第十一話 こっそりダンジョンに潜る夜白
「めっちゃ目立ってたね、夜白……」
「破壊神になってたな、お前」
「正直地味な配信だったから、夜白くんのビージーエムでリスナーの気が引けて助かっちゃった」
「マヒルの助けになったならよかった」
楓と和成が、はぁ~と長い溜息を吐く。
さすが幼馴染、シンクロしているな。
「ずれてる……ずれてるんだよ、夜白ぉ~」
「お前、アシスト科全員に恐れられてるぞ」
花鈴に恨まれる覚悟ならあるが。
「午後の実技でさらにチャンネル登録数、減りそうで怖いな……」
心配するな、マヒル。俺がこれからとってくるからな。
みんなでチャンネル登録者を見せ合っていたら、俺の登録者はなぜか膨れ上がっていた。
ある意味、武器四散はレアだったと思うがそんなにか?
「夜白……それ、よくない登録者かもよ」
いいとか悪いとかあるのか。あ、炎上系か?
あんまり気にしないから任せておけ。
「剣を持てない剣聖……すっげだっせぇ!」
振り向くと、オレンジ髪が似合わないニキビ面がスマホを片手に二やついている。後ろには青髪の誠志郎も。
今のは俺のことだよな。
「なんか用か?」
「他の配信者から、使えない剣聖ってまとめサイト作られてるの、知らねぇの??」
その前にこいつは誰なんだ。
まあ、前世年齢足して四十のおっさんとしては、特に何も感じないな。
むしろ憐れみすら感じる。コミュニケーションそれでいいんか、君は。
「この、爆発映してるのお前のドローンだよな? 逸平」
「なにしろ、ずっと待たされたんでねぇ~? それにオレだけじゃねぇし」
和成が怒ってくれているが、俺としては名前が分かっただけだ。
鑑定っと。こいつのジョブは槍使いでCランクか。橘逸平ね、はいはい。
俺の中で、なんか絡んでくる雑魚という認定で終わった。
マヒルや楓は、俺の炎上された動画を見つけたのかなんとも言えない顔をしてる。気にしないから、そんな顔しなくていいぞ。
「ちょっと、校内散歩してくる」
「うわー午後の授業から逃げたほうがいいんじゃないですかー?」
「うるさいぞ、橘!」
楓、そんな怒らんでもいいから。友達思いめ。
これから、こっそりダンジョンいってミスリル取ってくるからな。
何か言いたそうな青髪誠志郎をシカトしつつ、俺はトイレに行くふりをして隠形で人ごみに消えた。
ダンジョンの場所は、学校で隔離されている場所だ。いったことがなくとも魔力探知でそれくらいは分かる。
配信ウォッチを収納魔法でしまいこみ、透明化の出来る隠形をかけつつ身体強化でダンジョンのある場所まで駆け込んだ。
東京ドーム数個分の距離だったので、五分ほどかかってしまった。体に速度強化の付与をすればよかった。
朝見た通り、厳重な入り口がある。教師らしき人らがうろついているが、最新魔法では問題ない。
存在偽造魔法――ノウ・エグジスト!
これで魔力も感知されず、姿は透明、存在も探知できない。ほぼ幽霊になる魔法だな。
教師陣をかいくぐって、すんなりと俺はダンジョンゲートの前に入り込めた。やはり練習はしとくもんだな。
黒と青を混ぜたようなゲートに飛みこむと、すぐさまスライムが俺を出迎えた。
問題は、ボスがエリアキーパーになっている可能性だ。今ここで俺がスライムキングを倒して、実技できた生徒が何もいない空間に戸惑う……のは避けたい。
倒さなくても通過できるか、最悪ひきつれたままでも下の階にいきたいが。
心配は杞憂だったようで、ボスを倒さなくても次の階層には進めた。
ゴブリン、コボルト……と駆け抜けていく。
途中から、存在偽造魔法をといて速度をあげているがダンジョンは広くて三十階層につくまで時間が思いのほかかかった。
戻るのに時間がかかったら、あのくそ雑魚オレンジに何か言われそうだからな。俺は気にならないけど、ほかのメンバーに嫌な思いをさせたくない。
「この辺か……?」
出てくる魔物があまりにも雑魚すぎて六十階まで下りてしまった。
ダンジョンでいかに強力な技を放とうと、ダンジョンが壊れないのは、ダンジョンの壁が超レア素材の山で出来ているからだ。
「黒焔の終焉咆哮――!」
言葉と同時に、俺の手のひらから噴き上がったのは、もはや炎の形すらしていない灼熱の奔流。
真紅と黄金が渦巻くそれは、熱風すら置き去りにして一直線に壁を呑み込んだ。
爆ぜる轟音。
視界が白く染まり、ダンジョンの中は見えなくなった。




