第十二話 こっそり発掘する夜白
久しぶりに古代魔法を放ったけど、まだまだいけるな。
崩れなかったらあと何発か叩き込もうと思ったが、壁からミスリルが覗いている。
「トルネードスピア!」
回転しながら相手を切り刻む風魔法で、見えているミスリルをさらにあらゆる回転で刻み取った。
思いのほか、手元にざっくりと取れた。バケツ二杯分くらいか?
通常は宝箱やボスからドロップしたり、魔法石と一緒に取れたりするが……ここのダンジョンレベルだと魔法石も少ないな。
なんとかして、上級ダンジョンに入りたいものだ。
魔物からとれる魔石は、サポート科の魔道具の材料になって電源の要らない冷蔵庫だの、油の要らないカンテラだのに加工される。
一方魔法石は、黄色は雷属性の付与。白は回復担当の力の増加などのアシスト科が好む武器や防具の付与素材だ。
この辺、俺の前世とあまり変わりのない世界なんだよな。
勿論、俺は現在進行形でダンジョンの下層にいるわけだが、魔物たちは俺を遠巻きにして攻撃してこない。なんでだ?
「……目についた魔法石を拾っておくか」
むろん、俺がその作業をしていると授業に遅れる。久々に召喚魔法を使うか。
召喚なら、存在偽造魔法を使わなくてもダンジョンに潜れるし、俺の魔力が尽きない限り稼働してくれるし疲労もない。
手のひらから血を出して、悪魔召喚を唱える。
「我が王よ……お呼びでしょうか?」
儀式魔法陣から、銀髪の悪魔が顔を出す。
急いでいるから、鑑定はあとだ。ついで手に回復魔法をさっとかけた。
「契約はとりあえず三年、やることはダンジョンの捜索やアイテム集めで地味だけど、それでもいいなら契約満期になった時に、魔力を八万やろう」
あ、少なかったかな?
消耗した魔力はすぐに回復できるんだから、もっと盛ってあげればよかった。
「承知仕りました、我が王よ。我が名はザガン……我が王の力になりましょう」
あ、なんかオッケーされた。可哀そうだから契約完了した際に多めにあげよう。
「ザガンね、とりあえず目につく魔法石を俺の収納にしまってくれ。俺と血の契約で繋がっているから開けるだろう?」
「承知」
黒いマントを翻し、ザガンはさっそく仕事を始めてくれた。優しい悪魔を呼べたのかな。
『恐れながら我が王、畏怖すべき膨大な魔力をお持ちの方に逆らえる悪魔はアークデーモンでもほとんど不可能かと』
あ、そうなのか。そして契約で繋がっているから、ザガンと念話が出来るんだな。
「よっぽどじゃないときは念話を使わなくていいからな」
「……承知」
なんか不満そうに聞こえたけど、気のせいだな。
さて、ミスリルのほうだけど……。
ペンダント状のがいいかな。魔力付与して、身に着けたマヒルが足りない魔力をそこから補う感じ。使っても、俺の魔力をする形にすればマヒルがレベルアップしやすくなる。
うーん、とりあえず10000くらいぶち込んでみるか!
『我が王ーー!』
最近見慣れた、安定のドカーンがきた。そうか、多すぎるわけね。
『せめて、十単位から始められては……?』
ザガンってつっこみ体質の悪魔なのか……? それとも俺がそんなにおかしいのか? それはないよな。
『……。』
でも10単位か……少なすぎないか? インフェルノブレイズなんて魔力足らなくて打てないぞ。
いや、レベル1になりたてだもんな、さすがにインフェルノブレイズは強すぎか。
懲りずに300入れて破裂させたりして、俺の魔力を閉じ込めるには弱すぎるんだな……。
ミスリルの上が欲しい。俺の武器も、ミスリルじゃダメそうだもんな。
とりあえず、花鈴への詫び用にも残しておきたいしな……。
100入れてすでに爆発してるし、50でチャレンジしてみるか。
指先に魔力を抑えて、丸めるようにミスリルに循環魔力を込める。きっちり五十で切り取って丸いミスリルに込めると、一瞬紅く光る。
「出来た!」
作ったほうは不安が止まらないが。たった魔力が50増えて何になるのか……。でもマヒルは5だもんな、少しはましか。
剣を使うときもこのくらい細分化された魔力を使えればいいんだけどな。これは攻撃とかではなくて、付与魔法や加工魔法の類いだから出来ることで……。
たとえば縫物なんかで、すごい力む人はいないはずだ。ミシンも力を入れる人はいない。付与魔法は俺にとってそんな感じだ。逆に竹刀を一定の弱さで勢いよく振れる一般人も少ないと思う。俺は前世、杖とか使わない大賢者だった。今更手になにか持たされても加減がわからん。
「ザガン、マジックスクロールの用紙を手に入れられるか?今日中じゃなくてもいい」
『は、もちろん可能です』
上の階層に行っていたザガンには俺の声は聞こえたらしい。
ミスリルを鎖状に魔力で編み、丸めたミスリルの銀色のペンダントにくっつける。
なんか……デザインがシンプルすぎるけど、ここでさらに加工したらまた爆発する気がするな。
ザガンを残して――もちろん他の人間に見えないように。そして学校以外のダンジョンも探すように言い残して、俺は教室に戻った。
もっと早くやるべきだったな、召喚魔法。




