第40話 それでもなんとかヘルプする夜白
誠志郎に、気休め的にポーションを飲ませる。
本来は怪我用だが、少しは元気も回復するらしいからな。
「誠志郎くん、大丈夫?」
俺の背から降りたマヒルが気遣う。が、答える元気もなさそうだ。
マジで大丈夫か? 影魔にするには自分でとどめを入れて、その影を吸収しなきゃならんだろうが。
「仕方ない、休憩するか」
何か言いたそうな宇賀神ハンターが遠くで魔物を倒しているが、地面で足をカクカクさせている小鹿な誠志郎は見えているはずだ。
マヒルは魔力ポーションを飲み、魔力を回復している。
この階層のシルバーフォックスたちは、俺たちの周囲を遠巻きに見ているが襲い掛かってこない。
コメント欄は戦闘を心待ちにしているが、ここで暴れてもなぁ。
轟滅黒剣 を出すまでもない。デコピンで倒せるな。
『いっそ、誠志郎も背負ってはどうです?』
え、それは何か嫌だ。
緊急ならまだしも、こいつを背中に乗せるのはなんだかなぁ。
『しかし、誠志郎はもう走れそうにありませんよ?』
ザガン、この下の階を見てきてくれ。
『はっ』
シルバーフォックスも、まあ犬よりは大きいが特に強くもないから陰魔にしても……。
「どうする? 誠志郎くん限界みたい」
マヒルにも言われて、俺は腕を組む。
「シルバーフォックスじゃ、影魔にしても仕方ないだろう? だからなんとか下の階に」
「夜白くん……シルバーフォックスも一年生なら余裕で合格だよ?」
え、マジか。
『我が王、下の階はジャイアントウルフでした』
おお、なんかシルバーフォックスよりは強そう。当たり前か、下の階なんだから。
「誠志郎、影魔は何体必要なんだ?」
「ええ……その、数というより私の魔力量によるのでこれだけ強い魔物だと、一体か二体か……」
息も絶え絶えだったが、少し回復してきたな。
強い魔物……か。
さすがに二体同じなのも可哀そうだから、なんとか下にもいきたいな。
「マヒル、杖でちょっと小突いてやってくれ」
「え?」
「マヒルの攻撃力でも、全力だと倒してしまうから。杖でガツンと」
「う……うん」
シルバーフォックスを一体、そっと捕まえてくるとマヒルの足元に置く。
杖を振り上げたマヒルは、勢いよく振り下ろした。
〇うわーマヒルたそ、一撃ww
〇魔法使い系のジョブが、杖で倒してるww
〇ネクロマンサーの出番梨
〇他の攻撃職より強い、間違いない!
〇マヒルてゃより強いの夜白Pだけ?
〇いい加減剣聖様って呼ぼうぜ! 今回も使ってないけど
〇いや、三十層の魔物を素手で捕獲してる時点で察せ
やはり、マヒルでも強く叩いたらアウトか。
こぶを作るくらいの感覚でやってもらわないといかんな。
「ごめん、夜白くん。倒しちゃった……」
「仕方ない、いくらでも捕まえるから、なるべく軽くコツンってやってくれ」
二回ほど失敗して、マヒルはなんとか瀕死のシルバーフォックスを作り出した。
それを誠志郎が倒して念じると、シルバーフォックスは影となって誠志郎の足元に潜り込む。
「お手数をおかけしました……それでは上に」
「いや、あと一層下がるぞ」
「は?」
マヒルが結界を張り、俺が再びジョギング感覚で走り出す。
再び汗まみれになって誠志郎が後を追い、宇賀神ハンターも移動する。
しかし、こうちまちましてるとストレスが溜まるな。
『それがしが誠志郎をかついでいけたらいいのですが』
それには、宇賀神ハンターをまかなきゃいけないし、誠志郎を気絶させないとだな……。
マヒルや朝日にもまだザガンのことは言ってないし。
ひーひーしている誠志郎を連れて、三十一層に入る。
魔物が遠ざかる景色、再びだ。
「また、さっきのを繰り替えずぞ」
宇賀神ハンターが下りてこれなくても困るので、ある程度奥までいったところで俺たちは作業を開始した。
だがマヒルも慣れるのが早い。一撃でジャイアントウルフを半殺しにすると誠志郎に譲った。
誠志郎は、さっきより時間をかけて影を慣らし、膝をつく。
「はぁはぁ……これ以上は無理です。二体で限界です」
「わかった、ならあとはこっちでやってもいいな?」
マヒルは今日、地味なところしか見せてないからな。マヒルの配信ファンにもいいとこは見せなきゃな。
「マヒル、攻撃していいぞ」
「わかった! アイシクルランス!」
六体ほどのジャイアントウルフが氷の槍に串刺しにされて、魔石になった。
「じゃ、こっちも――不動剣!」
轟滅黒剣を振りぬくと、ダンジョンの壁に血が飛び散る。
景色は――無だ。
「夜白くん、一撃でフロア殲滅しちゃダメでしょ」
俺の頬をつついて、マヒルが怒るわけだな。
これだから、F級ダンジョンは――。




