第57話 新たなるS級ハンターに挑まれた夜白
意外なことに、宇賀神ハンターはこの件を既に知っていた。
DCAから、昨日のうちに連絡がいっていたらしい。でも、俺が相手にすると思わなかったようだ。
「いいか、夜白くん。くれぐれも、くれぐれも、人殺しはしないように。相手がどれだけ生意気だろうと短気は起こさないように」
「さすがに俺もそんな犯罪起こしませんよ……」
俺が返事を送ったことで、DCAでも騒ぎが起こったらしい。
C級ダンジョン前に野次馬がかなりいるそうだが、ふくれあがるだろうと警備を増やそうとしているそうだ。
そんなに騒ぐことか……?
対戦内容も聞いていないし。もしかすると腕立て伏せの回数対決とか、そういうものかもしれない。
『でしたら、わざわざダンジョンの前に呼び出さないでしょうに……。おそらく魔物討伐数を競うのがベターでは?』
そうか。そういうものか。
「マヒルくんと和成くんは、今日はいないのかい?」
「テスト勉強らしいです」
「ほう? 夜白くんは大丈夫かな」
「俺は勉強で詰まったことはないので……」
一番後ろの席に座っていた俺を、前に座っていた楓と朝日が急に振り返ってきた。
「裏切りものぉ~、いつから勉強できる設定に……!」
「夜白も仲間だと思っていたが……」
一応、元大賢者だぞ。
理論や数式なんかは得意だ。一番点数が低いのは国語だが……。
あれもテンプレートを理解すれば、それなりに回答率はあがるぞ。
「ダンジョン終わったら勉強みようか?」
「くうう、強者のセリフ!」
「……夜白の説明で、俺はわかるんだろうか」
なんだか失礼だな。
マヒルとはよく、瞬間移動で学校に移動したあと、よくノート見せ合って予習復習しているぞ。
そんな時に、わかりにくいと言われたことはない。
「もうすぐ着くぞー。着いたら、おれがダンジョン手続きをするから玄武高に喧嘩を売られても、買うなよー」
「わかってますよ」
俺たちを先に下ろすことに、宇賀神ハンターはかなり躊躇していたが人ごみが車道まで出ていたので諦めた。
下りたそこは、まるでハロウィンの渋谷のようだった。
雨はやんでいて、多くの人は畳んだ傘を持っている。
DCAの警備の服を着た人たちが、警察と一緒になって人ごみを整理させようとしている。
長い槍に時代錯誤なバンダナを巻いた男が、ダンジョン受付の前で偉そうにふんぞり返っていた。
「あれかな……?」
「確かに、頭の悪そうな顔しているな」
呼び出されたのに変装をしていても仕方ないので、俺たちは車の中に変装道具を置いてきた。
なので、道のあちこちから「きたぞ!」 「剣聖だ!」と声があがる。
「俺様の名前は谷之光太郎や! えらい重役出勤ですなぁ、Sランクの剣聖はん!」
「はあ……なんか用ですか」
「なんや、全然覇気がありまへんなぁ。これ見よがしにお供なんぞ連れてきはって」
一人称、俺様て。
どうしたら、一方的に呼びつけられた状況で元気に登場できるのだろうか。
こいつ、本当に図々しいなぁ。先輩らしいけど。
『我が王、こいつ殴りましょう』
だから、宇賀神ハンターが喧嘩するなって言ってただろ。率先して破ろうとするなよ。
だが、ザガンだけではなく楓も朝日もかなりイラっとしたようだ。
「なにあいつ、ヤシロが本気で殴ったら死ぬからボクが殴る!」
「いや、オレも殴る。殴って京都まで飛ばす」
楓まで、なんかむちゃくちゃ言い出したな。
もしかして、谷之って煽りの天才なのか?
『我が王がそれを言いますか……』
「お供ってなんだよ! ボクたちは最初から今日集まる予定だったんです! 変な呼び出しと関係なく」
「そうだ、予定外なのはむしろアンタの存在なんだよ。動画に書き込みで荒らしておいて、よくそんな態度とれるな」
そうだそうだと、野次馬もブーイングを鳴らす。
なんか、ライブ会場のような勢いになってきたな。
「俺様は夜白はんの好敵手、つまりライバルっちゅうもんや。どっちがぎょうさん魔物を倒せるか、この勝負、受けてもらってよろしいやろか」
ライバル……?
そもそもは、俺は谷之の存在を知らなかったのだが。
「はい、やめやめ。この勝負、宇賀神大将が間にたつぞ」
人だかりから見慣れてきた巨体が出てきて、人ごみはさらに盛り上がる。
大人気プロハンターが突然出たら、まあ喜ぶよな。
「アビスオーダーギルドのギルマスをうまいこと丸めこんだやろ、凄腕詐欺師の夜白はん」
はああ?
まあ、普通の一学生がプロハンターと居るのはおかしいし、護衛だという秘密も明かせないけどさ。
「朱雀校では夜白はんを贔屓してはるっちゅう噂、他の連中から流れてきてるんやわぁ」
ああー、護衛を隠していても、俺の移動についてきてるのは、他の学年も見ているだろうしな。
ハンター科の他の連中かもしれないし。
過去の感じだと、マヒルをいじめた橘や火乃森とか。憶測でしかないが。
「さあ、C級ダンジョンでどっちが多く魔物を狩れるか、勝負や!」




