↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前公爵様は黄門様に憧れる  作者: なごやかたろう
前公爵の名を利用する者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/42

第10話 取り戻した名前

銀鷺商会の看板から、私の名が消えた。


人足が板を外すところを、私は通りの向こうから見た。それだけで港に広まった噂が消えるわけではない。だが、少なくとも店の入口は、本来の姿に戻る。


商人組合の掲示板には、北風屋とヴァルムント家に偽の保証や染料の申告への責任がないことが記された。被害を受けた取引先にも知らせが送られる。


北風屋では、セシリアが取引をやり直していた。


買い控えていた商人の店を一軒ずつ訪ね、毛織物を見せ、港の判断を説明する。私も同行したが、値段の話が始まると口を挟まない。


「旦那様、その顔をなさらないでください」


店を出てから、セシリアに言われた。


「どんな顔だ」


「値を下げてでも買っていただきたい顔です」


「そんなに分かるか」


「すぐに」


結局、毛織物は彼女が決めた値で売れた。港で仕入れた塩を荷車に積むと、北風屋の旅はまた商売らしくなった。


夜には四人で海辺の店に入り、温かい魚料理を食べた。ルカはフィーへの土産を選び、ミラは私が食事の間ずっと事件の書類を見ていないことを確かめていた。


リーゼルの地図帳を開く。


海の色。波の音。潮の匂い。その下に、今夜食べた魚の名を書いた。


ルーヴェンを思い出すとき、偽造された署名だけが浮かぶようにはしたくなかった。


監察官から受け取った報告の写しには、銀鷺商会の各地の支店から王都へ送られる金の記録もあった。受け取る側には、王国の財務を扱う者たちと取引のある両替商が含まれている。


その金が何のためのものか、まだ分からない。財務卿ギデオンへつながると決めるには、証拠が足りなかった。


私は必要な写しを王都へ送った。


翌朝、港を発つ前にもう一度海へ行く。ルカたちは荷の積み込みを終えてから来るというので、私は先に波止場を歩いた。


遠くで帆が開く。


私の名は、他人が作った書類にも、店の看板にも使われた。それを取り戻せたのは、名乗ったからだけではない。セシリアの帳簿があり、ミラの記録があり、ルカが聞いた人々の話があった。ユリアンも、自分の判断で屋敷の記録を送ってくれた。


私は杖をつき、波止場の端で振り返った。


北風屋の荷馬車が見える。セシリアが帳簿を抱え、ルカが手綱を取り、ミラが私を探してこちらを向いた。


手を上げると、三人が歩いてくる。


「次はどちらへ」


セシリアが尋ねた。


「荷はどこへ運ぶのがいい」


「王都へ向かう道に、塩の買い手がいます」


「では、まずそこへ行こう」


王都には、調べなければならない金の流れがある。息子にも、友にも、会うことになるだろう。


だが今朝の行き先は、私たちで決めた。


私は海に背を向け、北風屋の馬車へ戻った。

モチベーションに繋がりますので、

面白い、続きが読みたいと思ったら、

ブックマークやリアクションをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。