第21話 スタンピードに出くわす夜白
「アイスニードル!」
ダンジョンにマヒルの声が通る。
今俺たちは、アビリティインストラクターの藤川の許可を得て二層にいる。
敵は、ゴブリンだ。
橘と火乃森の事件から、マヒルは必死にレベリングをしている。魔力切れはしょっちゅうで、サポート科の魔力ポーションのお世話になっていた。
そんなマヒルは、俺が偶然見つけたていで渡した、マジックスクロールで今複数の魔法持ちだ。
マヒルの人気が出たのはこれも一因らしい。いいぞ、密かに俺のサポートは成功しつつある。
今のマヒルのステータスはこんな感じだ。
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七瀬マヒル
レベル 5
ジョブ 賢者
体力 40
魔力 60
攻撃力 40
防御力 70
俊敏性 30
スキル 召喚術 ファイーヤーボール アイスニードル ウインドアロー
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相変わらず賢者にしては防御が高い。
そんなマヒルの魔力は俺のネックレスで+50されているので、素だと10になる。……伸びないな。
「防御はボクに任せて!」
ゴブリンの中には魔法を使うゴブリンメイジも混ざっている。
朝日が、新装備の魔石付き大盾をふるってマヒルを守る。
このコンビネーションもどんどんうまくなってるな。
『何を言われます、我が王の指導のたまものではないですか!』
ザガンには、ゴブリン層に入ってから二人に万が一がないように護衛させている。
実技以外の時間は、相変わらずA級ダンジョンでソロで狩ったりアイテム回収したり。契約した当初は、ザガン一人だとB級ダンジョンがぎりぎりだったけどお前も成長したな。
そう、マヒルもパートナーに新武器を作ってもらっている。
相変わらずNO武器なのは俺だけだ。モンク系ジョブ以外で素手は、俺が最悪の前例だそうだ。なんかすまん。
俺の武器パートナーの花鈴も努力しなかったわけじゃない。レベル6になるまで錬成を頑張ってくれたのだが、今のところ防御+10の胸当てだけが俺が身に着けられたものだ。
武器は爆散し続けている……。ミスリルは今も差し入れてるが、俺が防御だけをくれしか言わないので防具専門家みたいになりつつある。
花鈴には、最近謝罪しかしてないな。
「右奥はマヒル、正面は俺が右手吹っ飛ばすからその後は朝日が叩け」
「わかった!」
「りょーかい」
〇やっしーの育成プロデュースSランクw
〇もう見慣れてきたなこの光景(後方彼氏面
〇謎の安心感たるやw
〇剣聖P、マヒルちゃんおかわり!
〇なんでゴブリンの手が消し飛ぶのか考えるのはやめた
〇夜白Pは何層まで素手かな?w
正面のゴブリンメイジの腕が、俺の魔力を引き絞った手刀が叩き切られる。
ゴブリンメイジに魔法は効きにくいので、俺と朝日で担当。通常のゴブリンはマヒルが魔法二発叩き込んで潰した。
この手刀、俺の最大限の手加減から生まれだした努力の成果だ。
魔力をギリギリまで引き絞り、体から線状にして放出する。見えない魔力レーザーという感じかな。
『我が王。もはやそれが一つの最強の武器では……?』
全然最強じゃない。
レッサードラゴンならまだしも、エンシェントドラゴンなら首取れないからな?
『我が王、目指すところがおかしいのです……今は二層ですぞ。……ん?』
ザガンが気が付く前に、俺も気が付いた。
魔力が、地下で揺れている。なんだこれは。
魔力としては微々たるものだけど、数が多い。
――これは、魔物氾濫!
俺はとっさに周囲を見回した。ここまで奥地に来ているのは俺たちのチームだけだった。楓や和成はいない。
『我が王、足元が――!』
落下が始まる瞬間に、右手にマヒル、左手に朝日を抱きしめた。
耳がぴりつく、魔物の声の雄たけび。
ごうごうと、その音が増えていく。
それを聞きながら、俺たちは落下していった。




