↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前公爵様は黄門様に憧れる  作者: なごやかたろう
前公爵の名を利用する者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/42

第1話 海を見に行く

ルーヴェンの宿は、港から二本入った通りにあった。


部屋へ荷を運び込む間も、私は銀鷺商会の看板を思い出していた。あの金色の文字は、誰に断って掲げたものなのか。


セシリアは毛織物の包みを数え、宿の主人が用意した倉庫の鍵を確かめている。ルカは馬を厩舎へ連れていき、ミラは私の部屋の階段を見て顔をしかめた。


「二階ですか」


「上がれる」


「上がれることは知っています。明日も上がれるよう、今夜は早く休んでください」


「その前に海へ行きたい」


ミラは窓の外を見た。日が沈むまで、まだ少し時間がある。


「海辺までなら。長く歩きませんよ」


四人で港へ向かった。


海へ近づくほど、風の匂いが変わる。船の帆が夕陽を受け、桟橋からは荷を数える声が聞こえた。波は岸の石に当たって砕け、退くたびに細かな砂をさらっていく。


私は杖をついて立ち止まった。


王国の地図では、海は輪郭を示す一本の線だった。その線の向こうまで水が続いている。


「旦那、どうです」


ルカが聞いた。


「思っていたより、忙しい場所だな」


「景色の感想じゃないんですか」


「船を見ると、どこから来て何を積んでいるか考えてしまう」


セシリアが港の荷役人を目で追った。


「私もです」


そのせいで二人とも、海を見に来たというのに仕事の話を始めそうになった。ルカが呆れ、ミラが先に波打ち際へ降りる。


私はリーゼルにもらった地図帳を開いた。ルーヴェンの海岸線の余白に、波の音は地図に書けない、と記す。


そして少し考え、隣に書き足した。


潮の匂いは、港の手前から分かる。


顔を上げると、夕陽は水平線に近づいていた。


明日は銀鷺商会へ行く。だが、今日ここに来たことまで、あの看板に奪われる必要はない。


私は地図帳を閉じ、皆と並んで日が沈むのを見た。

面白い、続きが読みたいと思ったら、

ブックマークやリアクションをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。