51話 魔王と戦う夜白④
飛び回る俺以外、マヒルも楓も和成も朝日の側に寄った。
朝日と距離が近かったのか楓だけで、あとはマヒルの結界頼りだったのだ。まあ、魔法使いは後方にいるもので、普段横一列な俺たちがおかしいのだが。
「ボルカニックブレス!」
朝日が大盾を動かしながら、アグニラの盾を横に振るうとキマイラも溶け、凍った地面も消える。
「なんなら、最初からずっとこれ使ってると凄い暑かったんだよね」
『冥氷王グラキエスとやらも形無しですね』
多分、四天王といいながらアグニラとは仲悪かったんだろうなぁ。
氷風が吹いてきて、俺はよけたがダンジョンの壁側にいるキマイラたちも凍り始めた。
……ばかなのかな?
『ちょっとそれがしもコメントは差し控えます……』
冥氷王グラキエスの弱点は頭か。
知恵を強くする実験でもしたっけな……?
それが失敗してこうなったのか?
《大賢者イグニスよ! どうやら溶岩魔法で我をちぎりながら溶かす実験をしていたころと変わらんな》
いい加減にしろ、くそ雑魚魔王!
俺は轟滅黒剣で、紅蓮一閃を放った。
轟音が響いて、この層の四方まで斬撃の余波が揺れる。
大量のキマイラが、数秒の間減った。
『火魔法で死んだのなら蘇っていませぬ。つまり死因はちぎれ死……? 我が王は相変わらずなめちゃめちゃですな』
よく覚えてないが、もっと細かくちぎってやればよかったよ!
グラなんとかにも魔力の限界がある。俺たちが召喚を上回っていれば、本体が出てくるはずだ。
〇やっば、鬼強い!
〇やっぱり夜白は剣聖だった!!
〇夜白Pなんて言っててごめんね。今度から剣聖って呼ぶ
〇このパーティー全部箱推し!
〇剣聖夜白、めっちゃメロいんだけど
〇鑑定もちのハンターがここの魔物、キマイラ認定!
〇魔物図鑑で最後のほうにいるやつ
〇それなのに負けてない!まじつおい
俺は剣を振り回しながら縦回転しつつ、配信メッセージを読む。
マヒルも容赦なく魔法を撃っているので、配信画面が盛り上がっているのに気づいていない。
楓も朝日も攻撃に専念していて、和成だけが配信画面でプロハンターと会話しているようだ。
まあ、どのみち強いハンターはこの魔王の結界で入ってこれない。
入ってこれるとしたら、まっさきに宇賀神ハンターが飛び込んでくるだろう。
『我が王、魔石もキマイラ肉も凄い量が溜まりましたぞ!』
ザガンも喜色満面な報告をしていて、魔王と戦っているテンションじゃない。
魔石繰り出し機だと思っているのかな。
《おのれ卑怯な……! ジャイアントキマイラの連続技を食らうがいい!》
なにか、卑怯なこと、したか? 俺
『いえ、特には……』
ジャイアントキマイラの斬撃を避けながら、俺はその大きな体の下に滑り込む。
その手足を轟滅黒剣のフルスイングで、吹き飛ばす。四肢を失ったジャイアントキマイラは、どうと倒れこんだ。
「みんな、こいつをフルボッコしてくれ」
これで、魔王グラシアスも大弱りだな。
『我が王、それを言うなら冥氷王グラキエスです』
そんなに違ってないだろ。
みんなは数を減らしたキマイラより、ジャイアントキマイラに攻撃を入れてくれた。
「今からこいつ倒しまーす」
ピースとかダサいかな、やめとこう。
俺は配信にアップに映り込み、そのあとドローンを背中ギリギリに設定する。
加速して、ジャイアントキマイラの腹に一撃を繰り出すと、ジャイアントキマイラは魔石になった。
〇配信初のご褒美きたんですけど!?
〇つーか早すぎて配信ドローンが剣聖追えてないw
〇なんでこんなゆとりあるの??草
〇キマイラ「い、いま、何が起こった!?」
〇あまりに迅速な倒し方
〇俺でなきゃ見逃しちゃうね
〇手際のよさがプロよりレベチww
「え、配信されてたの!」
俺のリアクションとドローンに、とうとう気が付いたらしい。
マヒルは慌てだして、朝日は俺のドローンにかっこよく映ろうとする。
いやいや、魔王戦だからな。言ってないけど。
『言ってないせいでは??』
化粧崩れを直す暇くらいあってもいいいんじゃないか?
『魔王戦ですぞ??』
声が大きいぞザガン。
まあまあ、女子二人は気になるみたいだし……。
楓と和成は頑張ってるし?
マヒルと朝日は化粧直しをして再び参戦したが、別に二人ともすっぴんでも可愛いのにな?
《こうなったら、さらなるキマイラを……!》
この魔王、なんでキマイラにこだわるんだろう? 一種類しか出せないのかな。
だが、ずっと俺が探っていた魔力センサーに魔王が引っ掛かった。
キマイラの集団で、魔力感知しにくかったんだ。
なんだっけ……。
『冥氷王グラキエス、です』
そうそう、魔王グラキエス。こいつがアグニラと大して変わらない強さのせいだな。
四天王というわりには、似たり寄ったりだ。
青白い顔が出た瞬間、俺は高速で轟滅黒剣を投げ込んだ。




