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元大賢者、転生してレベル1からダンジョン配信  作者: 相木ふゆ彦
第三章 四天王編

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第68話 みんなのピンチに困る夜白

「よーし、目指すは防御力100000よ!」

 

 眼鏡を拭いて、そう高らかに宣言したのはアシスト科の花鈴だ。

 轟滅黒剣(ごうめつこっけん)を50000仕上げてくれた、職人の相棒は今日も頼もしい。

 

「四人目の魔王がくる前に、最低ラインはそこね」

 

 十万の防御力はおいしいので、止める理由はない。

 オロバロスの防御力はいくつだったかな……。あいつの得意はとにかく攻撃力だ。

 

 強さでは魔王の中で最高値だった気がするな。

 

「もう、ぶっちゃけ100000とか訳わからないけどね! 考えるのは止めたわ……わたし個人での付与はもうすぐやっと100だし、それでもクラスでは断トツなんだけどね?」

 

「さすがー花鈴だなー」

 

 スイッチの入った花鈴は、話を聞いていないので雑な相槌を打つ。

 俺が出来るのは、花鈴の前に魔石を積み上げていくことだけだ。

 

 轟滅黒剣(ごうめつこっけん)を作業台に寝かせると、花鈴はすぐに無言で作業にとりかかる。

 

「夜白! ちょっと」

 

 和成が、背後から俺の腕をつかむ。

 なんだ? 顔色が悪いな。

 

「この新しい装備……装備すると、僕の体力が10000越えるんだけど??」

 

「良かったな」

 

「良かったな、とかそういうことじゃないんだよ! 魔力もやたら伸びてんだけど」

 

「それは特別な魔肉のせいだな」

 

 アシュラオーガの魔肉はまだある。そもそも一つのサイズがでかすぎるんだ。

 和成は、胃をさすった。

 

「アレは……おいしいんだけどさ、油がよすぎて逆にもたれてるんだけど」

 

「その年で?」

 

 おかしいな、俺は前世でも二十五だったが肉で胃もたれしたことはなかったぞ。

 

「楓もだよ、昨日の夜にじゃんけんして楓が負けて胃薬かいにいって二人で飲んだんだけどな」

 

 そういえば、今朝はマヒルも大人しかったな。

 疲れが出ているのかもと思ったが、胃もたれ……?

 

 俺以外はみんな胃もたれって、アシュラオーガの肉には状態異常なんてついてなかったぞ?

 俺は、あんま揺らさないで……と呟く和成を連れて、朝日を探した。

 朝日が一番、顔色が悪かった。土気色に近い。

 

「や、ヤシロ……なんか悪いもの食べたのか、なんか吐きそう」

 

「朝日まで……」

 

 楓はしゃべっているがフラフラで、マヒルは比較的しゃんとしていた。

 密かに回復魔法を当ててみたが、和成の顔色は悪化した。何故……?

 

『我が王、アシュラオーガの肉が強すぎたのではありませんか?』

 

 ん? どういうことだ?

 

『それがしも、覚醒と進化を短いスパンで繰り返して成長しましたが、先日の谷之の戦いのときの楓殿のようになってましたからな。強さに体がついていけずに、魔力のオーバーヒートを起こしたのです。腐ってもそれがしはハイデーモンでしたから、ダンジョンで暴れるだけで済みましたが……Sランクジョブのマヒル殿はギリギリとして、他はアシュラオーガの肉の影響が暴れてるのやも』

 

 なるほど。

 だから、ジョブランクが低い順に具合が悪いんだな。

 

 さっきは魔力にあてられてる和成に回復魔法をかけたから、より魔力がのっかって具合が悪化したのか。

 

『これからダンジョンに連れて行って、赴くまま暴れて貰えるように藤川に頼んでみては?』

 

 いや、うごくのも辛そうだしなぁ。

 アビリティインストラクターの藤川は、実技の担任だが俺の配信が凄いことになってからは、へこへこと腰が低い。

 

 頼むのはいいけど、こっちのが早いかも。

 魔力ドレイン。

 

 アシスト科も魔力を使ってる中、拡大すると厄介なので和成から順にタッチしていく。

 すると、見る見るうちに顔色がよくなった。

 グロッキー寸前だった朝日もけろっとして、首をかしげている。

 

『飽和してる魔力だけを吸い取ったのですね! 我が王のレベルになるとアシュラオーガの魔力程度簡単にいなせますからな!』

 

 まあ、そんな感じだな。

 ステータスは伸びているんだろうが、それでも体に持て余す魔肉か……。

 

 あとで、次も食べるか聞いてみよう。

 

『マヒル殿はレベル55から、今は65。朝日殿は47から54レベル。楓殿は40レベルから50レベル。和成殿は31から38。入学式でレベル1だった方々が五月でこの成長ですぞ。成長疲労は溜まって当然です』

 

 プラス、そこに魔肉でもってステータスがごりごりに盛ってきたもんなぁ。

 前世の俺でも、そんな加速度でレベル上げをしたことはない。

 

 みんなには、つい大賢者として完成してしまった俺のノリで付き合わせてしまったな。

 少しは反省せねば……。

 

 グループチャットに、今回のみんなの具合の悪さについての謝罪を書いていると、花鈴と目が合った。

 作業中に珍しいな……。

 

「わたし、感謝してるんだよ。夜白担当で」

 

「どうしたんだ、いきなり」

 

 漫画の最終回みたいなことを言いだしたぞ。

 武器や付与が大好きな花鈴が、しみじみした空気を出している。

 

「あのキマイラ配信とかみてさ……わたしが一から作った武器だったら、絶対折れちゃってるなって。だから自力で魔剣を持ってきた夜白に、武器をパワーアップさせられることが出来て嬉しい。そうじゃなきゃ、夜白が怪我したら泣いてたよ。自分の防御アップが足りなかったからだーって」

 

 実は、サングロス戦では怪我をしているのだが……あのときは轟滅黒剣(ごうめつこっけん)を持ってなかったし、投げ飛ばしてたし……。

 

「感謝してるよ、花鈴」

 

 でも、そうか。俺は一人じゃない。

 分かっているようで、分かっていなかったことだ。

 きらりに教わり、花鈴に教わり、でもきっかけはマヒルたち仲間から教えてもらったことだ。

 

『それがしもいますぞ』

 

 そうだな……、ありがとうザガン。

 俺たちは、強くなって、影竜王オロバロスを倒すことだけを考えよう。

 

 今は、それだけを。 

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― 新着の感想 ―
いきなりは誰でもオーバーヒートしちゃうよね。少しは手加減しなくちゃね。わかってる?ヤシロ
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