第20話 トップ配信者の夜白
「おっはよー! やしろっち!」
どの面さげているのか、朝いちばんに顔を合わせたのは火乃森美琴だった。
なんて不快なんだ、どっかいけ金髪。
「おはよーってばー」
知らん、消えろ、うせろ、去れ、こんな金髪メゲツネは知り合いにいない。
「えー、今週ずっとシカトだったのにーマジー?」
マヒルの事件から、一週間経っても火乃森も橘もマヒルにしたことを自白しない。
よっぽど罪を自白させる魔法でも作ろうと考えた――というか作ったが、話したら魂が壊れるレベルになってしまったので仕方なく封印した。
何故、俺とマヒルが仲が良くて真実を知ってると分かっているはずの俺にこの女が付きまとうのか――それは俺の配信チャンネルの登録者が何故か今一位だからだ。
勿論アンチも多い。剣を持たない剣聖なんて剣聖じゃないというカキコミは、毎日あるのだが。
美少女アシストS職という謎の名前と共に、俺がサポートしている戦闘動画に二人のファンが押し寄せているのだ。俺は添え物である。
覚醒紋の配信がトップの娯楽のこのご時世、みんなサブ機の一台や二台は持っている。そのサブ機で俺の配信を見れば、マヒルか朝日か片方だけじゃなく両方が見れるというわけだ。
あとはマイナーな路線として、剣を持たずにモンスターを吹き飛ばす俺のファンだ。
まあ、一位といっても朱雀高校の中だけで、他の三校の覚醒紋学校とプロたちと比べればたいしたことはない。
そういうわけで、火乃森は俺と仲良くすれば配信に映ると信じているらしいのだ。
仲良くなれるわけがあるか。
いっそオレンジ髪にきびの橘のように、俺を嫌い配信してりゃいいものを。
来月からはチームアップということで、生徒たちの自主性と相性で四人から五人前後のグループでダンジョン攻略が始まる。それを狙ってるんだろうが、うちのチームに楓と和成を合流させる予定しかない。
「おはようございます。夜白君」
「おはよう、誠志郎。火乃森が何かダンジョン実技のことでお前に話があるってよ」
「は? ちょっ」
登校してきた誠志郎を火乃森に投げつけて、逃げる。
午前中は座学で、午後は実技が多くなる。
覚醒紋学校なので、将来はダンジョン関連の仕事に就く学生だらけ。基礎の基礎しか勉強はしない。関係省庁なんかに行きたい一部の奇特な学生向けには、補講で専門授業があるようだ。
俺はハンターで行く予定だが……自分でも少なからずこのままで剣聖でいいのか?とは思っている。
今も剣は握れないし、偶然を装ってマヒルにマジックスクロールを渡しているばかりで、あとは朝日の為にスライム抑える係だ。
『我が王、C級ダンジョンで魔法石の収集と魔物退治で出た魔石を集め終わりました』
おお、ザガンお疲れ様。
『実は――それがしに魔石を少しだけいただいてもよろしゅうございますか?』
いいけど、なんで? 花鈴に渡す分以外は学校に売っぱらって小遣いの足し――配信ドローンのケースの予算に当ててるんだが。
『実は、召喚魔としては我が王の力と繋がっているので飢えはないのですが――魔石を見るとこう、エネルギーを欲するというか』
進化したいのか? もしかして。
俺とザガンはいうなれば、コンセントの俺とコンセントを使う家電なザガン。
そこに魔石で付属のエンジンをつけたいわけだ。
ならば、この間のA級ダンジョンの魔石、ザガンが食べていいよ。
『まことですか!? あんな良質なものを』
まあ、学校には出せないし花鈴にも渡せないし。持ってるだけで使えないからな。
人間には魔石食えないし。
ケルベロスとか、ガーゴイルとか、だいぶ狩ったからなぁ。
その瞬間、体内から奇妙な変化を感じた。
自分のものではない。これはザガンか。
『我が王、アビスデーモンに進化しましたぞ!』
何か新しい種族に進化したらしい。




