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元大賢者、転生してレベル1からダンジョン配信  作者: 相木ふゆ彦
第三章 四天王編

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第58話 競争させられる夜白①

 なんだか、えらい騒ぎになってきた。

 俺の中では野次馬は想定してなかったし、話し合いで満足してくれれば一緒にパーティ組んで戦っても良いとすら思ってたんだが。

 

 平和が遠くなってしまった……。

 宇賀神ハンターは、DCAから派遣されたふりをしていたが、俺たちのダンジョン手続きをしている時点で、色々無駄な気がする。

 

「あんた、谷之さん? 勝負っていうならオレらも混ぜてもらおうか」

 

「……だれや、おまえ」

 

「夜白のパーティーメンバーの楓だ! 動画に書き込んだくせに見てないのか」

 

 ちょっと楓、なんで参戦しようとしてるんだ?

 あ、魔石狙いか?

 

『何故その結論に至ったのですが、我が王』

 

「あ~なんかしょぼい双刀使いがおったわぁ。おまえか」

 

「じゃあ、ボクも参戦しちゃうもんね~! いいでしょ、谷之センパイ」

 

 朝日まで? どうした、魔王武器コンビ。

 実はそんなにC級ダンジョンが楽しみだったのか?

 

「ぶ、くくくく。E級タンクの女の子まで、Sランク槍聖の俺様と勝負?」

 

 谷之は、よほど何かが面白かったらしく身を捩って笑い転げる。

 笑い上戸なのか?

 

「ええやん、その勝負受けてたってやろうやないか。その代わりに、負けたら朝日はん。あんたさんをそっちが負けた数だけハグさせてもらおうやないか!」

 

 なん……だと?

 朝日はボーイッシュだが、グラマラスな体形をしている。

 普段、俺を男避け《むしよけ》に使わなければ、かなりモテているはずだ。

 

「ま、俺様の本命はマヒルはんやが、今回はそれで手打ちにしてもええで」

 

「馬鹿なことを言うな! マヒルにも朝日にも触らせない。ハグしたいなら俺をハグしろ」

 

 女性をもの扱いなんて、なんて嫌なやつだ。

 話し合いなんかでもう済まないぞ。

 

「はあ? 夜白はんをハグして俺様に何の得があるんや。ふざけたこといいくさって」

 

 なにがだ。俺は大まじめだ。

 

『落ち着いてくだされ、我が王……。そやつはゴミです! ステータスを見比べてください』

 

 ザガンに言われて、俺は谷之のステータスを見た。

 

―――――――――――――――― 

谷之やの光太郎こうたろう

レベル   25

ジョブ  槍聖

体力  300

魔力  250

攻撃力 300

防御力 250

俊敏性 200

――――――――――――――

『そして、楓殿と朝日殿のステータスも』

 

 笑いころげている谷之はシカトだ。

 こっちが勝ったら目つぶししようかな……。こいつにけがれた目で見られたマヒルと朝日の分まで。

―――――――――――――――

雪村 楓

レベル  40

ジョブ  双刀使い

体力  440

魔力  300

攻撃力 460+10000

防御力 350

俊敏性 370

――――――――――――――――

真神 朝日

レベル  47

ジョブ  大盾使い

体力  500

魔力  420

攻撃力 350

防御力 600+10000

俊敏性 300

――――――――――――――――  

 あー、うん。

 谷之が二人に勝ってる項目一つもないな。

 

 そもそもレベルから大負けしているし。

 CランクジョブとEランクジョブでレベルのわりに少し伸びが悪いものの、魔肉が補っている感じだな。

 

『朝日殿はさらにアグニラの盾で同じ規模の焔攻撃ができます。楓殿も、おそらく使えば氷属性スキルが付いてくるはずです。あの無礼な小僧の勝ち目はどこにもありませんよ』

 

 と、いうかアビリティインストラクターで実技の担当である藤川のステータスも、抜き去っているな。

 確かにこれなら、どんなに不利でも負けようもない。

 

「むしろ、谷之が負けた時は俺たちになにしてくれるんだ?」

 

「谷之センパイと呼べや……土下座でもなんでもしたろうやないか」

 

「配信ドローンが回ってても?」

 

 谷之は一瞬ひるんだ顔をしたものの、顎を突き出した。

 

「ええよ、男の約束や」

 

 朝日が、一歩踏み出す。

 その手には、スマホの動画アプリが動いていた。

 

「勝負中にとれた魔石も……?」

 

「ええやろ、万が一にも負けたらくれたるわ」

 

 くるりと踵をかえした朝日は、野次馬に向かって声を張り上げる。

 

「ききましたかー? みなさーん! 動画とってましたか~?」

 

 大勢から、とったとったと大声でレスポンスが返ってきた。

 ここが朝日のライブ会場と言われても納得するな。

 

 こういう配信とかに対する対応なんかは、グループの中ではトップクラスだ。

 マヒルや俺は真面目すぎるし、面白い話も出来ない。

 

 楓は、配信では割と端的にしかしゃべらないスタイルなので論外だ。俺たちの前ではしゃべるほうなのだ。

 

「本来は賭け事は困るんだが――仕方ない。DCAから一人ずつ職員を出して、魔石を拾う係をするから、君らはぞんぶんに狩りなさい」

 

 桜井ハンターと、あと二人知らないタンク職の人が大盾に巨大なリュックを背負って並んだ。

 大空ハンターはいないのか……まあ、スカイギルドのギルマスだもんな。

 

「夜白くんの魔石拾い係は俺だ。他のやつだと拾いそびれるかもしれないからな」

 

 宇賀神ハンターが、リュックをしょって言い出した。護衛だもんな。

 

「ほんまに宇賀神ハンターと夜白はんって癒着ないんですかあ?」

 

「記録用ドローンでちゃーんと不正しないように、チェックいれるから安心したまえ。キマイラをなぎ倒していた夜白くんにはそもそも不正する必要はない」

 

 魔石拾い担当の皆さんが、宇賀神ハンターを含めて、リュックが空であることを周囲に見せる。

 谷之の担当になった桜井ハンターが、若干嫌そうに見えるな。

 

「そして、魔石を拾いながら後から追うプロハンターたちの記録配信は、DCA本部にアクセスすると四人分リアタイで楽しめるようになっているぞ!」

 

 宇賀神ハンターは個人運営のギルドのギルマスなのに、国営のDCAに凄い手を貸すなぁ。

 それとも大人同士でなにか密談が成立しているのだろうか。

 

「さあ、選手は支度が済んだらドローンをあげてC級ダンジョンの入り口に一列で並んでくれ!」

 

 選手? なんのこっちゃ。

 ダンジョンに併設する着替えルームで実技服に着替えた俺たちは、それぞれ武器を持ってC級ダンジョンに入る。

 

 朝日も、楓も、谷之を叩きつぶしてやるという顔だ。

 敢えて声はかけなかった。

 

 拳を突き出すと、二人ともこつんと返してくる。

 そんな俺たちを、谷之は見下した視線で眺めていた。

 

「用意――スタート!」

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― 新着の感想 ―
谷之の泣き顔が想像できる。かわいそうに
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