第3話 北風屋の荷が止まる
昼過ぎ、北風屋の倉庫へ港の役人が来た。
宿の主人が慌てて私を呼びに来る。倉庫の入口には封印が貼られ、セシリアが役人と話していた。
「どうした」
「北風屋名義で届けられた染料の申告に、問題があるそうです」
役人が書類を示す。
海を越えて届いた高価な染料が、申告された量と合わない。荷の引き取り先として、北風屋の名が記されているという。
「私たちは染料を買っていません」
セシリアがはっきり言った。
「港へ来たのも昨日です」
「荷が着いたのは、それより前です。ただし、到着前に引き取りの指示を出す商人もおります」
役人の説明はもっともだった。名前が書かれている以上、調べる必要があるのだろう。
私は通行状と北風屋の届けを見せ、協力すると告げた。役人は礼を言ったが、名義の関係が確認されるまで倉庫の荷には触れられないと言う。
役人が去ったあと、セシリアは封印のついた扉を見つめた。
「毛織物の買い手が、明後日には品を見に来ます」
「事情を説明しよう」
「説明だけで待ってくれる相手ばかりではありません」
声は落ち着いていたが、鞄の持ち手を強く握っている。
ミラが倉庫の中を気にした。
「乾燥薬草は湿気に弱いものがあります。封印するとき、中の状態は記録したのでしょうか」
「役人に確認しよう」
「私も行きます」
ルカは港のほうを見た。
「偽の書類を作った奴を探してきます」
「人に会って話を聞くのはいい。倉庫に忍び込むなよ」
私が言うと、彼は肩をすくめた。
「分かってます。レナ村の橋で十分懲りました」
私たちはそれぞれ動き出した。
前公爵の通行状は、税関の封印を外す力を持たない。北風屋の荷を取り戻すには、この店が何を買い、何を運んだか、確かめてもらうほかなかった。




