第五話 初の配信をする夜白
「あー、ダンジョンネーム夜白だ。Sランクの剣聖ジョブで、これから配信よろしくお願いします」
〇初コメげっと!
〇朱雀高、久しぶりのS級じゃない?
〇幻のSSSランクw
〇あれはさすがに誤作動でしょ。
〇よるしろって書いてやしろくんか~、いかにも純情そうでかわいい。ぺろぺろ
〇※通報しておきました
〇同接まだ二万人かー。散ってるねぇ
〇もう一人Sランク引いた子いるからそっちじゃん?
おお、なんだかいっぱいコメントが流れてくるな。
和成なら、もっと気の利いたことを言えるんだろうけどな。俺ってもしかしなくてもコミュ障か?
うーん、Sランクを《引いた》とは、ちょっと間違いだな。
覚醒紋が出た瞬間に、ジョブはもう決まっている。覚醒紋が出るのは十歳前後。
だから、その時点でジョブは確定しているのであって、今日はそれを測定しただけだ。
「次に配信できるのはいつか分かりませんが、応援よろしくお願いします」
いかん、ほかになにを言えばいいんだ? わからん。
散らばる生徒を見ていると、魔法使い系は実演とかしてるな。
俺も魔法なら実演できるんだが……景気よく古代魔法でも……。って剣聖だからな、ダメか。
転生前に持ってた武器が手元にあればな……いくつか国宝級の剣もあったんだけど。
ステータスだけ引き継げたただけマシか。欲を言えばレベルも持ってこれれば……。
〇やしろくん、剣もってないの?
〇予備知識ない人多すぎ、アシスト科でパートナー見つけてからがスタートですよ
〇剣士系のジョブは初期は木剣でスライム狩りがハンター科の恒例じゃんねw
〇チャンネル登録したよ~!早く剣聖スキルみたい!
〇わかる!剣聖のスキル絶対やばそう
うーん、やはり何か見せたほうがいいのか。
ただ、全方向に生徒がいて何をするにしても危険すぎる。
身体強化をかけると、俺は体育館倉庫の上に飛び乗った。せめて射程圏外にしなくては。
手にはさっき拾った木の枝。
もう、自分のチャンネルの電波は把握しているのでウォッチを見なくてもコメントは聞こえてくるのだが、不自然に見えないように時々覗かないとな。
「これから素振りをします」
技を放たないなら、威力は弱い。
それでも、おそらくはなにもしないよりはいいだろう、きっと。
しかし、身体強化だけで木の枝を振り回して、動画的には果たして面白いのだろうか?
剣聖のジョブを持っていても、長く生きた大賢者としての意識が強すぎて全然スキルが感じ取れない……。
「はっ!」
風が旋風のように巻き上がり、体育館倉庫の屋根が砕け散っていく。
風の塊は、真正面の射線にいたあの青髪も巻き込んで、地面をえぐった。
……なんてしょぼい威力。まあ、ほかの人に迷惑をかけないだけマシか。
青髪にはあとで謝りにいかないとな。五十メートルは離れてるから大丈夫だと思ったんだけどなぁ。
〇やっば!枝拾って素振りとかワロスとか思ってた自分を殴りたい
〇えげつないパワー!そもそも倉庫にジャンプできるのやばすぎない?
〇剣聖しか勝たん!レベル1でこんだけ強いのチートじゃん
〇やしろたん、俺らのヒーロー確定な!
〇鳥肌たったわー。賢者の子の配信見てたけど、ただしゃべってるだけだったからつまらんからこっちきて良かった
〇アレね、サブ機で見てたけどただの美少女。彼女には欲しいけどな
〇おーいここはやしろくんのチャンネルですよー
〇風紀委員きた。めんど草
やはりしょぼくてもパフォーマンスしたほうがよかったみたいだな。
ただ身体強化で枝を振りおろしただけで、こんなに騒がれるとは。
ていうか、何か悪く言われてるのマヒルじゃないか!
そうだよな……魔力5で、今使えるのは召喚術……どう考えても魔力が足らないだろう。
雑魚を呼ぼうにも、最低15はないと何も呼び出せないもんな……。
「チャンネル登録ありがとうございました。また来てください」
チャンネルを切って、俺は探知魔法でマヒルの場所を探す。校門付近か。
――あ、そうだ。
青髪――生徒番号一の千早誠志郎に謝らないとな。
半壊した体育館倉庫には、生徒がたくさん集まって見上げていた。その中に千早もいる。
ストンと飛び降りると、千早誠志郎は何か怯えたように後退した。
……なんだ?なにかあったのか?
「ごめん、千早。まさかそっちまで届くと思わなかったんだ」
ガチガチにキメた青髪が、なぜかぐしゃぐしゃになっているな。もしかして俺のせいか?
「な、なるほど? さすがSランクジョブですね。これは大物です、私も敬服します」
「そうか。今後は気を付けるよ」
マヒルのもとに駆け付けようとした俺は、駆け付けた教員によって体育館倉庫について怒られた。
今回は修繕費を要求しないが、続けるなら自費払いだという。
……こっそり再生魔法かけたらダメか?




