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元大賢者、転生してレベル1からダンジョン配信  作者: 相木ふゆ彦
第三章 四天王編

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第55話  休日の夜白

 ゴールデンウイーク最後の日になってしまった。

 あれから魔王系は来てないな。

 

 ザガンが俺のリュックに詰め込んでくれた、キマイラからドロップされた魔石は翌日買い取られたし。

 ただ、せっかく七百万の大金を得たのに、誰も受け取ってくれなかったことがやや不満だ。

 あれだけ戦ったんだから、分け前は必要だと思うんだけどなぁ。

 

「そしたら、なんか奢ってよね」 と言ったのは朝日だけで、あとのメンバーは普段の魔肉でも高級だから……と辞退された。

 今日は、楓に渡しそびれていたグラキエスの双刀を渡す予定だ。

 

 攻撃力10000と出ていたから、そのままC級ダンジョンで武器のお試しも兼ねるつもりだ。

 本来ハンター科の一年には許可が下りないそうなんだけど、宇賀神ハンターもいるし俺ならもういいや……みたいな許可だった。

 

 朝日も少し遅れて合流できると言ったが、マヒルと和成はゴールデンウイーク明けのテストに備えるという。

 宇賀神ハンターはすっかりドライバーになってしまって、待ち合わせ場所まで送ってくれた。

 

 しとしとと、雨が降っている中、実技服をリュックに入れてある。

 

 轟滅黒剣(ごうめつこっけん)は、宇賀神ハンターがいる手前、ちゃんとバッグに収納してある。まあ、置いておいても誰にも盗んだりとかできないけど。

 いくらハンター科といえど、抜き身はね。

 宇賀神ハンターによって施されたマスクとグラサン姿の俺だが、我ながら不審者にしか見えない。

 

『芸能人みたいですな』

 

 おまえ、隠れてテレビ見るの禁止な。

 ザガンのやつ、どんどん人間の俗世に染まっていく。

 

 若者向きではない喫茶店にしたのは、楓のリクエストだ。この間の配信動画が伸びに伸びているらしい。二十パーセントほどは海外からのアクセスだという。

 カフェオレを頼んで、俺は奥のソファに座った。

 

 宇賀神ハンターはご苦労なことに、車内待機らしい。

 大き目のワゴン車だが、宇賀神ハンターの体のサイズでは狭いだろうな。

 

『我が王はよくカフェオレを飲みますな』

 

 ブラックでもいいんだけど、気分の問題だ。

 店によって、というか個人によって分かりやすく味が変わるし。

 

 ブラックだと物によっては豆を選ぶものもある。この店も何種類か選べるタイプだったので、面倒だからカフェオレにしたんだ。

 サングラスを外すと、狭い店内がよく見える。

 こっちにとっては都合のいいことに、店は空いていた。

 

『お、楓殿ですよ』

 

 店内に来客がきたと思ったら、伊達眼鏡にマスク姿の俺と似た不審者と目が合う。

 手招きする前に向こうも気づいて、すぐに俺の前の席に腰かけた。

 

「身バレしなかったか?」

 

「俺は送ってもらったし」

 

 俺のカフェオレが届いて、楓はそのついでにキリマンジャロのブラックコーヒーを頼む。

 なんだか、外に出るだけで毎度こうなるのか?

 面倒くさいなぁ。

 

『でしたら、我が王も宇賀神ハンターを見習いますか?』

 

 いや、それは勘弁して。やっぱり面倒でもいいです。

 

「朝日さんも、思ったより早めにつきそうって」

 

「そういやグルチャ見てなかった……」

 

「マジかよ、待ち合わせする人間が?」

 

 車の都合、早めにつくのは予定通りだったしな。五時間とか言われない限りは、ザガンと何かしら話してたりして俺は結構暇をつぶせるからな。

 

「そうそう、これ。楓が使ってくれ」

 

 リュックから取り出すようなへまはしない。特殊なケース袋は、グラキエスの双刀専用だ。

 そのまま袋ごと渡すと、怪訝な顔の楓を見ながらカフェオレを飲む。

 掴んだ楓は武器とすぐにわかったのか、外に出しはしなかった。が、いぶかしんだ顔は直らない。

 

「それ、この間のグラキエスのドロップ品だから」

 

「はあ!?」

 

「双剣だし、俺には魔剣轟滅黒剣(ごうめつこっけん)があるし」

 

「はあ!?」

 

 楓の大声で、店内から視線がくる。

 声のボリューム下げてくれないかな。

 

『普通、突然魔王のドロップ品をいきなり渡されたらそうなります』

 

 そうか?

 便利ならなんでも構わないぞ。

 

『我が王の感覚は、一般とは違いますからな』

 

 なんか、凄い言われようだな。

 

「おまっこれ、ほんっ……」

 

 言葉に詰まる楓にコーヒーが届く。

 少し落ち着いてくれ。

 

「……返す。予備で使えばいいだろ」

 

「いや、双刀使えないし」

 

「売るとか?」

 

 俺は試しに、突っ返された特殊ケースの中に手を突っ込んだ。

 ……魔力が入らない。

 

 おかしいな。俺の魔力は999999を超えているのだが。

 鑑定をしてみると、グラキエスの双刀の持ち主情報が出た。そういえばアグニラの盾にもなんかあったな。

 

「登録者が楓で固定されたらしい」

 

「らしい!?」

 

「なんか鑑定で出た」

 

「なんかってなんだ!」

 

 クールで落ち着きのある普段の楓はどこにいったんだ……。

 轟滅黒剣(ごうめつこっけん)は俺以外には重いが、専用ではない。ただ、宇賀神ハンターを先頭としてそうとうな筋力でも持ち上がらないせいで、俺しか使えない武器になっているだけだ。

 

 朝日も、アグニラ装備を触るうちに専用の使用者登録にされてたから、ジョブの問題か触った時間か。

 魔王武器シリーズ、なかなか不思議な特典があるな。

 ちょっと実験してみたいが、壊しそうだからやめておこう。

 

「なに? 何の話?」

 

 いつの間にか到着した朝日が、青ざめたり真っ赤になったりする楓と俺を覗き込んでいた。

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― 新着の感想 ―
楓も大変だな。ヤシロとつきあうのは。ヤシロの普通は普通じゃないから
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