第9話 港の審理
審理は商人組合の会館で開かれた。
港の監察官と組合の役員が席に着き、銀鷺商会からはジルベルトが出ている。私は北風屋の仲間と並んで座った。
最初に、保証書の原本が示された。
私に似せた署名があり、公開文書から写したと思われる印が押されている。
「その日、アルノルト様は署名できる状態ではありませんでした」
ミラが診療記録を示した。
ユリアンが送った屋敷の記録も提出する。ジルベルトは、本人に代わって書いた者がいた可能性を口にした。しかし保証書には代理人の名も委任の記録もない。
次にセシリアが立った。
北風屋が買った商品、道中で売った商品、港へ着いた日を、帳簿を開いて説明する。染料を積んだ船が入港した時点で、北風屋はまだレナ村にいた。
「注文も支払いもしていません。誰かに引き取りを頼んだこともありません」
彼女は静かな声で言った。
監察官が保全した港の記録には、染料が最初に銀鷺商会の荷として受け入れられたことが残っていた。その後、申告を直す書類が出され、引き取り先に北風屋の名が加わっている。
訂正を届けたのは、ジルベルトの部下だった。
「私の知らないところで行ったことです」
ジルベルトは答えた。
部下はしばらく黙っていたが、監察官から提出時の事情を問われ、責任者の指示で書類を出したと話した。彼が保管していた指示書にも、ジルベルトの署名がある。
ジルベルトがどこまでの不正を指示したかは、なお調査が必要だ。それでも、北風屋が染料を注文したという説明は崩れた。
監察官は銀鷺商会ルーヴェン支店の帳簿を保全し、ジルベルトらの身柄を押さえて、さらに事情を聞くと告げた。偽の保証書の登録は取り消され、取引支持の書面も無効となった。北風屋の荷に貼られた封印も外される。
会館を出ると、外の光が眩しかった。
セシリアは抱えた帳簿を見下ろしている。
「これで、売れます」
「ああ」
私は彼女の横へ並んだ。
「北風屋の品も、お前の仕事もな」
セシリアは帳簿を閉じ、ようやく笑った。




