第60話 競争させられる夜白③
今度は十体ごとに、小刻みに轟滅黒剣を振るうことにした。
これが、結構面倒くさいのだ。
魔力の刃を振り切らないように、轟滅黒剣の刀身を短く使うので、腕をいっぱいに伸ばせない。
『ひとまとめに魔石が落ちるので、宇賀神ハンターのようにてんでバラバラの状態を拾うのは避けられてますが、思い切り面倒そうですね、我が王』
そうだな。狭いバスの中で身動きがとれない気分に似ているな。
『あと十分ですから、もう一撃で決められては? どうせ拾うのは間に合わなそうですし』
宇賀神ハンターのほうは再生 がきそうだよなぁ。
宇賀神ハンターが倒すのは簡単だけど、魔石がこんがらがりそう。
『でしたら、上に戻って再生待ちをされますか?』
そうするか、時間までうろうろするだけ、拾う人の手間を増やす気がする。
魔石があまりばらけないように、魔力は込めつつ前後左右に疾走した。俺自身が移動しながら魔石を前に飛ばしすぎないように注意する。
プロハンターめがけて集まるように轟滅黒剣を振るうと、計算通りに魔石は中央に山になった。
「宇賀神ハンターのところに戻りますね」
「え……?は、はい……」
何故か呆然としている追加ハンターの横をすり抜け、俺は上の階に上る。
こんな調子で谷之に勝てるだろうか。
『ご安心を。かっこいいポーズやら、スキルにこだわりすぎて魔力切れを起こしながら、朝日殿を敵視するのに必死です』
朝日が楽しめているといいんだが……。そういえば奴は朝日をハグしたいんだったな。
そんなやつと二人きりにしなければ良かった。
『アグニラの盾で、一焼きですよ。我が王』
いや、さすがに殺したらまずいから。
〇剣聖、めちゃくちゃ余裕w
〇拾うのが完全に間に合ってないww
〇なあ、これ時間内に拾われないと夜白くんのにノーカンなわけ?
〇倒した分が勝負なんだから、時間きても拾い終わるまで勝負じゃないの?
〇さっき、四谷ハンターくるまで10分は暇そうだったし草
〇国内最強と国内最速のプロハンターが間に合わないww
〇三年になったらインターン始まるけど、剣聖取りがやばそうな未来
〇いや、マヒルたそと独立でそ
〇それ、資金どーすんのww
ふうん、将来そういうルートもありか。
まだ先だけど、頭に入れておこう。
「おお、戻ってきたのか、夜白君」
三層の魔石は、だいぶ減っていた。
俺が計算しないで魔力をこめすぎたせいで、宇賀神ハンターは汗だくだ。
今日の宇賀神ハンターの晩御飯にキマイラ肉をそっと入れよう……。
「時間がくるまで、ここでリポップ待ちしますよ」
「四谷ハンターは? 下かい?」
「ええ、まあ、魔石つみあげてきたんで」
宇賀神ハンターは苦笑いしながら、それでも両腕を動かしていく。
拾った魔石は、背中のリュックにノールックで投げ込んでいた。
俺は、リポップが始まりそうなところに立ってスマホを広げる。朝日のチャンネルは、殴り倒しながらコメントにこたえるゆとりがある。
その画面の遠くで、へろへろの谷之が映っていた。
なんで、こいつこんなひょろひょろしてるんだ?
『一層の魔物は防御力が310からなので、攻撃力300の谷之では一撃で仕留め切れてないのです。それで、スキル使っては無駄に疲れているようです』
朝日は攻撃力350だったっけ。だから朝日はワンパンできたんだな。
『我が王、あと三分です』
配信画面でも、多くの人がカウントダウンを始めた。
それと共に、リポップがスタートした。
轟滅黒剣を、ほぼ同時に強く振りぬく。
〇エグ!!再生した瞬間見れた?
〇PCで超スローにしてたから、一瞬見えたw
〇早すぎる大草原
〇これは序章に過ぎない……
〇ちょ、ダンジョンの壁えぐれてね?
〇RPGの世界に行ったら一瞬で魔王倒してるレベルw
〇キマイラが剣聖に勝てないんだから、C級ダンジョンが叶うわけないww
とりあえず、最初の一撃で倒した分は片付けたかな。
……また宇賀神ハンターの仕事を増やしたが。
そう考えると、ザガンの拾う速さはとんでもなかったんだなぁ。
「時間です! 選手の皆さんは上がってきてください」
俺は、配信画面にぺこりとお辞儀しながら配信を切った。
さあ、何位かな。




