第28話 困る剣聖の夜白
「結論はどうでしょうか……? これ以上、無事に戻った生徒たちを拘束するのは……」
校長が、数人の男女に問いかける。
俺は、存在虚偽魔法で、普通に窓際で堂々と盗聴していた。
客用テーブルには五人の男女が座って、お茶を飲んでいる。……ん? 女性に見覚えが……。動画で見たハンターか?
『我が王、お忘れですか? A級ダンジョンに潜った時に姿を見られた方ですぞ』
あーー! あの人か! よく覚えていたな、ザガン。
『我が王こそ、何故忘れているのですか……?」
いやーザガンはすごいデーモンだな。記憶力がいい。
「何度もお話している通り、不破夜白くんには謎があります。彼が持ち帰ってきた魔剣は、攻撃力5000の最高値を持つプロハンターでも持ち上げられませんでした」
……え? 最高が5000なの? 弱すぎないか?
『我が王が規格外なのですぞ! そろそろご自覚くだされ』
前世のS級の奴でも、もう少し強かったぞ……。
しかし、普通に持ち上げられたからそんなこと気が付かなかったな。
少しうかつ過ぎたか……??
「ステータス的にはありえないことです……。紋章者適正審査委員会としては、三度も鑑定して、結果が変わらないことでお手上げです」
スーツの神経質そうな男がそう言って黙った。この人は、紋章者適正審査委員会の代表か?
「そもそもですが、F級ダンジョンで魔物氾濫が起こることがおかしいのです! あの後ダンジョン災害対策庁が検査した結果、大きな魔素溜まりが発見されました。ゴーレム亜種はそこから生まれたと考えられます」
「その件と不破くんとは関連が……」
「いえ、私は目撃者です」
シールドガーディアンの女性が手をあげた。鑑定によると、桜井江連という名前だ。
「原宿のA級ダンジョンに、突如現れた人物を私は見かけていますし、記録しています。明らかに不破くんに面影がありました。召喚魔法で見たこともない魔物を従え、私を一層に連れて去りました。そのあとも、あちこちから高密度の魔素溜まりが出てきて、A級ダンジョンには存在しないS級の魔物が出てくるようになっています」
あっちゃあ……。つまり、学校のダンジョンといい俺が古代魔法ぶっぱなした場所で、そういう異常が起きてるのか……。
つまり、俺の魔力から生まれたゴーレム亜種から轟滅黒剣がドロップしたなら、魔力なじみがいいわけだ。
え、A級のダンジョンにS級の魔物……? 俺、生態系? を壊した……?
「つまり桜井ハンターは、剣聖ジョブの不破くんが魔法を使えると?」
「そうであれば、つじつまが合います」
はあ、とため息をついたのは、大男だ。
手にしてる湯呑がSサイズに見えるほど、体が大きい。
多分、この中で一番強いのはこの人だな――俺は計算にいれないで、だけど。
「ばかばかしいですな。十六のハンターデビュー間もない子が、どうしたらそんな力を得るんです? 厳重な警備をしているダンジョンゲートのセキュリティーをかいくぐったと? 確かに映像が不破くんに似ていたことは確かですが、剣聖が魔法を使うことも、レベル2の彼がステータスにない大魔法を持っていることも、くだらない仮説ですよ」
「大空ハンターはじゃあ、あの魔剣を持てるんですか? 配信から戻ったあとも、不破くんは軽々あの魔剣を持っていましたよ?」
「それは……」
大空と呼ばれたハンターと、桜井ハンターとで舌戦が始まり、校長と紋章者適正審査委員会が何度か止める。
どうも、毎日これを繰り返してるようだな……。
だが、俺ばっかり質問攻めな理由がわかったぞ。
……ただ、解決策がなんにも浮かばないんだよな。
「ともかく、不破くんが何か不正をしたわけでもない。ただ、ステータスと魔剣などがかみ合わない。現状はそれだけですな?」
「A級ダンジョンに――」
「それも、あくまで似てるというだけですよね?」
校長は俺をかばっているようだな。
まあ、一応レア職のSランク生徒だもんな、俺……。
「待ってください。――一つ、提案があります」
ずっと押し黙っていた男が、静かに意見を出す。
なんだ?
「ダンジョン災害対策庁から桜井ハンターを。『スカイ』ギルドからは、大空ハンターを。他にギルドに要請を出して、不破くんを例のA級ダンジョンに連れていき、実力を見るのです。戦えなければ、守って帰還すればよし。戦えるようなら、そこでデータを改めて取るということでどうでしょう」
「それなら、まあ……」
「私も言うことはないです」
え。
なんか、この眼鏡のひとの意見でみんなまとまり始めたぞ。
俺はどうしたらいいんだ?




