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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: Laica
第1章 彼女が来た春

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第5話 LINE交換

挿絵(By みてみん)

昼休みが終わるころ、

教室のざわめきも少し落ち着いていた。


弁当箱を片付けながら、

彼女がこちらを見る。


「ねえ」


「うん?」


少しだけ間。


「連絡先、交換しない?」


自然な言い方だった。


でも、


タイミングが正確すぎる。


「LINEでいい?」


「うん」


スマートフォンを取り出す。


彼女も同じように操作する。


迷いがない。


手順を“知っている”みたいに。


「これで」


画面を向ける。


彼女が近づける。


ピッ。


――その瞬間。


画面が一瞬だけ揺れた。


ノイズのように。


ほんの一瞬。


でも、


“処理が重なった”みたいな違和感。


「……?」


すぐに元に戻る。


「どうしたの?」


「いや……今」


言いかけて、やめる。


説明できない。


「これで、つながったね」


彼女は微笑む。


僕の画面に名前が表示される。


彼女はそれを見て言う。


「不思議だね」


「何が?」


「さっきまで知らなかったのに」


「……たしかに」


彼女は画面を見つめる。


ほんの一瞬、


思考が止まったみたいに静止する。


「これで、学校の外でも話せるね」


その言葉に、


少しだけ温度があった。


チャイムが鳴る。


彼女はスマートフォンをしまう。


「あとで送ってみるね」


それが最初の約束だった。



帰宅後。


スマートフォンが鳴る。


『今日はありがとう』


短いメッセージ。


僕は返信を打つ。


『こちらこそ。楽しかった』


送信。


――その瞬間。


既読。


「……は?」


早いとかじゃない。


“同時”だった。


送信と既読が、


同じ瞬間に重なっている。


数秒も経たないうちに、


『私も』


続けて届く。


画面を見る。


時間表示は変わっていない。


間がない。


ラグがない。


まるで、


最初からそこにあった返信を、

今、表示しただけみたいに。


「……そんなことあるか?」


そのとき、


次のメッセージが届く。


『今、打とうとしてた?』


指が止まる。


まだ何も送っていない。


思考が、読まれている。


いや――


先に“共有されている”みたいに。


心臓が、わずかに鳴る。


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

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