第8話 ユリアンの返事
手紙を送って八日後、王都からの使者が昼過ぎに着いた。
ユリアンの封書には、写しが何枚も入っている。私が倒れた日からの診療記録、屋敷の出入りの記録、側近が残した執務の記録だった。
偽の保証書に記された日付には、私はまだ意識が戻っておらず、書類に署名できる状態ではなかった。ミラも同じ時期に私を診ており、証言できる。
ユリアンは家に残る文書とも印を照らしていた。
「ここを見てください」
セシリアが保証書の写しを指す。
印影の端に、小さな欠けがある。昔、私が王国への献金に添えた公開文書の印と同じ形だった。
ユリアンの説明では、個人資産の保証に使う印は別に保管してあり、形も違うという。
「見慣れた印を写したのだな」
「誰でも確認できる文書です」
セシリアが言った。
偽造を考えた者は、私の署名や印を手に入れたつもりだったのだろう。肝心の当日に私が何をしていたかまでは、知らなかった。
ユリアンの手紙は、資料の説明でほとんど埋まっていた。
最後にだけ、別の筆圧で短い言葉がある。
『北方のことは私に任せてください。父上は、ご自身の店を守ってください』
私はそこを二度読んだ。
「息子は、私より公爵らしいな」
ミラが書類を揃えながら言う。
「アルノルト様が知らなかっただけでは」
少し痛いところを突かれた。
私は手紙を丁寧に折り、懐へしまった。




