第56話 他校生から呼び出される夜白
朝日も変装スタイルだった。
伊達めがね、みんな持っているものなのか?
俺の隣に座った朝日に、楓がグルチャではなく個人チャットで大量に送り始めた。
テーブルに置きながら打ち込まれたら、逆サイドに座ってても中身が見える。
これは、目をそらすのがマナーか?
「どっち向いてんだ、夜白ォ。この事態に!」
楓に何故か凄まれた。
見たほうがよかったのか……。
「え、じゃあ別に貰っちゃえばよくない?」
「そんなあっさり……」
「だよなあ?」
「夜白は黙ってろ」
楓を怒らせるようなことはしていないけど、今後も気を付けよう。
目つきが怖い。
楓からのチャットに、朝日は返信せず直答スタイルでしゃべっている。
まあ、主語に魔王のドロップ品アイテムとか言っていなかったら、特にバレないもんな。
「だって、登録されちゃったんなら、仕方ないし。ボクも使ってるしね」
店員さんを呼んで、ホットの黒糖オレを頼んだ朝日は真顔になった。
「ボクだって、ほいほい人から簡単に貰わないよ? なんか返さないといけないな、とかなんでくれたんだろう? みたいな疑問がでちゃうし。でも、ヤシロなんだもん……ね、なんでくれたの? ヤシロ」
「え……みんなで最強計画立ててたから?」
「は?」
怒り顔と困り顔のミックスになった楓と、腹を抱えて笑う朝日に、俺が理想としていた計画を話す。
ますます、形容しがたい顔になる楓は頭を抱えてしまった。そんな変な話だったか?
「ね? ヤシロはヤシロ的に意味わからない下心があって。でもそれって『感謝されたい』とか『いいことしてやった』みたいな押し付けな理由とちょっと違うんだよ。一方的なんだけど、これってボクらにはとても身になることじゃん? 一緒に強くなろうよって、あったかいメッセージだと思う。孤立するヤシロは見たくないし、いっそ皆でこの計画に乗ればいいんだよ」
「でも、和成やマヒルさんは……? 残る敵がそう都合よくドロップさせるとは分からないだろ」
そういわれればそうだな。
でも、俺の轟滅黒剣も魔王シリーズじゃないし。
すぐには無理でも、S級ダンジョンに自由に潜れるようになったら、探しにいくし。
また、古代魔法を放ってみてもいい。
『また魔王が増えたらどうするつもりですか……』
その時はまた倒せばいいさ。
みんなも、いいレベリングになるだろう。
「大丈夫だ、俺がなんとかするから」
「ほら、ヤシロにかかればこの通り。しかも実力が確かすぎるんだぁ~」
楓が大きなため息をつく。
「諦めた……この武器、大事に使わせてもらう……ありがとう」
いや、なんかいろいろもやもやさせて悪かったな。
皆で最強計画は、もっと早く打ち明けるべきだったかもしれん。
『……反省とは』
なんだザガン、独り言か。
「ヤシロ、スマホ鳴ってるよ」
「オレにも和成からやたらチャットの未読が……」
朝日がホットの黒糖オレに苦戦している間に、俺はスマホを開いた。
妹のきらりからの着信が、気が付かない間に三件入っている。
「もしもし?」
「あ、お兄ちゃん? 出先にごめんね。あのね、お兄ちゃんの動画にしつこくコメントを書いてる人がいて。でね、その人京都の玄武高の二年生で、S級ジョブの槍聖の谷之 光太郎 っていうハンター科の人なの。都内のC級ダンジョンで待ってるって書き込んでて……」
ほう、玄武高の二年生……先輩らしいが、動画にそんなコメントされてもな。
「逃げるなよ、って。こなかったら逃げたとみなすって大量に書いてて」
よく垢バンされないな。
あ、ハンター科の人間は犯罪レベルじゃないとDCAが動かないんだっけ。
こんな荒らしみたいなことしたら、バンされろよ……。
「時間言ってたか?」
「もう過ぎてるの。それで勝利宣言してて、お兄ちゃんのファンがネットで怒ってる」
えーー。めんどくさいなぁ。
べつにそれで勝ちなら、勝手に勝っててくれ。
「ネットでトレンド入ってるし、一応知らせたほうがいいと思って。今日C級ダンジョン行くって言ってたから、てっきりこの人と会うのかなと思ってたら、なんか違ったみたいだから……余計なことだったらごめんね?」
「ちなみにきらりはどう思った?」
うーん、と一拍置いてからきらりは小声を出した。
「お兄ちゃんのファンのメイン層は、こんなの会わなくても余裕でお兄ちゃんの勝ちだし、こんな絡まれ方ムシするほうが当たり前って言ってるけど……ちょっと悔しい。実際にうちのお兄ちゃんに会えば勝つの当たり前なのにって」
「そうか……なら、遅刻してるけど行くってコメント書いておくよ。お前の兄貴だからな」
ダンジョンで何が勝負だって感じだけど、障害物競走でもハンマー投げでも負けはしない。
別に言われっぱなしはどうでもいいが、妹の期待には答えないとな。
「行くの? ちょっと猫舌だけどすぐに飲み終わるから頑張るね」
「相手にするまでもないとは思うけどな。だがファンも怒ってるそうだし。なにより新作武器も試したいしな」
和成の要件も、同じ内容だったらしい。俺にメッセージを送っても反応がないので、一緒にいる楓に大量に送ったようだ。
朝日が急いで黒糖オレを飲み干すのを待って、俺は荒らしにレスを書いた。
あとで、自分の発言もまとめて削除しないとな……ああ、なんて面倒な。
俺が三人分の会計を買って出て、俺たちは車内に待つ宇賀神ハンターの元に急いだ。
京都校のS級ハンター、相手にしてやるぞ。
名前は……えーと……やの……こうた?
『谷之光太郎です、我が王。くれぐれも本人にやらないでください』




