第59話 競争させられる夜白②
スタートとともに、俺たちは四方に散った。
ザガンに頼ってもいいが、なんか個人的に嫌なので、自力で十層か二十層行きの魔法陣を探す。
宇賀神ハンターなら、追ってこれるだろう。
これ見よがしに、谷之が魔物に槍を刺していたが、俺は広いところで暴れたい。
楓も、新武器の威力が分からないからだろう。魔物を倒さずに二層を目指して、つっこんでいく。
しかし、傍からみたらタンクなしの楓は危なく見えるだろうし、朝日は火力不足だと思われるんじゃないか?
『魔王グラキエス戦を見たものなら、あの火力は見ているでしょう。むしろあの時、目立たなかったのは楓殿です。グラキエスの双刀を使った未知数の楓殿のお披露目の場でしょう』
なるほどな。
進路を妨害してくる魔物だけを薙ぎ払いながら進む俺は、まだ魔法陣を見つけられないでいる。
「ボルカニック・シールド!」
大盾から、業火が大量に吐き出された。
大盾を器用に操る朝日が、ロックバードを大量に瞬殺した。ご丁寧に、魔石を拾われるのを待っている余裕もある。
「螺旋槍!」
谷之も、言うだけあって一撃で一体は仕留めている。
そうか、ここの魔物は攻撃力300もあれば一撃なのか。
「朝日、シールドスキルに頼ると、魔力ポーション飲むのに疲れるから普通に殴るといいぞ」
「あ、そっか。ここはS級じゃないんだもんね!」
朝日が納得の顔で、防御を固めながらアグニラの盾でロックバードを小突いていく。
一打必死で、振りかぶるわけでもなく殴っていく朝日に、谷之の顔が引き攣る。
「んなアホな……。盾のギミックおかしいだけやないんか? E級ジョブでしかも大盾使いがそんな攻撃力高いわけあるか!」
もはや散歩モードで魔物を粉砕していく朝日を見送って、俺は二層に下りた。
魔法陣を出すために抜刀しても良かったが、それだと大盾使いの朝日に移動で面倒だからな。
二層に下りた俺は、とんでもない光景を見た。
楓がバーサーカーモードになっている。もちろん、グラキエスのドロップ品にそういう効果があったわけじゃない。
「はははははは、C級ダンジョンの魔物が豆腐みたいに切れるじゃないか! なんだこれは、すげぇ快感!」
グラキエスの双刀は、元々短くはなかったが、刃に氷の断面が面積を広げている。
走りながら、スパスパと魔物の首を飛ばしていた。
顔に返り血が飛んでいて、けっこうやばい絵面だ。
『それがしも覚醒を最初にしたときは、やはりはしゃぎましたなぁ』
おまえもこれをやったのか、ザガン。
その光景を見なくてよかったよ。
俺は、三層に下りることにした。
広がるのはカニバル・ウルフか。
『背後でついてくる宇賀神ハンターのことを考えて、そろそろ大量討伐しましょうぞ』
あ、そうか……。
俺は魔物に避けられる魔力量なので気が付かなかったが、宇賀神ハンターは普通に倒している。
もう少し近距離に寄るか。
『時間はあと二十四分です』
そうそう、時間が決められていたんだったな。
ザガンがいて良かった。
「行きます」
自分の配信ドローンに呟く。
宇賀神ハンターを背中に、俺は斬撃を広く飛ばした。これは技でもなんでもない。
轟滅黒剣に慣れてきて、ようやく剣聖らしいことが出来るようになった。
要は、剣に長く魔力を纏わせて鋭利な風を纏わせるイメージだ。
前方と後方にそれぞれ、轟滅黒剣を振るう。
煙と鮮血が、香った。
〇やっておしまいなさい、夜白さん!
〇前が見えねぇぇ!
〇衝撃波はなつ剣聖
〇剣聖ってなんだっけ
〇もはやレーザービーム草
〇おかしいな宇賀神ハンターがヒロインに……?
〇視界回復してきたぞ!
〇……嘘でしょ、フロアの魔物全滅……?
うーん、やはりC級ダンジョンだなぁ。
キマイラは多少手ごたえがあったが、ここじゃ防御を感じられない。
楓じゃないけど、紙を切っているのとそう変わらないぞ。
宇賀神ハンターが、急いで魔石を拾ってくれているが時間はかかりそうだな。
俺も手伝ったほうがいいのか……?
『おそらく魔石拾いは、手を貸さないほうがようでしょう。また京のS級が不正だなんだと言いかねません』
「すまんな、夜白くん。応援を呼んだから、応援と一緒に進んでくれ」
「なんだかすみません」
もっと、配信的にも見せ場を作るべきだったのか?
十分ほどすると、タンクではなくアサシン系のプロハンターが記録ドローンを振りほどく勢いできた。
見たことある人だなぁ。
日本最速のプロハンターの人だっけ?
「じゃ、進みます」
せっせと魔石拾いをする宇賀神ハンターを置いて、その人と四層に下りた。
今度は、さっきの反省を生かして二撃でフロアを全滅させるのは止めた。
一応、学習できる男だからな。




