第50話 魔王と戦う夜白③
振り返ると、傷だらけで流血しているザガンが居た。
どうしたんだ、その怪我……。
『魔王に特殊結界で封じられておりまして、無理やり結界を突き破って我が王のもとに参じましたぞ』
やっぱり魔王の仕業か……。
俺は即座に回復魔法をザガンにかける。
傷がみるみる修復し、ザガンは流血を拭いた。
『さっそく御要望通りに、回収しましょうぞ』
なんか、必死で駆け付けてきてくれたのに、頼みが雑用で申し訳ないな……。
『キマイラ肉も魔石も、我が王とその友を強くさせるアイテム! 大事な任務です』
うん……頼もしい。ザガンはこうでなきゃ。
『マヒル殿の結界の上から、それがしも結界を張っておきました』
しごでき召喚魔。
やっぱり俺の相棒はザガンだな。
「あのぉ~」
気の抜けた声がして、キマイラを倒しながら声の主を見ると、行きにはぐれ矢をお見舞いしてきたアーチャーパーティーたちが居た。
大量のキマイラに怯えつつも、見覚えのあるリュックを和成に渡す。
「入り口に戻ったら、宇賀神ハンターが入れないからってこの荷物預けられて、持ってきました」
「ありがとうございます! あなた方は出入りできる……んですよね? この方たちをお願いします。ハイポーションも使いましたが出血も酷くて」
和成が宇賀神ハンターのリュックを受けとり、剣士とタンクの二人を、アーチャーパーティーに託した。
『宇賀神ハンターが入れないのも、それがしと同じ特殊結界……。ある程度の強さで出入りが不可能なんでしょうな』
そうだな。おそらく支援に増援を出したところで精鋭部隊は入れないだろう。
「はい、何故か私たちは出入りできて……じゃあ、連れ出しますね。なにか伝言はありますか?」
和成は、振り返って俺たちを見た。
キマイラだらけのこの空間も。
「はい! 僕らに任せてください。必ず夜白と協力してなんとかしてみせますと伝えてください」
おお、言ったな、和成。
俺がキマイラをたたき割る間に、和成はリュックから魔力ポーションやら簡易結界などを取り出す。
DCAのホームページで簡易結界の値段みたけど、一個二十万とかだったぞ……。
拳聖の宇賀神ハンターならではの装備だが、マヒルの結界にザガンの結界もあるからな。
「魔力上級ポーションもあるよ! マヒルちゃんのポケットの中に入れるね」
和成が楓と朝日に魔力ポーション、マヒルに宇賀神ハンターの差し入れた上級ポーションを配る。
その間も、結界に近寄るキマイラを杖で殴ったりと大忙しだ。
「テンペストカッター!」
楓の双刀がキマイラの首に刺さり、一本を引き抜きそびれる。
すぐさま俺の轟滅黒剣が追ったが、キマイラが相変わらず渦のようにいる。
でたらめに剣を振るったが、楓の剣の片方の音がしない。
魔石と肉を拾うザガンが、あとで見つけてくれればいいんだが。
「気にするな、夜白! 俺は片手剣でも大丈夫だ」
マヒルの範囲攻撃を避けながら戦う俺の目に、文字通り片手で戦う楓が映った。
〇推しが増える~!かっこいいわ
〇僕らに任せてください!言ってみたい
〇五月からとは思えないチーム夜白!
〇プライベートでもこのグループは仲良しだしね
〇我々はただ祈って投げ銭しかできない……!<¥20000>
〇魔物減らないけど、これって消耗戦……?
〇いつプロハンター助けにくんの?
配信を切ったものか……。でも多分宇賀神ハンターたちは見てると思うんだよな。
下手なところで配信を切ると、俺たちが死んだと思うかもしれない。
となると、余計な混乱は起こしたくないよな。
《くくく、苦しんでいるか、イグニス。この我の障壁と罠はなかなか苦痛だろう?》
やっぱり、なんか出てきたぞ。
『なにかもなにも魔王です』
《我の名は冥氷王グラキエス……キマイラだけではない、氷点下の寒さを味わうといい》
なに……!
アグニラが焔ならこいつは氷か!
このダンジョンを冷凍庫にする気なのか……?
『グラキエスとやらは、凍死と魔力切れを起こしたいようですね』
そうらしいな……。
ただ、俺は技を使っていないので、特に魔力減りはしていない。
収納の中には魔力ポーションもたくさんあるし、マヒルたちの気力が消えない限りはただのレベリングなんだよな。
むしろ、向こうの召喚する魔力を一度こそげ取ってみるか……?
「なんだ……? 冷気?」
楓の声に、入り口に近いところからダンジョンが凍っていくのが見える。
一人距離が離れている俺は断熱の魔法を使ったが、全員にかけるべき……。
「へっへーん、ぼくの出番だね!」
朝日が、汗を流しながら笑顔で腕を振る。
お、解決策があるのか。と、いうか既に対処済みか。




