第七話 帰宅した夜白
みんなと連絡先を交換して、午後の座学を終えた俺は行きと同じルートで帰宅していた。瞬間移動は、みんな覚えられたらいいのに。一番可能性が高いのは賢者のマヒルか。
[みんな無事に帰宅してる~? 寮までなのに、結構僕も声かけられてる]
グループチャットで和成が発信している。声かけ?
[マヒルさんは大丈夫か? こっちも寮だがSランクはそうとう大変そうだぞ]
楓はマヒルさん呼びなのか。そしてお前もなんか巻き込まれてるのか?
[バスの中で悪目立ちしちゃってる……凄い声かけられるね]
マヒルはナンパにあってるのか? 今すぐマヒルの座標に瞬間移動するか?
それぞれから俺の無事を確認されるが、ご覧の通り何もない。
しいて言えば、あまりにも物を知らなさすぎるので、さすがに去年の朱雀高校の配信動画をみようかと思ってたところだ。
[Sランクの夜白がなんともないってなんで? あの動画SNSでバスってるのに帰り道、誰からも声かけられなかったの?]
ああ……そういう意味か。地元から朱雀高のバスは途中で停車しないし、バス停に並んだ時点で隠形を掛けていたから俺の姿は見えないようにしてあった。料金はきちんと払ったけどな。
そして降りてから他のバスには乗らず……家まで瞬間移動してきたわけだから声なんてかけられようがないな。
[みんな頑張れよー]
[うわー他人事~]
[オレと和成は寮なだけマシだな……。声かけてくるの朱雀生だけだから]
[私、明日から辛そう……頑張るね]
なんとなくで仲良くなったけど、このメンバーと仲良くなれてよかったな。
前世年齢含めて俺が一番年上のおっさんなのだし、みんなをひっぱっていかないとな。
「おにいちゃーん!」
足音が階段からあがってきて、妹のきらりが顔を出す。
中学二年になったばかりの妹のきらり。別にシスコンではないけど可愛い妹だ。
「見たよ、動画! Sランクジョブなんてすっごい! 全国で一人しかいないジョブじゃん」
ああ……なるほど? マヒルがAランクは全国に数人で、Bランクジョブは全国二十人前後だとか、Cランクジョブで百人前後だとか言ってたもんな。
Sはレアリティなんだな。前世でSSランクだった俺は、レアリティというより力の等級だったから感覚が違うが。今は鑑定によると、いっしょくただけど。
「あんまり嬉しくないの?」
「そういうわけでもないけど。どうやって配信すればいいのか分からなくてな」
「あ、そっか。お兄ちゃんのタイプならこの手のダンジョンライバーさんとか、参考になるかも」
朱雀高生徒、卒業生に限らずきらりは何人も動画を送ってくる。
覚醒紋を持つ学生を教育する機関、紋章者適正審査委員会(EMAA:Emblem
Master Aptitude Agency)は全国に四校を許可している。
北に北海道、青龍高校。都内の朱雀高。京都の玄武高、長崎の白虎高。四校合同競技などもある――というのは俺が昼間唯一教師から聞いていたところだ。
「お兄ちゃん大丈夫? Sランク重い?」
きらりが不安そうな顔をしたので、その頭を撫でる。
兄貴が心配させたらダメだろ。
「いや、俺よりSランクで賢者のマヒルがな……」
「あー見た見た! すっごい美人な人! お兄ちゃん友達なの?」
「まあな」
きらりは首を傾げた。
そんな仕草も可愛い。
「賢者って魔法使いの最上位だよね? 火魔法とか風魔法とか見れるのかなって思ってたら挨拶だけで、結構微妙なコメントが多かったよ。あとは見た目に関する褒めばっかり目立ってたかな」
確かにそういえば俺も賢者は元素魔法からスタートしたな。マヒルの覚えていた召喚魔法はもう少し後だった。防御力が高いのもあるし、マヒルの賢者ジョブには謎があるな。
学食では楽しそうに笑っていたな。微妙なコメントが付いてたことなんて、みじんも感じなかった。
……俺は全然だめだな。サポートするとか言っておいて、早くも役に立ってない。
もう少し真面目に勉強して、マヒルを助けてあげねば。
俺も大賢者だったんだ。現代の賢者くらい助けられなくてどうする。
とりあえずマヒルの目下の問題は魔力だな。なんとかするか。




