第二話 夜白、現代の賢者に出会う
長い時間バスに揺られた。ダンジョン発生以来、電車は地方ローカル線を除いて全滅したそうだが、バスが代わりにやばい混み方する。
両親によると、かつて都内の電車はそれはそれでラッシュがやばかったそうだ。瞬間移動はいいよ、こんなに他人と距離が近くなくて。
朱雀高校付近で下車し、校門までぞろぞろと列に並ぶ。
なんていうか……凄い景色だ。歩くやつ歩くやつ、髪の毛が眩しい。前世でもここまでカラフルじゃない。なんか虹色みたいなやつまでいる、正気か。すべて配信向けの為のようだが、その個性でお前らはデビューしていいのか。
校門では、合格通知と身分証を念入りにやっている。魔力探知とか使えば早いんだけど、手動じゃな……。バイト代が出るなら是非やりたい。
「あっごめんなさい」
列の後ろから、体当たりされ靴を踏まれた。振り返ると、俺の後ろでドミノ倒しのように人が倒れている。
何か攻撃魔法でも放たれたのか?
俺の肩にしがみついて、負の連鎖は終わったらしい。巻き込まれなくてよかった。
とはいえ、女子生徒がしがみついてバランスをとっているのを放置するわけないにはいかないな。
「大丈夫?」
魔法の気配はない。誰かが俺の知らない魔法を唱えたわけではなさそうだ。
「後ろから、雪崩みたいになって……強く掴んじゃったのに、びくともしなかったので助かりました」
「そうだったのか……」
俺の防御力、5000しかないんだけどな……。紙装甲でも人助けになったなら、なによりだ。
と、いうよりこの子可愛いな。サイドをポニーテールにしていて、清楚系美少女だ。
俺なんて前世二十五歳+現世十五歳で、四十のおっさんだからな……。この先、こんな美少女に寄りかかられることはないだろう。
この子の左手にも剣の紋章がある。同じくハンター科か。因果だな。
でも、このぐらいの容姿なら配信で大人気になりそうだ。
「あの、紋章確認しあっていいですか?」
おっと、盗み見てしまった、すまん。
どうやら普通は見せ合いっこするようだな。他の列でもそんな光景がちらちら見える。
「はい、どうぞ」
「私も……あ、七瀬マヒルといいます」
「不破夜白 だ、ハンター科同士よろしく」
マヒルか。確か配信者はダンジョンネームとして下の名前を呼び合うらしいから、今のうちに慣れておこう。
「何のジョブか、測定まで不安なんです……不破くんは自信ありますか?」
「下の名前でいいし、敬語なくていいぞ」
まあ、中身おっさんだから無意識的につけたくなるのかもしれないが。
うーん、不安か。まあ、鑑定がないとそうなのかもな。
マヒルの全身に鑑定魔法をかけてみた。
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七瀬マヒル
レベル 1
ジョブ 賢者 Sランク
体力 20
魔力 5
攻撃力 20
防御力 40
俊敏性 10
スキル 召喚術
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おお、マヒルが現代の賢者か。
しかし……レベル1とはいえ、ずいぶん弱いな…。いやいや、俺だって前世では賢者スタートだったし、大賢者になるまでは苦労したもんな。
とはいえ、魔法ジョブで魔力がえらく低いな。だが防御が高くて羨ましい。
「マヒルは魔法使い系になりそうだな」
「夜白くんは剣士っぽいよ」
とりあえず、魔力5だぞとは言わないでおこう。
そして剣士か、それは嫌だな。前衛職なら盾で防御できるほうがいい。人気はなくとも、俺的には憧れのジョブだ。マヒルの予想が当たらないことを願おう。
これはけしてフラグじゃないぞ。




