確かめた。北風屋の商品も検められたが、違反となるものは見つからない。
ベルントは去り際、私に近づいた。
「老い先の短い身で、面倒なことに首を突っ込むものではありませんよ」
私は彼の目を見た。
「そうかもしれんな」
答えると、ベルントは勝ったような顔で背を向けた。
昼過ぎ、ルカは宿へ戻された。怒りで頬が赤い。
「旦那、あそこで名乗ってくれれば、すぐ終わったでしょう」
「お前を預けている間、私もそう思った」
「だったら」
「すまなかった。だが、名乗っただけで片づいたことにはしたくなかった」
ルカは言い返そうとして、やめた。
私はミラに休むよう促されながら、街道監察所へ出す訴えを確かめた。監察所は隣町にあり、速馬なら夕方までに着く。使者には書類の写しを持たせ、原本はセシリアが預かる。
日が落ちる頃、ゲルトが宿の裏口から駆け込んできた。
「明け方に運び出すそうです。全部、西へ」
監察官が間に合うかは分からない。
私は地図帳を開き、ルカが描いた倉庫の位置を見る。市場へ出る道は一本。そこを通れば、配給を待つ人々にも荷が見える。
「明朝、市へ行く」
「膝は」
ミラが問う。
「痛む」
「正直で結構です。私も行きます」
ルカは剣帯を締め直した。
「今度は、俺を置いていかないでくださいよ」
「頼りにしている」
私が言うと、彼は困ったような顔をした。




