第7話 孫たちの仕事
クラウスは、朝から地図を広げていた。
北方の備蓄報告と輸送の記録が、机の周りに積まれている。ユリアンから、どの品をどの道で送れるか調べるよう任されたらしい。
「この道は、もう霜が降ります」
彼は街道を指した。
「早馬なら通れますが、重い荷馬車は遅れます。少し遠くても、川沿いを使ったほうが確実です」
「護衛は」
私が尋ねると、クラウスは別の紙を示した。
「通常の商隊護衛と組めないか、父上が確認しています。公爵家の兵だけで大きな列を作ると、別の噂が立ちますから」
私は頷いた。
二十歳の孫が、運ぶことだけでなく、どう見られるかまで考えている。
「よく調べた」
クラウスは少し照れた。
「まだ、北方の返事を待っています」
別の部屋では、リーゼルがセシリアと地図を描いていた。
公開された商人名簿と街路図を並べ、両替商、倉庫、商会の支店へ印をつけている。
「ここ、同じ場所です」
リーゼルが指した。
名簿では別の商会になっているが、住所は同じだった。さらに二つ、同じ倉庫を使う店が見つかる。
「名前が違うだけかもしれませんね」
セシリアが言った。
「それは、悪いことですか」
「それだけでは分かりません。共同で借りている場合もあります」
リーゼルは頷き、印の横へ疑問符を書いた。
私が覗き込むと、彼女は地図を持ち上げた。
「お祖父様、ここにある大きな倉庫をご存じですか」
「昔は、軍の荷を置いたことがあった」
「今の持ち主は、監察官に調べてもらいます」
二人はもう、次の手順を決めていた。
私は席を勧められたが、少し見てから部屋を出た。
皆が私を頼らずに動いていることに、寂しさはあった。
同時に、その手を止めずにいられることが、うれしかった。




