第35話 大人と会議と夜白
俺はダンジョン災害対策庁に連れられていた。
ポーションと魔力ポーションを置いてくれているが、必要なくても飲んだほうがいいのか……?
大人たちが、喧々諤々とやりあっているのを他人事の顔をして眺めている。
……お腹が空いたな。
朝から二戦。なんだか慌ただしい展開だが、俺ははらぺこなのだった。
そして、そんな俺の前で大空ハンターと桜井ハンター、ダンジョン災害対策庁の長官が言葉で殴りあっている。
「今は夜白くんの謎を追及している場合ではないのです! あの敵がいつまた襲い掛かってくるのかのほうが重大です」
「映像はDCAで、適切なものに処理を頼んでいる。全国でも有数のギルドのギルドマスターたるものが、今後子供に頼っていくなどと本気で言っているのかね」
「私たちは完全な足手まといでした! 今は互角に戦える夜白くんが必要なんです!」
高坂ハンターは一通り報告したあと、後の意見は他のメンバーと同じだからと俺の荷物の換金に出かけていった。
如月ハンターは所属しているアビスオーダーギルドに急いで戻っている。
ザガンは、収納魔法の中にいれてある魔石をむさぼっているし、いいなぁ……。
「いいか、言い争っていた桜井ハンターと大空ハンターが同じ結論に辿り着いたのはありがたいが、今後の急務にいちいち子供を頼ると? 何のためのプロハンターだ」
「代表は、現場にいらっしゃっていないからわかっていないのです! あの現場の異常さが……!」
「そうです!! 確かに私はAランクジョブですがレベルをあげてきました。あのバケモノは格が違いすぎます。それなのに、夜白くんは怪我ひとつ負わずにいるこの異様な強さが……!」
ずっとこんな調子だ。
間接的に俺がばけもの認定されている気もするが、前世でもよくあったなぁ。
ひたすら勉強して実地で訓練していただけなんだけどな。
今世においては、研究しようにもデータがないわけで。
過去の剣聖は、二十四年以上前だとかで配信に記録はない。ダンジョン発生直後世代で、一番壮絶な時代に亡くなったそうだ。
『我が王、ふぉおいえふぁふぉかにおぼえふぇいふぁいのですふぁ?』
魔石を食いながら話しかけるんじゃない。ただでさえ、俺もお腹が空いてるんだ。
しばらくして、飲み込みながら、げふーという満足げな息を漏らしたザガンが言い直した。
『我が王、獄炎王アグニラ以外に心当たりはないのですか?』
アグニラを覚えてなかった俺に、凄い質問だな。
大体、何人の魔王を倒したと思ってるんだ。
一番手間取った影竜王オロバロスだけは何とか記憶にあるが、あとはかけらも覚えてやしないぞ。
「失礼します、データのお届けと、おひるごはんを」
ノックがして、地味な服装の男性が四人分の弁当を持って現れた。
おお、ごはんがきた!
得も言われぬ香りに、俺の腹がぎゅるると鳴る。その音に、大人たちは苦笑して白熱した言い合いを止めた。
弁当を配り終わると、地味な服装の人はDCA受付の田戸と名乗る。
「まずは僕の使われてこなかった『異世界言語』というジョブが初めて役に立ったデータから」
ダンジョン災害対策庁の長官、大空ハンター、桜井ハンターたちが俺には先に食べるように促してくれたので、俺は遠慮なく弁当を開けた。
「まずは、あの敵は魔王を自称しており異世界からイグニスなる者を追ってきたと……」
野菜サラダに、きんぴらにとんかつだ。
迷わずとんかつから食べる。……なんだこれは!
『毒ですか!? 我が王、ご無事で!?』
毒なわけあるか……これはとんでもなく旨いぞ。肉の油が甘い、口の中でとろける。
しかも鑑定したらさっきのエンペラーオークじゃないか。
『ああ、良かったですな。言われれば先ほどの魔石も例えるならそんな味でしたな』
さすがエンペラーオーク! 味も皇帝級。
「そして、獄炎王アグニラと名乗った魔王は、自身は四天王の一人だと言い……」
こんなに旨いとんかつで、ごはんが進まないわけがない。
無我夢中で食べ終わったところで、田戸さんの和訳の話も終わったようだ。
「つまり、魔王は夜白くんをイグニスという存在と取り違えている……」
うん、取り違えてはないんだけどな。
「しかも、魔王は一人ではなく四人……」
そうらしいな。お腹いっぱいになって考えると、つくづく迷惑だ。
「これは、もしかして夜白くん目掛けてくるのでは……?」
そういえば、俺の魔力をうんぬん言われたな。
「はっは、話は聞かせてもらったぞ!」
突然、快活な声がして大柄な男が入ってきた。
誰だ……?
そろそろ俺は学校に戻りたいんだけど、ダメっぽいな。




