第69話 デートする夜白!?
花鈴からは防御力100を付与した胸当てと、片方で50ずつの防御が入っているピアスをもらった。
轟滅黒剣なしで、自分のステータスに200追加されたことになる。
花鈴はなんだかんだ防御100をこなしているが、俺がマヒルに魔力を渡すときのあの苦労はなんだったんだ。
『我が王、ミスリルに強大な魔力を流し込めば限界がありますぞ……例えるなら同じミスリル素材でも、花鈴殿はマヨネーズのノズルを使って注入しているのに対し、我が王はキャップどころか上部カットしてあふれるマヨネーズを必死に細だしにしているのも同然です』
花鈴の魔力量はミスリルに向いていて、俺の魔力量は多すぎて繊細な作業には向いていない、と。
『我が王は、さんざん剣を爆発させていたではありませんか。あれと同じことです』
そっかぁ……前世ではオリハルコンとかその上に石が割と簡単に手に入ってたからなぁ。
賢者の時代は使えてたけど、大賢者になってからは、思えばミスリルは脆くて使ってなかったかも。
「夜白くん、おまたせ」
マヒルが、綺麗な髪をなびかせて歩いてくる。
もう屋上焼き肉パート2は終わり、煙やにおいがつくことから実技服で食べて、制服に着替えたところだ。
寮で生活する、朝日、楓、和成はそのまま帰ったが。
あとで魔力飽和で苦しくなるとしても、強くなるためにはアシュラオーガの魔肉を食べると言い切ったので、措置として夜に俺が寮まで瞬間移動をして魔力ドレインをする約束だ。
「今日は寄り道してもいいか?」
「うん、いいよ」
「防御ピアス貰ったんだけど、ピアスの穴をあけないといけないんだ」
花鈴の防御50ピアスを見せると、マヒルは細い指でそれを転がす。
「うん、似合いそう。……でも、ピアスあけるなら私もプレゼントしたかったな」
「……そうか」
理性は、花鈴の防御つきピアス以外意味のないことをするなと叫んでいたが、感情のほうはマヒルからの贈り物に傾いていた。
クスクスと笑ったマヒルは、俺の頬を軽く押す。
「半分冗談。……せっかく付与されたピアスなんだから、使わないとね! その代わり、ピアッサーは私がプレゼントしていい?」
「ああ、それは嬉しい」
突然、にゅっと宇賀神ハンターが顔をだした。
なんだ、いきなり。空気を読んでほしい。
「街中にデートかい?」
「ええまあ」
「うろたえもしないとは可愛げない……ちょっと待ちなさい。変装道具だすから」
宇賀神ハンターが俺に張り付いてから、マヒルと二人の時間がとれない。
行きかえりは車で送迎だし、谷之呼び出され事件のときは助かったけど。
最後に長時間張り付いていなかったのは、ゴールデンウイークダンジョンで結界によって隔離されたときくらいだ。
魔王四天王を倒すまで、ゆっくりとしたデートはお預けなんだろうなぁ。
宇賀神ハンターがもってきたのは、ウィッグと眼鏡、帽子だったが帽子に制服はおかしいだろう。
逆に目立つと思う。
かといって、眼鏡程度でマヒルの美貌は隠せるのか?
「なんか……もっとましなのないんですか?」
こんな雑な言い方を出来る大人は宇賀神ハンターくらいだ。
いろんな意味で、この人には慣れた分、ずげずけとした言い方になりつつある。
宇賀神ハンターもゴリマッチョな見た目に反して、いい人だからなぁ。
「一応、夜白くんとマヒルちゃん用に買いそろえたんだが……だめだったか?」
そもそも朱雀校の制服が目立つぞ、と言い切られると反論が出ない。
覚醒者だと、見ればいっぱつでわかるもんな。
仕方ない――金髪のウィッグだと火乃森を思い出させるから、この青髪にしよう。
ネクロマンサーの誠志郎の青とは少し違うグラデーションが入っている。
マヒルは金髪もオレンジ髪を避け――橘を彷彿とさせる明るさだった――ミルクティーカラーのツインテールを選ぶ。
髪の長いマヒルはしっかり自分の髪を巻き込んでウィッグをつけたが、俺は適当に挟んで止めた。短いし、これでいいだろう。
「じゃあ、色々買い物できそうなモールでいいか?」
「お願いします」
俺たちが送迎されて帰るのは、一部の朱雀校生にとって見慣れた景色になったようだ。
数人が手を振ってくるのに返しながら、俺は早く平和が戻ることを祈る。
宇賀神ハンターだって、国内トップのギルドマスターなんだ。俺についている間の不在は、副ギルマスの負担をきっと増やしているだろう。
運転してくれる宇賀神ハンターの見えないところで、俺とマヒルはそっと手をつないだ。




