第10話 王国の審理
審理が開かれたのは、それから四日後だった。
国王の命令で、監察局、政務を担う者、関係する領主と商人組合の代表が集まった。国の取引を止める前に、何が正当で、何が隠されていたかを確かめるためである。
ギデオンは財務卿の席に座った。
濃灰色の上着も、落ち着いた姿勢も変わらない。
ヴェーラが、調査で確認した事実を順に示す。
ハルフェンでは、民へ配る穀物が私的な売買に回されようとした。回収した百八十袋は無事で、その売却による損失は防がれた。
ローデンでは、橋の金で買った木材が商会の渡し場に使われた。
ルーヴェンでは、偽の保証書と引き取り名義で、北風屋へ責任を移そうとした。
それぞれを担った者の記録から、王都へ金が送られている。
さらに財務局の承認によって、集めた金の一部が、国庫の外にある口座へ移されていた。
ギデオンは話を聞き終え、国王へ向いた。
「陛下。その資金で届いた物資があります」
「それは確認した」
レオナルトが答える。
「すべてが私益だったと申しているのではない」
「正規の手続きでは間に合わなかったのです。支払いを待たせれば、次の荷は来ない。商人の信用を守らねば、王国の信用も失われました」
彼の説明には、事実が含まれていた。
国王は頷いた。
「そなたが支えた年があった。その功は忘れぬ」
ギデオンの肩が、わずかに動く。
「だが、王国のために取得したという倉庫の収益が、なぜそなた自身にも金を渡す商会へ入った」
問いのあと、静寂があった。
ギデオンは答えた。
「資金をつなぎ止めるためです。彼らが取引から退けば、仕組みは崩れます」
「そなた自身の利益も必要だったのか」
「私の信用で成り立つ取引でした」
「その支払いを、なぜ隠した」
「説明すれば、承認されなかったでしょう」
声を張ったわけではない。むしろ疲れた声だった。
私は彼を見た。
必要だから行った。認められないから知らせなかった。その間で、他人の金も名前も、自分が動かしてよいものになっていた。
私の証言が求められた。
私は立ち上がり、杖へ体重を預けた。
「ハルフェンで、空に近い袋を持った少年を見ました」
大きな言葉は使わなかった。
薬を取りに行けず帰る村人のこと。帳簿を示すために夜まで働いたセシリアのこと。保証書に名前を使われた息子のこと。
「彼らには、何に使われるかを知る機会がありませんでした。断る機会も」
ギデオンが私を見た。
「公爵として、多くを命じてこられた方の言葉ですか」
「そうだ」
私は答えた。
「だから、命じた結果を調べられることまで拒んではならん」
かつての私も、すべて正しかったとは言えない。
その事実を、彼の行為の許可にはできなかった。
審理は一日で終わらなかった。
翌日、追加の記録と証言を確かめたうえで、国王はギデオンの職務停止を命じた。関係する資産と帳簿を保全し、処分は正式な裁きで決める。ギデオンは王国の管理下で身柄を拘束された。
同時に、不正に関わっていない納品や支払いを、監察の下で続けるよう指示した。
ギデオンが席を離れるとき、私の前で一度足を止めた。
何かを言いかけたように見えたが、結局、口を開かずに出ていった。




