第41話 S級ハンターに困る夜白
「はっは、いやー強いなー夜白くん」
餃子とごはん、中華サラダの乗った食卓で、宇賀神大将ハンターが豪快に米をお代わりしている。
それを見つめながら、まだ餃子に箸もつけない両親と妹のきらり。
嫌な予感が当たって、宇賀神ハンターin我が家である。
醤油とラー油で餃子食べる派の宇賀神ハンターを置いといて、酢と胡椒派の俺はもくもくと食べる。
「父さんも母さんもきらりも食べないと、無くなるよ?」
促して、やっと箸をつけるがその目は泳いでる。
まあ、無理もない。
ダンジョン災害対策庁から知らせがきたとはいえ、まだ家族全体が朦朧としている感じだ。
いうなればテレビで見かける有名人が突然、夕飯食べに混ざっているわけだからな。
この動画社会、なんなら世代的には配信者のほうが詳しいくらいだ。
『我が王、F級ダンジョンの魔石も売りましょう』
ザガンはグルメになったしな。
おそらく、轟滅黒剣に魔石一つ1000アップしたのはS級レベルの魔石だったからだ。F級ダンジョンの魔石を使っても10も上がらないだろう。
やはり換金するしかないな。
ザガンはもう魔石を見ると拾うオート機能がついてる勢いだし、俺たちも時間ギリギリまで拾った。
マヒルと誠志郎にも分けたが、そこそこ集まったな。
「夜白くんの強さの秘訣はなにかな?」
「いえ、特になにもしてません」
今世はホントに何もしていない。頑張っていたのは前世の俺だし。
ごはんはお代わりしたいが、我慢だ。このあとこっそりエンペラーオーク肉を食べるからな。
「無自覚なのか。興味深いねえ」
「はあ……」
「ちょっと、お兄ちゃん! あの宇賀神ハンター相手に……!」
「はっは、いいってことよ!」
ご馳走様をして、俺は食卓からエスケープ。
自室にこもりたくても、俺のベッドの横には宇賀神ハンター用の布団がしいてる始末。
どこかに行きたい……! 今のうちに!
今こそ、S級ダンジョンに行くべきか?
[こっそりS級ダンジョンにいかないか?]
俺がチャットを送った相手はマヒルと朝日だ。
[え? 本気?]
[……夜白君と一緒なら行ってみたいけど……万が一攻撃入れたらレベルが不自然にレベルアップしちゃう]
[あ、確かに]
うーん、問題はそこか……。
隠蔽魔法を俺が使ってもいいけど、ステータス開けるたびに横にいられるとは限らないからなぁ。
『二人とも、ナチュラルに我が王に慣れてきておりますな……普通はS級に驚くところでは?』
ザガンが何か言ってる。お前は早く魔石食べたいだけだろ。
うーん、なら俺とザガンで行くかー。
[っていうか、宇賀神ハンターがいるんでしょ? まずくないの?]
[そうだよ、夜白くん。少し大人しくしないと]
撒くから大丈夫だって。
適当に――ランニングとか?
[分かった、適当にしのいでおく]
和成たちがいるグループチャットには、宇賀神ハンターのことを説明しておいたし、大丈夫だろう。
俺は足音を殺して玄関まで行くと、「ランニングに行ってきます」とメモを置いて、そっと玄関をあける。
一キロだけ全力で走ると、草陰に入った途端に瞬間移動する。
行先は、当然S級ダンジョンだ。
存在虚偽魔法で忍び込むと、人気のないところまで疾走する。二十層までくると、人は誰もいなかった。
ザガンは長い間ステイされ続けた魔石をようやく食べることに成功する。
『とうとうアークデーモンに昇格しましたぞ! 悪魔でもこのランクはなかなかおりませんぞ』
確かに、魔力が多めにザガンに流れているような気がする。
一応、過去作のベネチアン仮面眼鏡を取り付けた俺は、今日はすべて剣で戦うつもりでいる。
アグニラ以降も、剣聖として戦わないとだからな。
『さすが我が王! ちゃんと理由があったのですね』
まあ、大半はストレス発散だが一応は理由がないと。
『……』
花鈴に、どんどん轟滅黒剣のレベルも上げてもらわないとだし。理由はたくさんある。
二十層のエンペラーフレイムリザードに向けて、紫電烈閃を放つと悲鳴もなく巨体が倒れていく。
ざっとフロアの半分か。
……まてよ? 相手のこの攻撃力なら……。
最弱の魔法の中から、ファイヤーボールを選んで適度にエンペラーフレイムリザードの怒りを煽る。
チャットが鳴ったので、俺は無抵抗でスマホを開く。
案の定、エンペラーフレイムリザードの牙もしっぽも、俺に当たったがノーダメージだった。
取り囲まれたまま、俺はチャットの返事を返す。
前世は紙防御力だったからなぁ。この辺でこういう技が出来るのは単純に嬉しい。
『技ではありませんぞ! またいらぬ煽りプレイを取得して……!』
まあまあ、倒すのはいつでもできるんだし。
俺はチャットの返信を終わらせて、いっこうにダメージがないエンペラーフレイムリザードを轟滅黒剣で撫で切りにする。
ザガン、魔石とドロップ肉は任せたぞ!




