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元大賢者、転生してレベル1からダンジョン配信  作者: 相木ふゆ彦
第二章 SSSランク剣聖の誕生

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第29話 疑われる夜白

 俺は、久しぶりに瞬間移動で帰宅していた。

 最近、ずっと帰りも尾行されていたせいでバス登下校だったのだが。

 

「あの、夜白くんですよね……? 剣聖の」

 

「ファンです! サインしてください!」

 

「あなたに会いたくてこの路線に乗ったんです! 本物~」

 

 大体、こんな感じの大渋滞のカオスだった。

 嫌な顔をしたら配信が減る……ので、真顔で対応していた。前からずっとこれに耐えてるマヒルは女神だろう。

 調査中の間のタクシー登下校は助かったに違いない。

 

 ……待てよ。もう尾行はついていない。あの話し合いで、結論が出たからだろう。なら、俺が迎えに行って、マヒルと瞬間移動登下校をすればいいのでは?

 さっそく連絡してみると、マヒルは喜んだ。が、今までそんな楽をしていたのか……? と少し不穏な空気にもなった。

 

 なんか、すまん……。

 

「お兄ちゃん、まだ調査中なの?」

 

 きらりが俺の部屋に入ってきて、頬を膨らます。

 すねたように、俺の背中にくっついた。

 

「多分、そろそろ終わりだと思うけど」

 

 会議の内容を聞いたとも言えないし、尾行に気づいていたとも言えない。

 尾行はおそらくダンジョン災害対策庁の人だろうしなぁ。

 

「お兄ちゃん……あのね……どっちがカノジョなの?」

 

 思わずプロテイン入りの牛乳を吹いた。

 せき込む俺を、じっと見つけるきらり。

 一体、何をどうしたんだ……?

 

「あの配信……絶対、賢者の人も盾の人もお兄ちゃんのこと好きだもん……」

 

『やはり、妹御も気づいて居られてたか!』

 

 うっさい、今出てくるなザガン。混乱する。

 

「いや、どっちもそういうんじゃないが」

 

「う・そ」

 

 振り返ると、きらりの頬がさらに膨らんでいる。

 とりあえず、吹いたところを片付けながら俺は返答に迷った。

 

「なんでそう思うんだ?」

「お兄ちゃんと最下層にいるときの二人、お兄ちゃんのこと好き~って顔してた」

「……」

 

 そう言われても、俺にはわからないし……。

 俺が返答に困っていると、下から母が呼ぶ声が聞こえた。食事らしい。

 

「今日は何のごはんかな」

「お母さん、最近圧力鍋買ってから煮ものばっかりだからな~。って、お兄ちゃん逃げたね」

「……いや、本当にわからないから」

 

 俺のスマホが鳴って、きらりがピクリとした。

 和成がグループチャットで、ゴールデンウィークにみんなでどこかに遊びに行こうと書いてある。

 夕飯を食べたら、参加すると返信して俺はしぶるきらりを追い出しながら、一階に下りた。

 

***


 

[どこかで息抜きしたいよね~]

 

[俺はレベル上げにE級ダンジョンに行きたい] 

 

 和成と楓が真逆の意見をあげる。

 この幼馴染コンビ、相変わらずこういうときは真逆だな。

 

[ぼくも息抜きした~い]

 

[良かったら、うちの伯父さんが海際に別荘持ってるから遊びにいかない?]

 

 おお、マヒルにそんな伯父さんがいるのか。

 ダンジョン災害対策庁のホームページにアクセスすると、E級ダンジョンが近くにあることが分かった。

 俺とマヒルと朝日なら、校長に言えばD級あたりまでなら書類を書いてもらえるだろう。藤川はあてにならないので、頼む選択肢はない。

 

[もし泊まりで行けるなら、近場のダンジョンに寄らないか?]

 

 俺の書き込みに、全員が一斉に賛成意見を書き始めた。

 女子二人は、野郎がいてもお泊りに許可が出るのだろうか。

 

[男三人と一緒で、親から許可でるのか?]

 

[ちょっと待ってて]

 

[OK出させるから]

 

『青春ですな~』

 

 ザガンもついてくるのに、なんか言ってる。

 待たされている間、俺はテレビを見ているきらりに声をかける。

 

「きらり、大きな少し硬めの塊肉って、ステーキ以外になにか調理できるか?」

 

 きらりの得意分野はお菓子作りだが、料理も出来る。

 案の定、少し首を傾げただけでいくつも料理の名前をあげた。これは最初に聞けばよかったな……。

 強くなるとはいえ、いきなりのステーキはひどかったかも……。

 

「特に、硬めのお肉ならお母さんから圧力鍋貸してもらって、角煮とかシチューとかカレーにすればいいんじゃない?」

 

「きらりは賢いな」

 

 頭を撫でると、ご機嫌になる。

 可愛い妹は、もっと大事にしないとな。

 

 結論として、何度か夕方や夜に電話を入れることを条件に、マヒルと朝日は親から許可をもぎとった。

 何を持っていくかとか、トランプはいるか。

 大いに盛り上がっている中、俺の電話が鳴った。

 

「もしもし?」

 

 おおかた、はっちゃけた和成だろうと思って電話に出る。 

    

「不破夜白くんですね? ダンジョン災害対策庁のものです。明日、こちらの所員と共に特別なダンジョンにご案内させていただきます。校長と担任の許可はもう得ているので、明日はうちの所員の用意した車に乗ってください」

 

 一言も、俺に発言させないまま、電話は切れた。

 明日……?

 ゴールデンウィークに持ち込まないならそれでいいか。

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