第30話 試される夜白
朝、マヒルを瞬間移動で学校に送ってから家に戻る。
宣言通りに、車はやってきた。
黒光りする車は、いかにもダンジョン災害対策庁という感じだ。
学校が把握しているなら、休みだという必要もないと思ったがグループチャットには一通り説明した。
かなりの速度で、返信が鳴る。
「不破くんですね、武器は?」
「これです」
轟滅黒剣の鞘は、花鈴が作ってくれたものだ。
かなり大変だったらしいが、剣そのものを作れなかった悔しさよりはましだったそうだ。
今は、アクセサリー型の防御付与だとか、剣以外のことに情熱を注いでいる。
「これが例の……失礼」
いつもなら長いリュックに入れて持っているが、ダンジョンに行くと聞かされたので鞘入りでベルトでぶる下げていた。
例のとはなんだ? 持ち上げられないってやつかな。
『我が王、こやつら無礼では? 昨日も一方的に』
まあ、仕方ないよ。お役所ってやつだ。
俺に対する意見も割れてるし、実際俺はレベル2だしな。
運転手のほかに、助手席にも男がいた。どちらも名乗らないので、俺も特には聞かない。
今日行かされるのは、前にザガンと暴れたA級ダンジョンだろうしな。
道中、はずむ会話もないのでぽちぽちとグループチャットに返信しているとザガンが話しかけてきた。
『運転手の男も、助手席の男も少し殺気だっておりますな』
そうか? こんなもんじゃないか?
『運転手の男は、冷や汗をかいておりますよ』
ふーん、なんでだろう。寒いのか?
『我が王が暴れるのではないかと下衆の勘繰りをしているようです』
ええ……それにしては随分な呼び出し方だったじゃないか。
そんなにビビるなら、もっと慎重に呼べばいいのにな。
『弱者なりのプライドというやつですな。不遜なことを』
グループチャットの返信も止まってしまった。授業が始まったんだな。
昨日の夜、きらりとたくさん作った魔物肉クッキングは収納魔法でしまった。が、今ひとつ空腹なのであれを食べれたらなぁ。
圧力鍋とは凄いもので、ガーゴイルの肉がとろとろになったもんなぁ。
「着きました、下りてください」
かつて駅だったダンジョン、再び。
まっとうな時間に、普通に入り口に行くと結構人がいる。
入口ゲートの側には、重装備の桜井 江連 ハンターと、大空ハンター、あとは魔法使いらしき人二人が何か話し込んでいた。
「不破くんです」
運転手の男が俺を紹介する。
全員の視線を浴びながら、俺は逆に知らないメンバーを鑑定していた。
大空ハンターはナイトジョブ。攻撃も防御も高めで、シールドガーディアンの桜井さんと二人でタンクという感じだな。
スカイギルドから来たと言ってたけど、たぶんこの人がギルマスだ。
魔法使いの一人は、高坂という男性でイグナイターという火炎大魔法特化の魔法使い。所属は終星ギルド。
最後の一人の女性は、最年長だ。如月さんと言って、クレリックというヒーラーの最高位ジョブ。回復と防御結界の両方持ち。ギルドの中でもトップクラスのアビスオーダーギルド所属。
「どうも……」
こうしてプロハンターのステータス見てると、皆さん高くて1000行くか行かないかって感じ。
そう思うと、藤川もそう弱くなかったんだな……。
「よろしく」
「今日はこのメンバーだ」
「緊張しないでね。実験だと思って」
防御多めのメンバーってことは、ほんとに俺の力を見れなかった場合の撤退向けなんだな。
今日の俺は、絶対魔法を使わないで魔物を剣で倒すからね。
絶対魔法のことはバレないようにするぞ。
「朱雀校、一年の不破夜白です。どうぞよろしくお願いします」
『我が王、ほんとうに隠し通せますか……?』
かなり疑問形のザガンをこっそり連れて。
俺は、更新されたダンジョンカードをゲートに通して、前に進んだ。
正当な手続きって、面倒だなぁ。
次にザガンと来た時は、また存在虚偽魔法で突破するな。




