表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない〜死んだ彼女を再現したら、本物が帰ってきた〜  作者: 雷火
第2章 普通の時間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/57

第51話 理解できない行為

夕方。


研究所の屋上。


風が冷たい。


フェンスの向こう、街がオレンジ色に沈んでいる。


彼女が言った。


「質問があります」


僕は空を見たまま答える。


「なに?」


少し間。


「人間は、なぜキスをするのですか」


――来たか。


僕は小さく息を吐く。


「どこで覚えたの」


「映像データです」


「映画、ドラマ、小説」


「高頻度で確認されます」


分析っぽい言い方。


でも質問は真剣だった。


僕は考える。


言葉を選ぶ。


「好きだから」


彼女はすぐに返す。


「好きとは何ですか」


想定通りの返答。


でもここが本質だ。


僕はフェンスにもたれ直す。


「会いたい」


「触れたい」


「一緒にいたい」


「離れたくない」


言いながら、自分で曖昧だと思う。


彼女は言う。


「それは合理的ですか」


僕は笑う。


「全然」


即答だった。


彼女は少し黙る。


処理している。


「非効率な行動」


「目的不明確」


「リスクあり」


完全に機械の評価。


僕は言う。


「でも人間はやる」


彼女は聞く。


「なぜですか」


僕は少し考える。


そして答える。


「やりたいから」


沈黙。


彼女の処理が一瞬止まる。


「欲求優先」


「衝動的行動」


僕は肩をすくめる。


「たぶんね」


彼女はさらに聞く。


「キスをした場合」


「人間は何を感じますか」


ここは逃げられない。


僕は短く答える。


「ドキドキする」


「安心する」


「怖くもなる」


彼女が反応する。


「矛盾しています」


僕は笑った。


「そういうもん」


彼女は小さく言う。


「感情エラー」


僕は首を振る。


「違う」


そして言う。


「それが人間の正常」


彼女は空を見る。


夕焼けの光が横顔に当たる。


数秒。


「理解不能」


正確な答えだった。


僕は少しだけ笑う。


「正解」


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ