第33話 驚かれる夜白
「いや、驚いたよ……君の実力はトップクラスのハイランカーと遜色がないどころか見たこともない」
大空ハンターが、しみじみと俺を見る。
ダンジョンの入り口ゲートまで戻ってきた。やっとドローンがしまわれて、なんとなく俺はほっとする。
如月ハンターは、俺がどこかに怪我していないか丹念に見ていてくれた。
「かすり傷ひとつないです……返り血も」
返り血には気を付けたもんな。今日は学校の実技服じゃない。
私服に、花鈴の作ってくれた胸当てだけだ。
「だから私が言ったじゃないですか」
「桜井ハンターの説は、魔法使いだったろ? 魔法は使ってない」
大空ハンターが桜井ハンターとまた、言い合いをしてる。
そういえば、うまいこと魔法を使わずに済んだな。
だんだん、大賢者から剣聖らしくなりつつある成長だ。
「はい、これ。……俺は出番なしだったな」
高坂ハンターが、拾ってくれた魔石と肉をリュックごと渡してくれた。
大半は俺とザガンで拾ったが、硬直するプロたちの中で真っ先に拾ってくれた。いい人だ。
「そんなことはないですよ。元々、俺が倒せなかったらフォローしてくださる予定なんでしょう?」
「とはいえ、元々は二体ほど倒してすぐ戻る作戦だったからね……。この階層を全滅させる気なら、攻撃主力メンバーは両手じゃ足らないくらいだ」
そんなにいるのか……。いや、S級ダンジョンレベルってことだし……でもそもそもは俺が古代魔法使ったからで。
……。俺は考えるのをやめた。
それより、公式的に今回の魔石や最上級のオーク肉!
大半は収納魔法の中だが、残った俺のリュックと、高坂ハンターのリュックの中身は換金したい。
『そういえば我が王、ご家族に旅行をプレゼントしたいと仰ってましたな』
配信のお金で、今年や来年の実技服やなんかは余裕で賄える。
でも、せっかくならドロップ品を換金できたら元手になるかもと思ってたんだ。
収納魔法の中の魔石は、ザガンが食べてくれればいいや。
「あの……こ……ハンターさん、この魔石や魔肉ってどこで売れますか?」
「ああ、そうか。一年生じゃプロハンターとの実技はまだだったね? 俺のギルドで買いとってもいいし、DCAなら今回の企画者だから高く買い取ってくれるかもな。ちょっと手配してあげよう」
ダンジョン災害対策庁って買い取り低そう。民営化しているギルドのが、高く買ってくれたりするらしいけどまだ厚かましいかもな。
高坂ハンターが、大空ハンターに話しかけに行く。
『我が王、マヒル殿たちは学校のダンジョンが復活して二人で実技をこなしておりました。和成殿と楓殿もお元気です。我が王がいなくて寂しいようですよ』
ザガン、学校へ飛んでたのか。
とはいえ、一人おきざり状況だからな。遠隔で知れるのは悪くない。
『しかし、あの変な青髪。見直しましたぞ。嫌われ者の金髪とオレンジ髪を、一人公平にあつかっております』
誠志郎が……? へえ。
最初は髪型ぶっこわしたってキレてくる奴だったのにな。
ん……? なんだこれは――。
「夜白くん、あのドロップ品なんだが。傷もなく綺麗な状態で、品質は完璧だ。DCAとうちとで競りにかけて高いほうを――」
俺の背筋がぞわりとしていた。
S級ダンジョンよりも危険な気配がする。
「夜白くん?」
大空ハンターが首を傾げた。
何故、気が付かないんだ――この邪悪な魔力を。
「先ほど出た十層から、異様な魔素を感知したようです! 敵は火属性らしく、探知機が壊されたそうです!」
受け付けと話をしていた桜井ハンターが、青ざめて走り寄ってきた。
やはり――。
『魔王ですな』
ザガンが、俺と同じ考えを口にした。
この世界には、どんなダンジョンがあっても魔王などいない。
いたのは俺の前世だけ。
「異常事態だ! 本来なら学生で、しかも一年生の君をこんな現場に連れていくことはありえない――が、俺たちは君の戦いを知っている。一緒に、きてもらえないだろうか?」
大空ハンターに、肩を掴まれた。
多分、普通ならここに残るんだろう。
でも、俺は普通じゃない。
「行きましょう、ダンジョンから出られないように。中で仕留めます」
リュックを受け付けに預けながら、俺は先頭を駆けだした。




