第71話 身バレする夜白
一人の雄たけびは、すぐさま連鎖した。
こっちに向かってくる集団を素早く避けると、俺の青いウィッグが落ちてしまった。
「やーーーー!! うそーーー!!? ほんもの!?」
「サイン!!! いや、握手でも!!」
「賢者のマヒルてゃもいるーーーー!!」
「こっち向いてください!!」
「やばーー! ナマで見れたし!!」
悲鳴と雄たけびがこだます中、大空ハンターもバレたことに気が付いたようだ。
駐車場に繋がる階の階段に向かって、キャップを振ってくれた。
「マヒル、こっちだ!」
「久しぶりの、凄い混み方……!」
マヒルの手を掴んで走り出すと、背後の叫びがより一層ボルテージが上がる。
「いやーーー嘘、手ェつないでる!!」
「推しカプが目の前で!!」
「朝日たんルートはないのかーー!」
モール中に騒ぎが広がり、連鎖していく。
ただし、マヒルの俊敏性に合わせたにしろ、一般人が追える速度ではない。
階段を駆け上り、大空ハンターの後ろを追うが、あっという間に追いついてしまった。
まあ、大空ハンターはナイトのジョブ。俊敏性はそんなに高くないもんな。厚いのは攻撃力と防御力だ。
「夜白くん、いま、レベルいくつなんだい?」
「え? えーと」
防御ピアスをつけたとして、轟滅黒剣を持っていると仮定すると……。
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不破 夜白
レベル 7
ジョブ 剣聖 S(+SS大賢者)
体力 300(+999999)
魔力 390(+999999)
攻撃力 400(+999999)
防御力 410(+5000)+200+70000
俊敏性 380(+999999)
(火魔法、水魔法、木魔法、風魔法、雷魔法、土魔法、光魔法、闇魔法、時空魔法、再生魔法。召喚魔法、古代魔法、付与魔法、創造魔法、加工魔法、結界魔法、身体強化、収納魔法、物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性)不動剣、紅蓮一閃、氷刃嵐舞、紫電烈閃。
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「こんな感じですね」
隠蔽したステータス以外を言うと、大空ハンターとマヒルが驚いた。
「あれだけ戦って、レベル2しかあがってないの? 大物倒してて?」
「それはたとえSランクでもレベル30以上の数値だぞ? どうなっているんだ君は!」
なんか、それぞれから怒られた……。
レベルは前世引き継ぎであがりにくいままだし、ステータスおかしいのは魔肉の影響だ。
「レベル7で十分Aランクダンジョンに潜れるステータスだぞ……いや、既にSランクの魔物を倒している夜白くんにいうのもアレだが」
「夜白くんの非常識は前からですから」
マヒルがフォローのようなものを入れるが、隠しステータスを知らないと納得できないだろうな……。
背後からは、俺の名前とマヒルの名前が連呼されている。
このままだと、凄い人数が宇賀神ハンターの車を追跡してきそうだ。最初は高校生や中学生が多かったが、今の群れは大人も多く混じっていた。
『何かファンへのプレゼントはありませぬか?』
ザガン……俺のことをよく知ってて何を言うんだ?
俺の性格上、そんなものを持ってるわけがないだろう。
『非公式で、ぬいやアクスタは大いに売れているというのに』
ぬい? ぬいぐるみか。
……そうか。唯一バラまけるものがある。
「ファンのみなさんー、走って他の方に迷惑をかけないように。そしてこれは俺からのプレゼントです」
俺は高くジャンプすると、俺たちを追う珍走団に向かって、F級ダンジョンの魔石を投げた。
当然、人には当たらないように加減してある。
二十個程度を投石したが、F級ダンジョン魔石はまだ山のようにあった。でも全部投げなくてもいいだろう。
一つ千円と少し。狩ったのは俺――授業中に仕方なくだが――一応はプレミアムではあると思う。
野球でいうところのサインボール……ほどではないか。
『おお、さすがです我が王! 足が止まりましたね』
俺が目の前だからか、前方後方に満遍なく投げたせいか、集団の動きは止まった。
そこにプラス十個ほど投げて、俺はマヒルたちに合流する。
「力技で止めたな、夜白くん……」
「ほとんどは魔石目当てかもしれないですけど」
俺は肩をすくめた。
そのまま三人で、駐車場に入り、宇賀神ハンターの待つ車へ乗り込む。
しかし、プロになってもこの騒ぎか……。今後、緊急じゃない限り、ネット通販だな。
母が、ダンジョンがない時代は翌日には荷物が届いてたのよーと言っていたが、今は普通に数日かかる。
「……でも、変装も楽しかったな。また行こうね、夜白くん」
マヒルに微笑まれて、俺の決心は一秒で崩れ去った。
やっぱり、現地調達が一番だな。
その日の夜、ネットを見ていると俺の名前がトレンド入りしていた。
ファンサ 魔石まき 剣聖と賢者のデート
エゴサをしたいわけじゃないが、最低限検索したところ、俺が投げた魔石は宝物として拾ったファンに大事にされているそうだ。
色々ととっておいて見るもんだな。
『今後も、この手のファンサが流行りそうですな……』
花鈴から、防御力80000を超えたというメッセージを読みながら、俺はパソコンを閉じたのだった。




