第34話 魔王と対決する夜白①
「助っ人は!?」
「ここから一番近い星紋ギルドに、急遽打診したそうです!」
「ハイランカーが居ればいいが……それまで持つかどうか……」
一層から十層までの魔法陣にとってかえす。
俺は前世では幾人もの魔王を倒してきている。でも今回は魔法は使えない。
この轟滅黒剣一つでどこまでいけるか……。
『我が王、体から蛇のようなものを出している魔王でした!』
ヒュドラ系の魔王か……。
俺の転生前の時代は、ある程度の条件を満たせば魔王には成れた。
なので、力の限りにぶっ壊したり、古代魔法の研究実験にしたりしてたんだが。
『なんでそんなとんでもない遊び方をしたのですか!?』
まあ、面白半分、研究半分といったところか。。
なので、出現しだいに試していたんだが、今の剣で倒せるの
魔王に成れる魔族が多いとはいえ、サンプルとしては少ないかどうかは賭けだ。
「夜白くん、倒そうとは思わなくていいからな。メインの攻撃隊がくるまでの、足止め役だ――こんなことに巻き込んで申し訳ない」
「大空ハンター……」
そうか、倒さなくてもいいのか。
でも、この肌感覚の魔力9000以上ある、よな。
プロハンターでも、最高筋力5000じゃなかったか?
魔力だともっと多い人がいるのかな。
《縺ョ繝%繝「蟶ウ$縺ァ”譁,怜喧※縺代!!》
十層は、焔を吐く大蛇が七匹うねり、その胴体は大きな人影と繋がっていた。
なんだかなじみがある魔族語だ。
『懐かしい味の魔力残渣を追ってきたら、やはりイグニス貴様か、と言っております』
なに? イグニスは過去の俺の名前だ。
勢いに押された振りをして、桜井さんの盾の後ろに下がった俺は翻訳魔法を作った。
《おぬしの魔力を遠くの世界から感じ取ったものの、ここまでくるのは骨が折れたぞ》
誰だ、そもそも。生前の俺を知ってて、異世界からわざわざ追ってくるとは。
『我が王、何か怒りまくっていますが返事をしなくてよいのですか』
馬鹿を言え、俺の魔法がバレる。完全無視でいくぞ。
『怒りをあおるだけのような……』
如月ハンターが結界を張ってくれたが、これは一撃で割れるな
一匹の蛇が、鎌首をもたげてこっちに高速で這いよった。
「フレイムバースト!」
高坂ハンターが火魔法を放つも、よけられる。俺が不動剣で即座に首を切り落としたが、人型のほうにすぐに再生した。
「今のは攻撃か……? 目で追いきれなかったぞ」
「速すぎる……なんて戦いだ!」
二匹目の蛇をわざと深追いしてから、頭を切り刻むと本体は笑い声をあげる。
《その佇まい、見るだけでイグニスの面影がある。転生前の記憶を哀れにもなくしたか。わしは貴様のゲンコツで魔王は殺せるかという実験で一度殺されたが、魔力でとどめを刺されなかったおかげで蘇ったわ! わしとあと三人、魔王四天王が貴様の魔力を奪ってやるぞ》
おお、全部説明してくれた。
そうか、俺は記憶無くしたことにしよーっと。
『我が王、大賢者時代も筋力無双していたのですか……? ドン引きなのですが』
実験だっつうの!
若かりし頃は色々やってみたくなるだろ?
《今度こそ、復讐してやるぞ! 大賢者イグニス・ランツァ!》
大蛇が一斉に、焔を連弾で吐く。
俺は轟滅黒剣の剣圧で相殺したが、一つ取りこぼした。
「夜白くん……!! 危ない」
火の玉を追いかけ、一瞬で追いつくと大剣で薙ぎ払う。だが、焔の衝撃が如月ハンターの結界を破壊した。
「結界を張りなおしてください!」
何もないよりはいいだろう。あとはタンクの二人がシールド系の技で止めてくれるといいが。
そのまま再生する頭をひたすら叩き切るが、至近距離になると大魔法を撃ってくる。
俺は防御が弱い……轟滅黒剣で防御力は5000追加されて10000になったものの、まだ紙装甲なんだ。人もいて、結界も張れない以上、なかなか近くに近寄れない。
《どうした、そんなものか、イグニスよ! 獄炎王アグニラの贄となれ!!》
火炎ごと切り裂くと、獄炎王アグニラとやらに接近した。
剣先が届いた――と思った瞬間、魔王は高速移動で大魔法を放つ。
とりあえず、一安心だ。古代魔法は使えないようだ。
『我が王の安心ポイントが理解できませんが!?』
野球のように剣で魔法を撃ち返す。それでもこの魔王にはダメージはない。
ザガンは手出ししていいか迷っているが、人目があるからな。
「氷刃嵐舞!」
魔力を多めに流して一太刀に込める。
蛇たちは全部地面に縫い留めた。
――今!!
《見事だ、記憶を失ってもなお強者のイグニスよ……! さらば》
轟滅黒剣は影をかすめたが、魔王は忽然と消えた。
『逃げられましたな……!』
ああ、まったくだ。次元の向こうに逃げられたら、俺だって追えない。
くそ、久しぶりに厄介な相手が出てきたな……。しかも四天王だと?
言葉がわからないふりをしているのに、どーやって伝えればいいんだ。
「無事か、夜白くん!」
大空ハンターがいつのまにか歩み寄っていた。
「すみません、逃しました」
「何を言っているんだ、命があってなによりだったよ」
「そうよ、よく戦ってたわね。ありがとう」
「命の恩人だ、君は」
次々とプロハンターたちから感謝の言葉を受けながら、俺は今更ながら気がついた。
知らないまに、記録用ドローンが動いている。
……あれ、いつからとられてたんだ?




