第36話 護衛がつく夜白
俺は非常に、えげつない狭さと戦っていた。
何かというと、アビスオーダーギルドのギルドマスターである宇賀神大将が俺の真横にいるのである。
こうなった経緯はこうだ。
魔王、獄炎王アグニラと残る三魔王がイグニス(俺)を狙う。
とはいえ、別に可能性もあるし俺だけ戦わせることはナンセンスである。
出現ルートも分からないために、日本最強のSランクジョブの拳聖、宇賀神ハンターを護衛につける。
と、いうことで俺の行く場所には宇賀神ハンターがついてくることになった。
そうこうして今はダンジョン災害対策庁から、朱雀高にタクシーで移動中だ。
宇賀神ハンターは百九十センチを超える上背と、かなりのマッチョなのでタクシーの後部座席が狭い。
本当に狭い、あとこの人からくる強者の圧が凄い。
最大筋力5000の人、こんなにオーラあるんだ。俺はどうなるんだ。
『我が王、このまま魔石を食べていると、また進化しそうです』
おお、出来れば俺が風呂の時とかにしてくれ。
ザガンが進化するときに漏れ出る魔力で、何か勘ぐられそうだからな。
「夜白くん、オレは今日から君の護衛だ! とはいえ、君はたいそう強いようだからな。オレのことは気にせずに学校の授業などを受けていてよろしい」
ええー、ほっといてくれていいのに。
全然問題あるんだけど。
せっかくお金が手に入ったんだ。ここは俺が年上としてみんなに奢ったりできると思ってたのに。
『大金が入りましたな』
そう、魔石だけで三百四十万。魔肉が二百万。しめて五百四十万という大金が。
両親の旅行代に、きらりにプレゼント。そうやって使っても十分残る大金だ。
はっきり言って魔王アグニラの脅威より、臨時収入に浮かれている。
古代魔法さえ使わなければ、居場所は割れなかったわけだが。それはそれとして内心浮かれているんだけど、このおっさん――おっさんは失礼だな、二十六才に対して――がいると、なんだかはしゃげそうにない。
『ですが、ステータスはさんざんまた確認されたではありませんか。上がり方がおかしいと言われて』
そう、なんだよなあ。
ガーゴイルやケルベロスの肉をたくさん食べた結果、防御と魔力が飛びぬけてしまった。
レベルはいつの間にか一つ上がってたけど。
――――――――――――――――
不破 夜白
レベル 3
ジョブ 剣聖 S(+SS大賢者)
体力 50(+999999)
魔力 70(+999999)
攻撃力 60(+999999)
防御力 70(+5000)+5000
俊敏性 50(+999999)
(火魔法、水魔法、木魔法、風魔法、雷魔法、土魔法、光魔法、闇魔法、時空魔法、再生魔法。召喚魔法、古代魔法、付与魔法、創造魔法、加工魔法、結界魔法、身体強化、収納魔法、物理攻撃耐性、魔法攻撃耐性)不動剣、紅蓮一閃、氷刃嵐舞、紫電烈閃。
――――――――――――――――――
そもそも、レベル3のステータスでもないらしいが、魔肉ブーストしてるからなー。
待てよ、エンペラーオークを食べ続けたらどれが上がるんだろう……。
収納魔法の在庫が、がぜん楽しみになってきた。
「授業は楽しいか?」
「ええまあ……」
時々人を困らせている自覚はあるが。
『時々……?』
うるさいぞ、ザガン。
実際、時々だし。
「午後の実技は途中参加だな。俺は校長のところに顔を出してから行くが、気にせず授業を頑張りなさい」
「はい」
この人、夜はどーすんだろ。まさかうちには泊まらないよな……? そうであれ!
タクシーが止まって、宇賀神ハンターがお金を払う。
学校につくと、なんだか久しぶりの気分だ。
「今日の授業は――げっ」
アシスト科と合同だった。
みんなは武器の入れ替えやメンテナンスなんだろうが、俺はまた花鈴に嘆かれ――。
「や・し・ろ」
髪を結いあげて、にっこにっこの花鈴が俺を出迎えていた。
「遅刻に私服でどーしたの、あんた」
「ちょっとDCAに呼ばれてた」
実際は容赦なく引っ立てられたのだが、ダサいのでそこは省略だ。
「そう、まだボス戦のことつっつかれてんのね。いいからこっちこっち」
マヒルや朝日に挨拶しようとした俺は、何故か白い目で見送られた。
『花鈴殿に、親しげに腕を掴まれているからですぞ』
そうして俺は、宇賀神ハンターがはりついて出来なかった収納魔法の中の魔石たちを、リュックに移し替えたのだった。




