第31話 突撃してしまった夜白
「記録用のドローンを飛ばしているが、関係者以外は映像を見れないから安心してくれ」
「はあ」
大空ハンターの防御服かっこいいなぁと思いながら生返事をしたら、じろりと睨まれた。
「君は何の説明もなしに、こんなところにいきなり呼び出されている。しかも、面識が一切ないハイランカーを前に、なんでそんな泰然としていられるんだ?」
そうか……存在虚偽魔法で勝手に話し合いを見ていたりしてたし、鑑定で勝手に名前を知ったりしてるが、この人らは誰もまだ名乗っていない。
そんなに不審だったか、俺……。
「私はDCAのシールドガーディアンっていえば、通じるはずなのだけど」
「いえ、ハジメマシテ」
ダンジョン災害対策庁、略してDCAは一番多く覚醒紋者が登録されている。アシスト科やサポート科も多くがここに登録しているそうだ。
桜井さんの場合、他からもギルドへ勧誘されそうだけど……。
間違って先にプロハンターの動画を見ていたおかげで、この辺の知識はなんとかなる。
「まあまあ、事情があって名乗れないけど、今日はこのメンバーで仲良くやりましょう」
如月ハンターがなだめに入る。
こっちだけ勝手に名前知っててすまんと思ったけど、向こうはみんな俺の名前を知ってるんだった。うっかり名前呼ばないように気をつけよ。
『我が王、こやつらの態度が気に食いません』
まあ、俺もだけど。それを理由に一撃入れたら逮捕されるのは俺だ。
一層から入ったが、パーティーの空気は最悪だ。
一応俺は如月ハンターと中央で、先頭は大空ハンターと桜井ハンター。しんがりは魔法使いの高坂ハンターの構成で進む。
「この奥に十層への移動魔法陣があります! それにしても魔物が出ませんね……」
移動魔法陣、便利だよなぁ。俺もいちいち瞬間移動するのやめないとな。
とはいえ、使ったメンバーはあとから履歴で見られるから非公式には使えないけど。
あー、学校のF級ダンジョンで使えば良かったかな……。
『我が王は力任せすぎるのです。もっと一般人が使うルートを模索しないと足が付きますぞ』
だから今それを反省してるんじゃないか。
ザガンはその辺、召喚魔だから無関係でいいよな。
俺も来世は召喚魔を目指すか……。
『仮にそうなったとして、我が王を召喚魔に呼び出せる者がいるのでしょうか……』
そりゃあ、いつかはいるだろ。
『何故か納得できませぬ』
魔法陣まで、一切戦闘なくしてついてしまった。
出てこないというより、息を殺して奥に潜んでいる感じだ。これが十層でもなら、戦うのは違う意味で面倒だな。
「いつもなら――こんなことはないんだが」
「ええ……」
先頭のタンク二人が、ちらりと俺を見る。
まあ、俺のせいではあるな。謝るとバレるから、知らん顔しとこ。
『我が王、演技力はEランクですぞ……』
いや、割と完璧だったぞ? 自己採点では八十点だ。
「転移、始まります!」
「夜白くん、初めてでしょう。落ち着いてね」
優しい声かけは、全部如月ハンターだ。さすが回復特化。
そういや前世では、大賢者になる前よく設置させられてたなぁ、この手の魔法陣。
スッと体が軽くなって、目の前の光景が変わる。
……前にいたのは、ブラッディオークだよな?
これは、エンペラーオークだ。
ブラッディオークですら大きさだけはあったのに、エンペラーともなると巨人のようだな。
そして漂う魔力から、微かに俺の魔力の残滓……。
なんか、すいません。
「異常なのって、この階だけですか?」
「あ、ああ。そうだ……驚かないのか、君は」
大空ハンターの顔に汗が滴っている。
『やはり、我が王が古代魔法を放った場所だけ、魔素溜まりが出来ているのでは?』
ああ、俺もそう思う。この下は上級魔法だけだ。学校のF級ダンジョンでも、古代魔法は使ったし……地盤が崩れたのも、六十層で俺が使った古代魔法からゴーレム亜種が生まれて落ちたんだな……。
うーわー気をつけよっ。
「……噂に聞いていたがこんなバケモノだとは」
「確かにS級だ。襲い掛かってこないのは謎だが……」
「夜白くん、戦えそう? 無理ならすぐにでも撤退を」
そうだな……俺がうかつにはなった魔力から生まれた魔物たち。
人に危害を加えないように、創造主としてここで葬らねば。
「倒しましょう」
俺が轟滅黒剣を構えると、プロハンターたちは驚いた。
でも、俺の力を見にきたんだよな? そんな驚くことなくないか。
『ま、我が王の力の片りんを見れば、こやつらも大きな顔はできませんな』
どやっているザガンを放置して、俺はエンペラーオークの中に突っ込んでいった。




