↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前公爵様は黄門様に憧れる  作者: なごやかたろう
若者たちの目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/42

第2話 橋を知る二人

橋は、私が想像した以上に傷んでいた。


木の主桁には古い亀裂が走り、中央の床板は沈んでいる。両端には通行を禁じる縄が張られていた。川幅は広くないが、水は速い。


橋の近くで図面を広げていた若い女性が、私たちに気づいた。


「渡れませんよ。見るだけなら、そこからどうぞ」


イーダ・ホルツという大工だった。二十二歳だという。図面には橋の少し上流に、細い歩道を架ける案が描かれている。


「荷馬車は無理でも、人が歩ける橋なら作れます。木材も、村に残っている分で足ります」


「岸は持つのか」


私が尋ねると、イーダは川の上流を指した。


「ここへ柱を立てます。流れは緩いので」


そこへ、年配の男が杖ではなく長い測り棒を持って現れた。


「緩いのは表だけだ」


ハインツと呼ばれたその男は、長年この橋を修繕してきた大工だった。彼はイーダの図面を一瞥し、鼻を鳴らす。


「増水すれば、岸の下が削られる。そこに柱を立てるのは危ない」


「前にもそう言われました」


イーダの声が硬くなる。


「なら、どこに立てればいいか教えてください」


「その図面では駄目だと言っている」


「だから、どこですか」


ハインツは答えず、川岸へ歩いていった。


二人の背中を見送り、ルカが小さく息を吐く。


「村ではずっとあんな調子です」


私はイーダの示した岸へ降りた。草の根元に、細い空洞がある。ハインツの言うとおり、増水時には土が流れるのだろう。


だが、イーダの図面に描かれた橋の幅はよく考えられていた。人がすれ違え、担架も通せる。使える木材の長さも確かめてある。


ハインツに追いつき、上流の岸を指した。


「柱に向く場所があるのだろう」


「あります。あの子には見えていない」


「なら、一緒に見に行くか」


「話を聞かん娘です」


「今は聞くと思うぞ」


振り返ると、イーダが図面を持って立っていた。ハインツがそちらを見る。


二人はしばらく黙ったあと、同じ川岸へ歩き出した。


私は後ろからついていった。口を出したのは最初だけで、あとは二人が地面を掘り、石の位置を確かめるのを見ていた。


「ここなら、柱を置けます」


イーダが言う。


「置ける。だが、冬の水位も見ろ」


ハインツが測り棒で岸に印をつけた。


何年もかけて知ったことと、これから作ろうとしているものが、ようやく同じ図面の上に載り始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。